電子たばこ(読み)でんしたばこ(英語表記)electronic cigarette

日本大百科全書(ニッポニカ) 「電子たばこ」の意味・わかりやすい解説

電子たばこ
でんしたばこ
electronic cigarette

カートリッジに入った液体を、吸い口のある筒状の装置に入れ、電気的に加熱して発生させた蒸気を吸入する製品。一般的に外形は紙巻きたばこに似せてつくられている。e-cigarette、e-cigと略す。カートリッジの中の液体はイーリキッドやイージュースなどとよばれ、人工香料、アルコールの一種で蒸気の量を増やすためのグリセリンのどの通りをよくするプロピレングリコールなどが含まれる。火を使わず有害なタールや一酸化炭素、およびたばこの先端から副流煙が発生しないため、たばこの代替品や禁煙の補助用具として使用される。2011年の世界の市場規模は約20億ドルで、アメリカ、ロシア、ドイツで60%を占め、とくにアメリカでの売上げは急増しており、2008年の2000万ドルから2013年には10億ドルになっている(財務省「たばこ・塩を巡る最近の諸情勢」)。日本でも2010年(平成22)の増税によるたばこの値上げ以降注目されている。

 こうしたなか、2014年8月に世界保健機関WHO)は、電子たばこが未成年者胎児に深刻な影響を及ぼすおそれがあるとした報告書を公表し、各国に対して未成年者などへの販売を規制するよう勧告した。しかしこれまでフランススペインなどの一部の国を除いて、こうした規制を行っている国は少ない。

 日本の場合、たばこ事業法では葉タバコ原料にしたものが製造たばことして定義されているため、電子たばこはこの規制対象にはならない。一方で、薬事法上ではニコチンの国内での製造、販売に厚生労働省の承認を必要としており、電子たばこでその承認を得たものはない。しかし、2010年に国内で流通していた電子たばこの一部からニコチンが検出されたため、厚生労働省は消費者に注意を呼びかけるとともに自治体に対して監視の徹底を指導している。

[編集部]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「電子たばこ」の意味・わかりやすい解説

電子たばこ
でんしたばこ
electronic cigarette; e-cigarette

従来のたばこの代替として考案された電子喫煙機器。Eシガレットとも呼ばれる。2003年中国人薬剤師によって考案された。加熱装置を作動させると,ニコチンと,プロピレングリコールや植物由来グリセリンなどの溶剤,香味剤などの化学物質を含む液剤が熱せられ,たばこの煙によく似た霧状の気体に変化する。紙巻きたばこ状のものは「シガライク」と呼ばれ,ほかにも葉巻や水煙管に似たもの,使い捨て式,カートリッジ式,タンク式などがある。機器は完成品の状態でも購入できるが,部品を買って自分で組み立てることもできる。液剤もニコチンの含有量(1mlあたり 0~48mg)をはじめ,プロピレングリコールとグリセリンの割合やフレーバーなどを組み合わせることができる。などの病気を誘発する紙巻きたばこに比べれば害が少ないと考えられるが,液剤にはたばこ由来の発癌物質を含むものもあり,霧状の気体にスズや鉄などの金属やホルムアルデヒドなどの有害物質が含まれることもあるため,電子たばこの健康への害については議論が分かれる。依存を引き起こすニコチンの血中濃度は機器の組み合わせなどにより紙巻きたばこと同程度まで高くなる。2014年アメリカの食品医薬品局 FDAは,電子たばこを含むすべてのたばこ製品を規制の対象とすることを提案した。同 2014年10月に開催された世界保健機関 WHOのたばこ規制枠組条約第6回締約国会議で国際的な対応が検討され,電子たばこの安全性が証明されていないことを考慮し,未成年者に対する宣伝活動および未確認の健康効果の宣伝を禁止する規制策が提案された。

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