電子スウォーム法(読み)デンシスウォームホウ

化学辞典 第2版 「電子スウォーム法」の解説

電子スウォーム法
デンシスウォームホウ
electron swarm method

分子解離共鳴電子捕獲,および非解離共鳴電子捕獲の絶対速度から,その断面積を求める方法.質量分析計を使用し,電子衝撃で特定の負イオン生成の電子エネルギー依存性は求められるが,選別効果(discrimination effect)や空間電化効果などのために,負イオン生成断面積は正確に求められない.電子スウォーム法で直接求められる量は,電子捕獲係数αと電子のドリフト速度wであり,αwは s-1 Pa-1 の単位で表される電子捕獲の絶対速度であって,次のように示される.

ここで,Eは図の光電子放射板と電子検出部板の間の電位差Pはこの間の気体圧力Nは一定温度での cm3 Pa 当たりの電子捕獲気体の分子数,mは電子質量,σa(ε)はエネルギーεの電子捕獲断面積である.上式中のf(ε,E/P)はドリフト電子が平衡エネルギーεとなる関数で,気体の種類によって異なり,多くの気体についてE/Pの関数として求められている.エテン窒素アルゴンキャリヤーガスとしてそれぞれ使用すれば,E/Pをかえることにより0.04から5 eV までの任意のεをもつ電子を得ることができる.電子スウォーム法には種々の方法があるが,図示したものはパルス形法(pulse-shape method)といわれるものである.この装置にf(ε,E/P)既知のキャリヤーガスを数十 kPa 導入し,その 10-3~10-5 程度の圧力の電子捕獲性ガスを,試料として混合する.まず,光入射窓からパルス状に光を入射し,光電子放射板から発生した光電子を上部電子検出部のガイガー-ミュラー計数管で検出し,電子ドリフト時間からwを求める.また,αの値は次のようにして求められる.α線源として 239Pu などを使用し,α線束部分で生成した二次電子をパルス高出力電極に電場を与えてドリフトさせる.ドリフトする電子の一部は電子捕獲ガスに捕獲されるが,捕獲されない電子が電極に到達して生じる電圧の時間変化 Vs(t)を,次式の階段関数感度t1 の時定数をもつ直線パルス増幅器で測定して求める.

電子捕獲についての知見はこうして求められた電子捕獲断面積とともに,その電子エネルギー依存性,生成負イオン種の知見が必要なので,質量分析計によって得られる知見も必要である.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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