霜降り(読み)シモフリ

デジタル大辞泉 「霜降り」の意味・読み・例文・類語

しも‐ふり【霜降り】

霜が降ること。霜の降りること。
霜の降りたような白い斑点のある模様。特に織物で、白い繊維と色繊維を混紡した糸を用いて織ったもの。「霜降り学生服
牛肉で、赤身の中に脂肪網の目のように入り込んでいるもの。霜降り肉。
魚肉や鶏肉をさっと熱湯に通したり焼いたりしたあとすぐ冷水につけ、表面を霜の降りたように白くしたもの。湯ぶり。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「霜降り」の意味・わかりやすい解説

霜降り
しもふり

組織の間に大理石模様状に細かく脂肪の入り込んだ肉のこと。また、鶏肉や魚の類を、さっと湯通しするなど短時間加熱する料理法の名称。いずれも、畑に霜が降りたときのように白い斑点(はんてん)が細かく入っているところからきたものである。霜降り状の肉は、肥育したウシや、クジラの尾の部分にある。牛肉では、専門用語として「さし」とよばれ、肥育などにより、こういった肉の部分ができることを「さしが入る」という。霜降り肉にするためには、穀類などデンプン性のものを十分食べさせて脂肪をつけるとともに、よくマッサージなどをして、肉の間に脂肪を入り込ませる。脂肪は熱を通しにくいため、霜降り状に肉の間に脂肪が入っていると、加熱した際、急速に温度上昇がおこらない。そのため、肉のタンパク質繊維が強く縮まず、口あたりが柔らかい。すき焼きなどに高級肉として用いられる。

 料理法の霜降りは、鶏のささみや白身の魚など淡泊な味の生身に、さっと熱湯を注ぎかけたり焼いたりしたものをいう。生(なま)のところと、熱のためにタンパク質変性がおこり白くなったところが混ざり、霜降り状となる。湯を用いる方法湯霜または湯引き、湯ぶりといい、焼く方法を焼き霜という。

河野友美

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改訂新版 世界大百科事典 「霜降り」の意味・わかりやすい解説

霜降り (しもふり)

霜がおりたように表面が薄白くまだらになった状態をいう。日本料理では霜降作りの略で,湯に通して表面を白くしたものの刺身をいい,《料理物語》(1643)ではタイでつくるものとし,《料理早指南》第4編(1822)では〈何の魚にてもふしどり,にへゆ(煮湯)へ入れ,ゆがきて水へとり,さしみにつくるをいふ〉としている。タイの場合は皮つきのままですることも多く,現在はそれを〈皮霜作り〉などと呼ぶが,江戸時代は〈霜降鯛〉といった。また,いまではカツオなどを火であぶって刺身にしたものを〈焼霜作り〉と呼ぶこともある。牛肉で霜降りと呼ぶのは赤身肉の断面に網目のように脂肪の入っているもので,それが細かいほど良質とされる。
執筆者:

霜降り (しもふり)

織物の柄の名称。細かな白い斑点が散らばって,霜がおりたように見える織物。白糸と色糸の撚搦糸(よりからみいと)(杢糸(もくいと))を経緯に使用したり,経緯糸の一方に白糸,他方に色糸を使って〈シボ肌〉を出して霜降状に見せたもの,白と色の繊維を混紡した霜降糸いわゆる朧糸(おぼろいと)を経緯に使用したり,2種以上の糸を撚り合わせ一方のみ染まる染料で染めて作った霜降糸を使ったもの,霜降糸の一つである毛紡のメランジュ・ヤーンを使った織物などがある。多くは平織,綾織で綿小倉,綿ネル,セル,ラシャなどがあり,洋服地に用いられる。
執筆者:

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和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典 「霜降り」の解説

しもふり【霜降り】

①牛肉やまぐろのとろで、赤身の肉のなかに白い脂肪が細かく網の目のように入り込んでいること。また、そのもの。
②料理で、魚や鶏のささみなどに、熱湯をかける、沸騰する湯にさっとくぐらせる、表面だけ焼くなどして短時間加熱したあと、冷水などで急冷すること。表面に霜が降りたように白くなる。ぬめりや血、におい、余分な脂肪分などを取り除き、うまみを封じ込めるために行う。

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百科事典マイペディア 「霜降り」の意味・わかりやすい解説

霜降り【しもふり】

霜が降りたように白い斑点を散らした模様。織物では白色と他の色の糸を混ぜ合わせて織った色柄をいう。毛織物が多いが,綿,化繊にも応用され,ネル,メルトン,クレバネット,小倉などに多くみられる。
→関連項目トップ

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世界大百科事典(旧版)内の霜降りの言及

【刺身】より

…ふつう三枚におろして皮を引くが,タイ,スズキ,カツオなど皮が美しく味もよい魚では,皮をつけたままの皮作りにすることも多い。その場合は,皮の生臭さを除いてやわらかくするために,皮に熱湯をかけ,あるいは火にあぶって霜降りにする。前者を湯びき,皮霜作り,後者を焼霜作りと呼ぶ。…

※「霜降り」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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