青写真(読み)あおじゃしん

精選版 日本国語大辞典 「青写真」の意味・読み・例文・類語

あお‐じゃしん あを‥【青写真】

〘名〙 (blue print の訳語)
① 鉄塩の感光性を利用した写真の一種。また、その写真。一八四二年、イギリスハーシェル発明。感光剤を塗布した感光紙の上に、トレーシングペーパーなどに描いた図面(原図)を載せ、水銀灯などの光で焼き付けて得られる青地に白の図面。設計、工作図面の複写に用いる。シアノタイプ。鉄写真法。ブループリント。《季・冬》〔新しき用語の泉(1921)〕
② (青写真が多く設計図に用いられるところから) 未来の抱負、計画。
※時のうごき(1947)〈中野重治〉「そういう『確かな設計図』の青写真を、いますぐ創ろう」

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デジタル大辞泉 「青写真」の意味・読み・例文・類語

あお‐じゃしん〔あを‐〕【青写真】

露光により青色に発色する鉄塩類などを塗った感光紙に、原図をのせて焼き付ける複写技術。また、それで得られる青地に白の印画。図面の複写、印刷の際の青焼きなどに利用。
1が設計図に用いられるところから》おおよその計画。また、未来の構想。「都市計画青写真
[類語]計画プラン構想筋書手の内プロジェクトもくろみくわだはかりごと一計企図企画立案設計予定もくろむたくらむ策するかくする

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「青写真」の意味・わかりやすい解説

青写真
あおじゃしん

化学的感光材を用いる複写法の一種。シアノタイプともいう。1842年イギリスのハーシェルにより発明された。この種の方法としてはいちばん古く、安価であり、土木、建築、機械などの図面の複写に多用されてきた。感光材料として第二鉄塩と赤血塩(カリウム塩)が使用される。露光すると第二鉄塩は第一鉄塩に変化し、赤血塩と結合してフェリシアン第一鉄となる。これがターンブル青に発色する。複写方法としては、トレーシングペーパーの原図を感光用紙の上に置き、アーク灯高圧水銀灯などで露光する。フェリシアン第一鉄は水溶性でないので、水洗いすると露光しなかった部分が溶けて青地の中に白線として、つまり陰画として現れる。これを乾燥すれば青写真ができあがる。青地部分への書き込みが見にくいことや、水洗い、乾燥という操作をしなければならない不便な面もあって、現在ではジアゾ複写や普通紙複写機PPC=Plain Paper Copier)などの複写技術の発達により、実務として利用されることはほとんどなくなっている。

 ジアゾ複写は、光分解反応をしやすいジアゾ化合物を感光材に使う。この化合物はアルカリ状態でフェノール類と化合してアゾ染料(赤、黒、セピアなど各種の発色が可能)となる。また、光分解したジアゾ化合物はフェノール類には反応しない。この性質のためにトレーシングペーパーのポジ原稿から直接陽画を得ることができる。その方式は、ジアゾ化合物やフェノール類の種類、現像剤や現像方法の違いによってさまざまであるが、大別すれば湿式と乾式とがある。ただし、水洗いの過程がないので乾燥の手間は省かれる。光分解したジアゾ化合物は無色なので、白地の上に色線が残り、光に対しても安定している。

[玉腰芳夫]

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改訂新版 世界大百科事典 「青写真」の意味・わかりやすい解説

青写真 (あおじゃしん)
blue print

鉄(Ⅲ)塩の感光性を利用した写真法でシアノタイプcyanotypeともいう。1842年,イギリスのハーシェルJohn Herschel(1792-1871)が発明し,1950年ころまで土木,建築,機械などの設計図面の複製用として広く使われた。青写真の感光紙は,紙に塩化鉄(Ⅲ),シュウ酸鉄(Ⅲ)アンモニウム,クエン酸鉄(Ⅲ)アンモニウムなどの鉄(Ⅲ)塩をフェリシアン化カリウム(赤血塩)とともに水に溶解して塗布し,乾かして作る。トレーシングペーパーに図面などを書いた原稿をこの感光紙に密着し,日光,水銀灯,アーク灯などの紫外線光源で焼き付けたのち,感光紙を水洗すると青写真ができる。このとき,原稿の白い部分の下にあった感光性鉄(Ⅲ)塩は光化学変化によって鉄(Ⅱ)塩に変化し,鉄(Ⅱ)塩はフェリシアン化カリウムと反応して水に不溶のターンブルブルーになる。原稿の黒い部分の下にある鉄(Ⅲ)塩は変化しないで水洗の際感光紙から除去される。したがって,青写真の画像は青い背景に白い線や白い文字で描いた画像になる。また,感光性鉄(Ⅲ)塩とフェロシアン化カリウム(黄血塩)を使って感光紙を作ると,逆に未感光の鉄(Ⅲ)塩がフェロシアン化カリウムと反応して青色になる。この場合は白い背景に青い線や文字が描かれる。青写真の感光紙は,安価で工業用感光紙として適性はあるが,感度が低く,また水でぬらして仕上げる必要があるため,近年はジアゾタイプに置き換えられた。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「青写真」の意味・わかりやすい解説

青写真
あおじゃしん
blue print

写真法,複写技術の一つ。シュウ酸第二鉄アンモニウムやクエン酸第二鉄アンモニウムなどの Fe3+は,光の作用により Fe2+に変化する。これにフェリシアン化カリウムを作用させると,生じた Fe2+と反応しタンブル青となり,フェロシアン化カリウムを作用させると,感光しない Fe3+と反応し,ベルリン青となる。Fe3+青写真法はこの原理を利用したもの。普通は Fe(OH)3クエン酸で溶かし,これにクエン酸アンモニウムを加えた液を紙に塗って乾かす。光の通りやすい紙に鉛筆または墨でかいた原図をあてて露光し,フェリシアン化カリウム水溶液で現像すれば青い生地に白い画像が,フェロシアン化カリウム水溶液で現像すれば白い生地に青い画像が得られるので,これを希酸で定着する。工作図面や設計図などの複製に利用される。青写真に使う加工原紙の青写真原紙は,化学パルプ,ぼろなどを原料とし,原料のなかの繊維をよく解きほぐし,耐水処理を施してつくる。表面がなめらかで吸収性が均一,湿潤強度をもつことが要求されるが,特に感光剤に障害となる鉄などを含んでいてはならない。

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百科事典マイペディア 「青写真」の意味・わかりやすい解説

青写真【あおじゃしん】

blue print。シアノタイプcyanotypeともいう。1842年英国のJ.ハーシェルの発明した写真法で,古くから技術図面などの線画の複製に多用。クエン酸,シュウ酸または酒石酸などのFe3(+/)を主剤とする溶液を塗った紙に,トレーシングペーパーに墨で書いた図面を重ねて露光すると,光の当たった部分のFe3(+/)が還元されFe2(+/)となる。これを赤血塩溶液に浸すとターンブルブルーの不溶性沈殿をつくり,水洗いすると未感光部分のFe3(+/)が溶け去り,青地に白く原図が複写される。赤血塩の代りに黄血塩溶液で処理すると,逆にFe3(+/)のほうが反応して白地に青く複写される。前者の場合,Fe3(+/)と赤血塩はあらかじめ混合溶液として紙に塗っておいてもよい。
→関連項目ジアゾタイプ複写

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化学辞典 第2版 「青写真」の解説

青写真
アオジャシン
blue print

鉄(Ⅲ)塩から鉄(Ⅱ)塩への光化学的還元を利用する写真法の代表的なもので,青色画像を形成する.たとえば,シュウ酸鉄(Ⅲ)アンモニウム水溶液(25%)60 mL,赤血塩水溶液(20%)40 mL,シュウ酸ナトリウム水溶液(6%)20 mL,アラビアゴム水溶液(5%)1 mL を混合,紙表面に塗布乾燥し,半透明紙に描かれた原図と重ねておもに紫外光に露光する.感光後,水洗すれば露光部は青に着色し,未露光部は白色のまま残る.露光部に生じた鉄(Ⅱ)塩は,共存する赤血塩によりフェリシアン化鉄(Ⅱ)(ターンブルブルー)を生成し,未露光部の鉄(Ⅲ)塩は水洗で除かれる.上の処方から赤血塩を除いて露光後,黄血塩と反応させることにより,ポジ-ポジ型の青写真を得ることもできる.

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