風車(読み)かざぐるま

精選版 日本国語大辞典 「風車」の意味・読み・例文・類語

かざ‐ぐるま【風車】

〘名〙 (「かざくるま」とも)
① 風を羽根車に作用させて動力源とする装置。水くみや米つきなどに使われる。ふうしゃ。
※なぞだて(1516)「あらしは山をさって軒のへんにあり かさくるま」
※わがおもひ(1907)〈金子薫園〉「風車めぐる遠野に臥す牛の上に水見るおらんだの春」
② 子どもの玩具の一種。紙やセルロイドなどで作った車輪形のものに柄をつけて、風力で回転させるもの。《季・春》
※草根集(1473頃)一〇「手にとればそなたにより吹く風車めぐりあふべきしるしとぞ見ん」
③ 紋所の名。玩具の風車を図案化したもの。
④ 明治中期頃の外套の一種。
※東京風俗志(1899‐1902)〈平出鏗二郎〉中「外套は明治初年に行はれし『トンビ』廃れて、風車(カザグルマ)起り」
⑤ 経済状態のよくないことをたとえていう。生活が苦しいこと。火の車。
※煤煙(1909)〈森田草平〉一「家は年中風車で、村でも気の好さ相な檀那場では必ず借銭をした」
キンポウゲ科の落葉性のつる植物。本州、四国、九州に野生し、また、観賞用に栽培され、園芸品種もある。全体に短毛が生え、葉は対生で先のとがった卵形の三小葉からなり、他物にからむ柄を持つ。初夏、枝の先端に花柄を伸ばし、径一〇センチメートルぐらいの白または淡紫色の花を開く。テッセンに似ているが、花柄に対生する苞(ほう)がないことや、花びら(がく)が普通八個ある点が違う。《季・夏》
※俳諧・玉海集(1656)二「風車といふ草花をみて、おさあひの慰草かかさくるま〈貞昌〉」

ふう‐しゃ【風車】

〘名〙 風を受けて回転する羽根車。また、その回転によって動力を得る装置。かざぐるま
浮世草子好色二代男(1684)三「大判の風車を拵へ」

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デジタル大辞泉 「風車」の意味・読み・例文・類語

かざ‐ぐるま【風車】

ふうしゃ(風車)」に同じ。
ビニール・色紙などで小さな羽根車のように作って柄をつけ、風が吹くと回るようにした子供のおもちゃ 春》「廻らぬは魂ぬけし―/虚子
キンポウゲ科の落葉性の蔓植物つるしょくぶつ。林縁などに生え、葉は卵形の小葉からなる複葉。5、6月ごろ、白または淡紫色の花びら状のがくを8枚もつ2に似た形の花が咲く。 夏》
紋所の名。2をかたどったもの。

ふう‐しゃ【風車】

風を受けて回転する羽根車。また、風を大きな羽根車に受けて回転させ、動力を得る装置。かざぐるま。「風車小屋」

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改訂新版 世界大百科事典 「風車」の意味・わかりやすい解説

風車 (ふうしゃ)

風のエネルギーを利用してしごとに変える原動機で,自然力の利用としては水車と並んで古い歴史をもつ。この意味の風車は英語のwind wheelにあたる。製粉などの動力として風車を用いた設備をも風車と称するが,こちらは英語ではwind millと表現される。

 風車も水車と同様に起源は明らかでないが,水平型(車軸は垂直。垂直軸風車)と垂直型(車軸は水平。水平軸風車)の二つの型式がある。一般に前者はオリエントで,後者はヨーロッパでみられる型であり,その起源は別系統と考えられる。中国に水平型風車が現れるのは13世紀以後であるが,アフガニスタンには早くも10世紀に存在した。これらの起源がチベットの風力駆動の祈禱(きとう)用円筒や,中国の仏教寺院で用いられた回転式の経蔵にヒントを得たものではないかという説があるが,確証はない。ヨーロッパではアレクサンドリアヘロンの《気体学》にみえるアネムリオンが最古の垂直型風車といわれているが,単なる玩具にすぎなかったと思われる。

ほんとうの意味での風車の歴史が始まるのはイスラム世界,それもイランにおいてである。9世紀の歴史家タバリーの著作に,ウマル1世が644年にペリシア人技師に暗殺されるが,この技師が風力で動かす製粉機をつくれると主張したことが書かれている。10世紀になると,イスタフリーマスウーディーイブン・ハウカルのような信頼できる著者が,セイスタンの風車について述べている。彼らの記述から,セイスタンが乾燥した砂質地帯で,強い風がつねに吹きあれ,住民は風車を用いて揚水や製粉に利用していたことがわかる。おそらくこのあたりが風車発祥の地で,ここから東西に影響が及んだものと考えられる。この風車の構造の詳細は1300年ころの地理学者ディマシュキーの《陸と海のふしぎ》に図解されている。そこに書かれている説明によれば,この風車は水平型で隔壁で囲まれた2層の建造物からなり,上部には製粉用のひき臼,下部は12本ないし6本の帆からなる回転翼があった。風は一方の側のみから入る一種のタービンである。中国の風車も基本的にはこの型であるが,回転翼を詰め開きが可能な縦帆式にするという独自なくふうがなされ,主として竜骨車の原動機として使用された。

ヨーロッパの風車は12世紀ころに現れるが,その直接の起源は不明である。イスラムからの伝播(でんぱ)をいう説もあるが,出現のときから垂直型であること,さらに垂直型では,製粉などの動力として利用する場合,必ず歯車によって回転の軸を変えなければならないこと,風の利用の効率が垂直型のほうがよいなどという点で根本的な相違があるので,独立の発展と考えるのが妥当であろう。風車は水車と違って,装置全体を風の向きにあうよう回転する必要があり,そのための二つの型式がくふうされた。一つは13世紀ころから使われ始めた箱型風車で,これは機械部分を箱に入れて支柱にのせるものだが,風の吹く向きに向けるとき,重い装置全体を動かす必要があり,ために大きさに限界があった。もう一つは14世紀初めから現れた塔型風車で,これは機械部分を石造の塔の中に収め,翼車の頂部だけが風の吹く向きに回るようにしたものであった。

12世紀に風車がある程度の社会的役割を果たしていたことは,ローマ教皇ケレスティヌス3世(在位,1191-98)が風車に10分の1税を課したことからもうかがえる。13世紀になると,北西ヨーロッパの平原地方に急速に普及した。14世紀には地中海方面へもしだいに浸透し,《ドン・キホーテ》に描かれたような風景を生むことになった。初期には主として製粉用に用いられたが,15世紀になるとオランダの低地を中心に排水用の利用が盛んになり,17世紀の絶頂期にはオランダ北部7州全部で約8000基の揚水用風車があったという。18世紀に入り蒸気機関が発明されると,J.スミートンらによる改良の試みにもかかわらず,しだいに衰微してゆき,19世紀に至ると一部の地域や職種を除いてほとんど姿を消すことになった。
執筆者:

風車は,エネルギー源としての自然風の風向風速が一定しないこと,また風がないときには使えないため,20世紀に入ると,小型の揚水用風車以外はほとんど用いられなくなった。ところが,1973年に起きた石油危機を契機に,再び風力など自然エネルギーが見直されるようになり,これとともに風車の利用も見直されつつある。最近の風車は主として発電用に開発されているが,直径が50m以上,出力は1000kW以上という大規模風車のほか,出力が数10kW級の中型風車を多数並べて発電するウィンド・ファームも建設され,商用電力網に接続して運転されている。

 風車の形式には,風車の回転軸が地面と水平な水平軸風車と,回転軸が地面に垂直な垂直軸風車とがある。また作動原理からは,風車の羽根に作用する風の抗力を利用する低速風車と,揚力を利用する高速風車とに分けられる。オランダ風車,サボニウス風車などの低速風車は,羽根車の周速uと風速vの比である周速比u/vの値が小さく,風車により得られる実際の出力と風のもつエネルギーの比である出力係数Cpも低い。しかし,起動回転力が比較的大きいのが特徴であり,揚水用など低速で大きなトルクを要する用途に適している。一方,プロペラ風車,ダリウス風車などの高速風車は周速比が大きく,出力係数も大きい。このため風力発電に多く用いられているが,起動にやや難があるといえる。これら各種風車の特性曲線を一括して図1に示す。とくにプロペラ風車は,航空機用プロペラや翼の研究成果の蓄積により,技術的には最も進んだ段階にあり,とくに大型風車では,可変ピッチ翼を採用し起動トルクの増大をはかるとともに,風速に応じて回転数の制御を行い,かつ強風時には風車の羽根を風向と平行にするフェザリングにより抵抗を減少させている。図2には大型プロペラ風車の構造を示してある。

 風車による風エネルギーの変換効率には限界があり,約60%を超えないことが知られている。また風車の出力は,その受風面積に比例し,風速の3乗に比例する。したがって,大出力を得るには受風面積の大きい大型風車とするか,中小規模の風車を多数用いることになる。また風速を増大させたり,風のエネルギー密度を高めるための種々のくふうもなされている。特殊な風車を使用して,効率よく出力を取り出そうとする高性能風車システムの試みは,各国の特許などにも多くのものがみられるが,実用化されているものは少ないのが実情である。図3は高性能風車システムの例である。ディフューザー・オーグメント方式は,ローター後方のディフューザー部で圧力の回復を早め,出力を増大するもの,チップ・ベーン方式はブレードの先端に設けたチップ・ベーンにより回転時に風車受風面を通る空気流量を増加するもの,ボルテックス・オーグメント方式は航空機の三角翼の前縁剝離渦を利用し,風のエネルギーを集中するもの,カウンター・ローテーティング方式は前後に重ね合わせたローターが互いに逆方向に回転し,発電機のローターとステーターをそれぞれの風車ローターにより駆動するもの,ジャイロミル方式は垂直に取り付けられた直線翼が風向に対し最適仰角をとりうるように,周回時にピッチを変化させるもの,上昇気流利用風車は太陽熱や排熱の上昇ダクト内に風車を設けたものである。

 さて,風のエネルギー利用の歴史はきわめて古く,その用途は製粉,揚水,排水,製材,製紙,搾油,かくはん,そして発電など多岐にわたっていた。将来のエネルギー源の一つとして風力の再開発を考える場合の根本的な課題は,エネルギー密度の小さな風力をいかに効率よく収集するかということと,変動の大きなこのエネルギーをいかに安定化して使うかの2点に要約される。ここで風エネルギーの利用システムを収集サブシステム,変換サブシステム,貯蔵サブシステム,利用サブシステムの四つのサブシステムに分けて考える。風の運動エネルギーはまず風車により収集され,機械的回転運動に変えられる。この回転運動エネルギーを電気エネルギー,ポテンシャル・エネルギー,熱エネルギーなどに変換するのが変換サブシステムである。エネルギーはいったん貯蔵されたのちに,各種燃料の代替,電力および暖房用として利用される。また,大規模風力発電においては貯蔵を行わず,直接系統電力網に接続しているが,この場合には電力網を一種の貯蔵サブシステムと考えることができる。

 風力の利用は上記の分野や形態に限定されるわけではなく,他の自然エネルギー,例えば太陽熱と風力の相互補完的な性質を活用したハイブリッド方式の利用システムも考えられている。今後,大規模な風力利用が行われるようになる場合には,その事前評価もたいせつである。安全性の問題以外にも,ブレードの騒音,低周波騒音,電波障害,冬季の着氷や着雪,局所気象への影響,さらには美観なども含めた公共受容性などを事前に評価しておくことが不可欠である。
執筆者:


風車 (かざぐるま)

子どもの玩具。紙,セルロイド,経木などでつくった車輪形のものに柄をつけ,風がこれに当たると回る。《嬉遊笑覧》に〈風車は漢名もおなじ〉とあるところから,中国から渡来したといわれるが,紙製のものが平安末期にはすでに存在した。室町時代には子どもの玩具として親しまれたことが小舞の一節からもうかがわれ,江戸時代に入ると新春の遊び道具の一つとなった。江戸雑司ヶ谷鬼子母神の参拝みやげとして五色紙製の風車が広く知られたが,この系統のものが全国各地でもつくられた。大正のころからは紙製にかわりセルロイド製が進出,ガラス玉や鈴をつけたものなど種類も多くなった。
執筆者:

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百科事典マイペディア 「風車」の意味・わかりやすい解説

風車【ふうしゃ】

自然風から動力をとりだす原動機。車軸が鉛直の水平型と車軸が水平の垂直型がある。前者は古くから東方で使用されたといわれる。後者は中世に西欧で製粉,揚水などの動力源に使われ,とくに低地の排水に利用したオランダでは,4枚羽根のオランダ形風車が発達した。設備に費用がかかり,無風時には使えない不便などから,蒸気機関の実用化とともに原動機としての重要性は失われていたが,1970年代の石油危機以来,発電用風車としての開発・利用が積極的に進められている。こうした風力発電用の風車は風力タービンとも呼ばれ,とくにプロペラ風車やダリウス風車が広く利用されている。
→関連項目原動機風力発電ポルダー

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「風車」の意味・わかりやすい解説

風車
ふうしゃ
windmill

風力を利用して羽根車を回し,動力を得る装置。風向に垂直な面内で羽根車が水平軸のまわりに回転する横型が普通であるが,垂直軸のまわりに回転する縦型もある。空気の密度が水の約 800分の1であることから,水車に比べて,同一の出力のものでは非常に大型となる。一部の地方で揚水,脱穀,製粉などに用いられ,風速計にも用いられている。また小出力発電にも用いられている。恒常的な強風のある地域 (たとえば南極基地などのように年間 4m/s 以上の風が 2000時間以上吹くような地域) では有効な電源である。発電用の風車では,普通一定周波数の交流発電が要求されるので,調速機と油圧機構を利用した可変ピッチ機構にするか,いったん直流発電をして交流にする方式が用いられる。

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世界遺産情報 「風車」の解説

風車

オランダと聞いてすぐに風車を思い浮かべる方も多いでしょう。伝統的な風車があることで有名な街キンデルダイクはロッテルダムの南東へ約15kmほどいった川沿いに位置しています。1740年頃につくられた19基の風車が広々とした平原の中にあり、その壮観な風景は訪れた人を魅了してやまず、1997年にはユネスコ世界文化遺産に登録されています。観光シーズンには風車の内部を見ることもできます。また、運河沿いにボートツアーも出ているので、水上からひと味違った風車群を見るのも楽しいでしょう。

出典 KNT近畿日本ツーリスト(株)世界遺産情報について 情報

事典 日本の地域ブランド・名産品 「風車」の解説

風車[人形・玩具]
かざぐるま

東北地方、福島県の地域ブランド。
会津若松市で製作されている。8本の細い竹で1cmの籠をつくり、その端を延ばし紙の羽根をつけ、柄にこの羽根をとめる。風車のように年中まめに働けますようにとの祈りを込め、神棚に飾られたという。福島県伝統的工芸品。

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動植物名よみかた辞典 普及版 「風車」の解説

風車 (カザグルマ)

学名:Clematis patens
植物。キンポウゲ科の落葉木質つる植物,園芸植物,薬用植物

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普及版 字通 「風車」の読み・字形・画数・意味

【風車】ふうしや

風ぐるま。

字通「風」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

デジタル大辞泉プラス 「風車」の解説

風車〔生活用品〕

ポピー製紙が販売するちり紙の商品名。古紙を使用。セミハードタイプ、1800枚入り。

風車〔句集〕

和田悟朗の第10句集。2012年刊行。第64回読売文学賞(詩歌俳句賞)受賞。

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世界大百科事典(旧版)内の風車の言及

【オランダ】より

…冬は降雪もほとんどなく,大きな海港は凍結しないが,運河や湖沼は東から張り出す高気圧の影響で短期間凍結する。かつて偏西風が動かした多数の風車は低地帯の水を海に汲み上げたばかりでなく,製粉,毛織物の縮絨,製材などの動力源として利用された。
[土壌]
 土壌は一般に肥沃とはいえない。…

【風】より

…以下に例をあげてみよう。
[風車,風力発電]
 風車は古くはインドや中国などで,脱穀や製塩のために水を引き入れる道具として使われていた。ヨーロッパには12世紀ごろイスラム教徒によって伝えられ,14,15世紀ごろまで主として粉ひきの動力源として用いられていた。…

【機械】より

…これらのポンプは揚水用や消火用であるが,送風用のポンプがふいごである。初期のオルガンは水圧を利用して風を送るものが多かったが,風車でピストンを動かす送風機つきのオルガンの考案もあった。西洋中世ではオルガンがひじょうに発達したのでオルガヌムorganumというラテン語が〈機械〉を表す語になったほどである。…

※「風車」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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