食事(餌)療法(読み)しょくじりょうほう(英語表記)diet therapy
diet cure

改訂新版 世界大百科事典 「食事(餌)療法」の意味・わかりやすい解説

食事(餌)療法 (しょくじりょうほう)
diet therapy
diet cure

病人一定の食事を与え,それによって治療の目的を果たし,また病気の経過をよくするために行う療法。病人に与える食事を病人食といい,とくに治療を目的としたものを治療食という。食事療法を行うにあたっては,医師が食事箋を作成し,これに基づいて栄養士が献立をつくって,家庭や病院で実施される。食事療法全般については,(1)消化吸収が容易であること,(2)患者嗜好に注意して調理し,あきがこないようにすること,(3)栄養素が不足しないように食品を選ぶこと,(4)病状によって,適切な量を配慮すること,(5)調理にあたってはとくに衛生に気をつけること,などの点に注意することがたいせつである。

 食事療法は一般食事療法と特殊食事療法に大別される。

栄養の維持,増進を図ることによって,間接的に治療に役立てる方法で,食事の種類は流動食,粥(かゆ)食,常食に大別される。流動食は,熱性疾患や急性消化器疾患で消化吸収力が弱まっているとき,脳卒中などで嚥下障害があるときなどの患者に与えられる。粥食は,流動食時の症状が軽快して,食欲や消化吸収の条件が回復した患者に,また常食は回復期の患者に与えられる。

一定の疾患に対して,特別の食事によって直接治療効果を図る方法。対象とする疾患によって,糖尿病食,高血圧食,腎臓病食などの名で呼ばれる。食事の内容は,対象とする疾患や,その重症度によって異なる。たとえば,糖尿病では総カロリー量の制限が中心になるのに対して,高血圧では食塩の制限,さらに腎不全では食塩とタンパク質の制限が基本となる。これらの特殊食事療法では,症状の程度に合わせて,総カロリー量,栄養素,塩分などの摂取量が細かく規定されていることが多い。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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