飲・呑(読み)のむ

精選版 日本国語大辞典 「飲・呑」の意味・読み・例文・類語

の・む【飲・呑】

〘他マ五(四)〙
① 口に入れて喉(のど)に下し胃に送りこむ。液体などを喉に流しこむ。
書紀(720)神代上(兼方本訓)「八岐大蛇(やまたのをろち)の為に、所(ノマれ)き」
② 吸いこむ。吸う。
狂歌・後撰夷曲集(1672)六「わらびにてのめるたばこの不自由な旅はかたはらいたばしの宿」
③ おさめ入れる。うけ入れる。あわせ取る。「清濁併せのむ」
※ロドリゲス日本大文典(1604‐08)「ダイワ ショウヲ nomu(ノム)
④ 見くびる。あなどる。また、圧倒する。
太平記(14C後)一一「千葉屋発向の朝敵等猶畿内に満て、勢ひ京洛を呑めり」
※歌舞伎・戻橋脊御摂(1813)序幕「勇みが来ようが、ぐっとこちらから呑(ノ)んでかかりねえな」
⑤ おさえる。こらえる。
※時は過ぎゆく(1916)〈田山花袋〉五三「乃木大将夫妻の殉死がまた人々を驚かした。〈略〉国民は一斉にその血汐に向って暗涙を呑(ノ)んだ」
夜明け前(1932‐35)〈島崎藤村〉第二部「独りで啜泣きの声を呑むこともあった」
⑥ 承知する。引き受ける。
※洒落本・箱まくら(1822)上「『才兵衛さん、今のをよろしう』〈略〉『のんでゐます』」
※ある隷属国の悲劇(1955)〈中野好夫〉「解決案を両国が呑み」
⑦ だまして自分のものにする。着服する。
浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)長町「此守り袋には、お性根が入てあったれど、そりゃおれが飲(ノン)で仕廻ふて」
⑧ 収める。隠す。また、隠し持つ。
草枕(1906)〈夏目漱石〉一二「すぐ今朝の短刀を連想した。もしや懐に呑んで居りはせぬかと思ったら」
⑨ (呑) 取引で、呑み行為をする。
※金(1926)〈宮嶋資夫〉二〇「仲買も呑(ノ)んでゐる」
⑩ (呑) 競馬・競輪などで、呑み行為をする。
※雪夫人絵図(1948‐50)〈舟橋聖一〉一「シーマーなら、何万円でものんでやるぜ」
謡曲で用いる語。
(イ) 「つ」の文字を「つ」と発音しないで、口を閉じて尾音を鼻に抜くように発音する。「日月」の「じつげつ」など。含む。
(ロ) 回し節の後半にある字の産字(うみじ)(=母音)を「ン」に変えてうたう。「かア」を「かン」に、「きイ」を「きン」のようにうたうことをいう。

のみ【飲・呑】

〘名〙 (動詞「のむ(飲)」の連用形の名詞化)
① のむこと。吸い込むこと。特に、酒やタバコに関していう。近世、「のみのすくね」などと洒落て使うことも多い。〔観智院本名義抄(1241)〕
※雑俳・銭ごま(1706)「のみこんで・いよいよのみがこめぬ也」
※俳諧・大坂独吟集(1675)下「あつかひ口もねぢた月影 御もたせの手樽ののみの露落て〈由平〉」
③ (呑) 「のみこうい(呑行為)」の略。〔新しき用語の泉(1921)〕
④ 謡曲の発音法の一つ。呑んで謡うこと。→飲む

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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