饗庭篁村(読み)あえばこうそん

精選版 日本国語大辞典 「饗庭篁村」の意味・読み・例文・類語

あえば‐こうそん【饗庭篁村】

小説家劇評家。号は竹の屋主人江戸に生まれる。ユーモア風刺をたたえた軽妙な筆致で、明治二〇年代の新旧文学交替期に特色を発揮した。著作「人の噂」「むら竹」「竹の屋劇評集」など。安政二~大正一一年(一八五五‐一九二二

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デジタル大辞泉 「饗庭篁村」の意味・読み・例文・類語

あえば‐こうそん〔あへばクワウソン〕【饗庭篁村】

[1855~1922]小説家・劇評家。江戸の生まれ。本名与三郎。号は竹の屋主人。江戸戯作文学系の作家。小説「当世商人気質」、「竹の屋劇評集」など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「饗庭篁村」の意味・わかりやすい解説

饗庭篁村
あえばこうそん
(1855―1922)

小説家、劇評家。本名与三郎。別号竹の屋(舎)主人など。江戸生まれ。1874年(明治7)読売新聞社に入社。のち高畠藍泉(らんせん)に認められて編集記者となる。出世作『当世商人気質(とうせいあきうどかたぎ)』(1886)、短編『人の噂(うわさ)』(1886)、『藪(やぶ)の椿(つばき)』(1887)などのほか、井原西鶴(さいかく)の『好色一代女』に倣った『蓮葉(はすは)娘』(1887)などによって、明治20年代初頭の元禄(げんろく)文学復興の先駆的役割を果たした。作品集『むら竹』全20巻のほか、『竹の屋劇評集』があり、また随筆評論集『雀躍(すずめおどり)』は江戸文学研究のための必読書である。根岸谷中(やなか)に住む文学グループ(根岸派)の中心的存在であった。

[尾形国治]

『『明治文学全集26 根岸派文学集』(1971・筑摩書房)』

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百科事典マイペディア 「饗庭篁村」の意味・わかりやすい解説

饗庭篁村【あえばこうそん】

小説家,劇評家。本名は与三郎。江戸生れ。1874年読売新聞に入社,1886年《当世商人気質》を発表。八文字屋本風の戯作で知られ,明治20年(1887年)前後には須藤南翠ととともに最も人気のある作家となった。また〈竹の屋主人〉の号で劇評にも活躍した。
→関連項目新小説中西梅花早稲田文学

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朝日日本歴史人物事典 「饗庭篁村」の解説

饗庭篁村

没年:大正11.6.20(1922)
生年:安政2.8.15(1855.9.25)
明治時代の小説家,劇評家。本名与三郎,別号竹の屋(舎)主人など。江戸下谷の生まれ。明治7(1874)年,読売新聞社に文選校正掛として入社,のち文才を認められ同紙に『当世商人気質』『人の噂』(ともに1886年)などを連載。江戸小説の伝統のうえに新風俗を加味して歓迎された。坪内逍遥らとも交友。『掘出しもの』(1889)も力作で,旺盛な筆力は著作集形式の作品集『むら竹』(全20巻,小説・紀行68編を収録,1889~90年)に集大成されている。明治22(1889)年,朝日新聞社に移り,小説,劇評,江戸文学研究で活躍するが,古風な文学性のため時流に乗れず,力量を発揮できなかった。

(中島国彦)

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「饗庭篁村」の解説

饗庭篁村 あえば-こうそん

1855-1922 明治-大正時代の小説家,劇評家。
安政2年8月15日生まれ。明治7年読売新聞社に入社し,19年小説「当世商人気質(あきゅうどかたぎ)」「人の噂(うわさ)」を連載してみとめられる。22年東京朝日新聞社にうつり,劇評や江戸文学研究に力をいれた。全20巻の著作集「むら竹」がある。大正11年6月20日死去。68歳。江戸出身。本名は与三郎。別号に竜泉居士,竹の屋主人など。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「饗庭篁村」の意味・わかりやすい解説

饗庭篁村
あえばこうそん

[生]安政2(1855).8.15. 江戸
[没]1922.6.20. 東京
小説家,劇評家。本名,与三郎。別号,竹の屋主人。江戸文学の継承者で,小説文集『むら竹』 (20巻,1889~90) がある。『東京朝日新聞』に 30年間劇評を書いた。

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世界大百科事典(旧版)内の饗庭篁村の言及

【劇評】より

… 近代になると新聞,雑誌などのジャーナリズムの発展につれ,具体的な舞台成果に対する批評,すなわち舞台評主体の職業的劇評家が多く輩出するようになる。日本でも,西欧近代劇の影響を受けた明治以降は,饗庭篁村(あえばこうそん)(1855‐1922),岡本綺堂,伊原青々園など新聞,雑誌に拠る劇評家が数多く登場した。また《歌舞伎》誌の三木竹二は従来の見巧者的な評言ではなく,実証的で清新な歌舞伎批評によってその権威を高めた。…

※「饗庭篁村」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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