香・芳(読み)こうばしい

精選版 日本国語大辞典 「香・芳」の意味・読み・例文・類語

こうばし・い かうばしい【香・芳】

〘形口〙 かうばし 〘形シク〙 (「かぐわしい」の変化した語)
① かおりがよい。においがよい。かぐわしい。
書紀(720)皇極三年三月(岩崎本平安中期訓)「大(はなはだ)(カウハシキ)味有り」
※地蔵十輪経元慶七年点(883)序「道気を檀林に受けて、香しき風、更に馥(カウバ)し」
② 見た目や心に受ける感じなどが、すばらしい。魅力的である。美しい。好ましい。りっぱである。徳が高い。
※六条修理大夫集(1123頃)「かうばしき御音づれは、手の舞ひ足の踏まん所もおぼえず」
多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉前「母親が傍(そば)で、睨まれるのは余り香(カウバ)しくない」
[語誌](1)中古から用例が認められ、「かぐはし」の音が変化した形として、嗅覚的な美を表わす。
(2)中世から近世にかけては、嗅覚的な美のみならず、対象そのものから発せられる全体的な印象や感じが好ましくて、心がひかれるという「かぐはし」にもある意味や、一歩進んで、客観的にすばらしいといえる状態を表わす用例も見える。
(3)近代に入ると、派生的な美の意識よりも、嗅覚的な美を表わす原義での用法主流となり、挙例の「多情多恨」のような用法は「かんばしくない」の形で残される。
こうばし‐げ
〘形動〙
こうばし‐さ
〘名〙

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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