驚・愕・駭(読み)おどろく

精選版 日本国語大辞典 「驚・愕・駭」の意味・読み・例文・類語

おどろ・く【驚・愕・駭】

〘自カ五(四)〙 今まで意識しなかったことを意識する。はっと気がつく。
① 意外なことにあって、心が動く。心の平静を失う。びっくりする。
書紀(720)神代上(水戸本訓)「天照大神驚動(ヲトロキ)たまひて、梭(かひ)をもて身を傷(いた)ましむ」
平家(13C前)七「水鳥羽音におどろいて、矢ひとつだにも射ずして」
② はっとして気づく。注意がひかれる。
古今(905‐914)秋上・一六九「秋きぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる〈藤原敏行〉」
③ 眠りからさめる。目ざめる。
※書紀(720)垂仁五年一〇月(熱田本訓)「時に天皇、皇后の膝に枕して昼寝したまふ。〈略〉天皇則ち寤(ヲトロキ)て、皇后に語りて曰はく」
④ (「驚いた…」などの形で) あまりのひどさにびっくりするほどである。あきれる。
※アパアトの女たちと僕と(1928)〈龍胆寺雄〉八「驚いた無神経な奴だな」
[語誌](1)上代から生理的覚醒(目覚める)と心理的覚醒(びっくりする)とを意味したが、中古では、意外な事実に遭遇して平静さを失うとか、事態を急に悟るといった心理的意味での用法が目立つ。
(2)平安中期以降「目おとろかぬはなきを」〔源氏藤裏葉〕のように目、耳、心など感覚関連語彙と共起する例も多く、さらに「今昔‐一七」の「驚くままに目悟めぬ」、「同‐二八」の「目悟めて驚たりける」などから双方の意味に分化傾向が見られ、次第に「目覚める」意は用いられなくなった。

おどろき【驚・愕・駭】

〘名〙 (動詞「おどろく(驚)」の連用形名詞化)
① おどろくこと。びっくりすること。
※相模集(1061頃か)「衣手山田のそほづと思ふともおどろきもなき世にのみぞへん」
不慮のこと。突然の事故
一国首都(1899)〈幸田露伴〉「大火災の惨は防ぐべくして小火災の驚きは防ぐべからず」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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