鬼王団三郎(読み)おにおうどうざぶろう

精選版 日本国語大辞典 「鬼王団三郎」の意味・読み・例文・類語

おにおう‐どうざぶろう おにワウダウザブラウ【鬼王団三郎】

浄瑠璃歌舞伎などの曾我物に登場する二人物略称曾我兄弟に心からの忠誠を尽くした、鬼王新左衛門とその弟の団三郎道三郎)。また、特に弟一人をさしていうこともある。

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デジタル大辞泉 「鬼王団三郎」の意味・読み・例文・類語

おにおう‐どうざぶろう〔おにワウダウザブラウ〕【鬼王団三郎】

浄瑠璃歌舞伎などの曽我物に登場する二人の人物の略称。曽我兄弟に仕えた鬼王新左衛門と、その弟の団三郎(道三郎)のこと。

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改訂新版 世界大百科事典 「鬼王団三郎」の意味・わかりやすい解説

鬼王・団三郎 (おにおうどうざぶろう)

団三郎・鬼王の兄弟は,曾我十郎・五郎の従者として知られている。ただし,鬼王・団三郎は能や歌舞伎の曾我物での呼称であり,《曾我物語》では鬼王丸・丹三郎(真名本),鬼王・道三郎(仮名本)である。幼少のころより曾我兄弟に仕え,片時も離れず付き従っていたと《曾我物語》にあるが,実際に物語中に登場するのは後半になってからのことであり,2人の登場には不審な点がある。鬼王・団三郎は,富士の狩場仇討に向かう曾我兄弟に同行し,兄弟の形見を曾我の里へ届けると同時に,兄弟の最期のありさまを知らせる役目をも担っていた。真名本では,後日譚として兄弟の母と虎御前箱根権現へ向かうおり,馬の口を取り2人に兄弟の思い出を語って聞かせたこと,また箱根の別当より戒を授けられ山々寺々を修行し,曾我の里へ帰って大往生を遂げたことが記されている。一方,仮名本では,形見を届けると高野山に上り曾我兄弟の後生を弔ったという。曾我兄弟の物語の語り手として,盲女が《七十一番職人歌合》や能《望月》の例から知られているが,この鬼王・団三郎は曾我兄弟の物語の男語り担い手に擬せられている。旧臣を自称し,異常な長命を保ち,亡き主人の事跡を語り,その菩提を弔いつつ回国する語り手たちの例は数多くある。有王や斎藤五・斎藤六の類である。鬼王・団三郎の語り手としての面影を《曾我物語》の記述の中に認めうるばかりでなく,曾我兄弟の遺骨などを携えて回国していた複数の鬼王・団三郎の足跡が,寺社の縁起などに付随して日本全国に点在しているのである。
曾我兄弟
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