魂極・玉極・霊極(読み)たまきわる

精選版 日本国語大辞典 「魂極・玉極・霊極」の意味・読み・例文・類語

たま‐きわる ‥きはる【魂極・玉極・霊極】

[1] 語義およびかかり方未詳。
① 「内」にかかる。
古事記(712)下・歌謡「多麻岐波流(タマキハル) 内の朝臣(あそ)(な)こそは 世の長人(ながひと) そらみつ 大和の国に 雁卵(こ)(む)と聞くや」
② 「命(いのち)」にかかる。
万葉(8C後)九・一七六九「かくのみし恋ひし渡れば霊剋(たまきはる)命も吾は惜しけくもなし」
③ 「磯(いそ)」「幾世(いくよ)」にかかる。
※万葉(8C後)一七・四〇〇三「冬夏と 分くこともなく 白たへに 雪は降り置きて いにしへゆ ありきにければ こごしかも 岩の神さび 多末伎波流(タマキハル) 幾代経にけむ」
④ 「世(よ)」「憂(う)き世」にかかる。
※万葉(8C後)一一・二三九八「玉切(たまきはる)世までと定め頼みたる君によりては言(こと)のしげけく」
⑤ 「我が」「立ち帰る」「心」などにかかる。
※万葉(8C後)一〇・一九一二「霊寸春(たまきはる)吾が山の上に立つ霞立つとも坐(う)とも君がまにまに」
※新勅撰(1235)雑二・一一三〇「恋しとも言はでぞ思ふたまきはる立ち帰るべき昔ならねば〈源俊頼〉」
[2] 〘連語〙 ((一)②を、「魂(たま)極る(命)」と解したところから生じたもの) 魂がきわまる。命が終わる。
※車屋本謡曲・朝長(1432頃)「本の身ながら玉きはる、魂は善所におもむけども、魄は修羅道に残って」
[3] (たまきはる) 「建春門院中納言日記(けんしゅんもんいんちゅうなごんにっき)」の別称。冒頭の和歌の句による名。
[補注]((一)について) (1)①のかかり方については諸説あるが定説はない。(イ) 手纏(たまき)を佩(は)く内の朝臣(武内宿禰)の意で、「内の朝臣」の「内」と同音でかかる(記紀の例は枕詞としない)。(ロ) 手纏を佩く腕の意で、「腕」と類音でかかる。(ハ) 玉を刻む意で、「打ち」と同音でかかる。(ニ) 玉作りの本拠地である「宇智」へかかる、など。
(2)③の用法は、「命」の「い」にかかるという意識の転じたものといわれ、あるいは「礒宮」にかかる用法には古い伝誦があったのかとも想像されている。
(3)⑤の「万葉」例の「吾が山」は、「春山」の誤りとする説も多い。一説に、玉の輪をきざむ意で「わ」にかかるという。後世の例は、これを学んだものか。
[補注]((二)について) この意識は、「万葉」例の原文「霊剋」「玉切」などにすでにうかがわれる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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