鶏冠石(読み)けいかんせき(英語表記)realgar

翻訳|realgar

精選版 日本国語大辞典 「鶏冠石」の意味・読み・例文・類語

けいかん‐せき ケイクヮン‥【鶏冠石】

〘名〙 砒素硫化鉱物。オーロラ赤色、オレンジ黄色などの樹脂光沢をもつ単斜晶系柱状結晶。長時間光をあてると石黄と方砒素(ほうひそ)鉱に変質し、粉末状になる。熱水性・噴気性鉱床中に産する。花火に用いられる。リアルガー。鶏冠雄黄(きに)。〔鉱物字彙(1890)〕

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デジタル大辞泉 「鶏冠石」の意味・読み・例文・類語

けいかん‐せき〔ケイクワン‐〕【鶏冠石】

砒素ひそ硫黄からなる鉱物。赤色、橙黄色で樹脂光沢のある単斜晶系短柱状結晶。昔は花火の材料に用いた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「鶏冠石」の意味・わかりやすい解説

鶏冠石
けいかんせき
realgar

ヒ素As)の鉱石鉱物の一つ。人工的につくられたα(アルファ)-As4S4に対応する。同質異像関係にあるパラ鶏冠石はγ(ガンマ)-As4S4に対応する。β(ベータ)-As4S4に相当する鉱物相は、化学組成がAs4S4に近い部分ではベータ鶏冠石(αの高温相。転移点250℃)、As8S9に近い部分ではアラクラン石とよばれているが、β相関係相の命名に関しては現在多少の不一致点がある。噴気性鉱床、ある種の浅~深熱水性鉱床、火山噴気孔、石炭層、再結晶苦灰岩、ホウ酸塩を含む堆積(たいせき)岩中などに産し、単斜柱状の自形結晶をなす。日本の産地としては、群馬県下仁田(しもにた)町西ノ牧鉱山閉山)が有名。かつて三重県多気郡勢和(せいわ)村(現、多気町)丹生(にう)鉱山(閉山)では水銀鉱石中に石黄(せきおう)(雄黄)とともに産した。空気中で熱すると、有毒な三酸化二ヒ素の白煙を発生する。和名は、その色が鶏(とり)の鶏冠(とさか)を連想させることにちなむ。英名は、アラビア語のRahj al ghar(鉱石の粉末)に由来するとされている。

[加藤 昭 2016年8月19日]


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改訂新版 世界大百科事典 「鶏冠石」の意味・わかりやすい解説

鶏冠石 (けいかんせき)
realgar

化学組成はAsS。単斜晶系に属し,短柱状結晶をなす鉱物。透明紅色ないし橙色を呈し,脂肪光沢をもつ。鶏冠のようにあざやかな紅色にちなみ名付けられた。比重3.48,モース硬度1.5~2。へき開は{010}に良好。長時間光にさらされるとAs2S3とAs2O3の混合物に分解し黄橙色粉末になる。低温熱水鉱脈,火山昇華物,温泉沈殿物中に含まれて産出し,しばしば輝安鉱Sb2S3,石黄As2S3を伴う。日本では群馬県西牧鉱山,北海道手稲鉱山,青森県恐山が産地として有名である。量的にまとまって産出することはまれで,ヒ素資源としては重要でない。硝石と混合して火花を飛ばしたとき高輝度白色光を発生するため,花火に混入して使用される。古くは黄橙色顔料として利用された。
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百科事典マイペディア 「鶏冠石」の意味・わかりやすい解説

鶏冠石【けいかんせき】

脂肪光沢で,鶏冠(とさか)のように赤色またはだいだい色を示す透明〜半透明な鉱物。単斜晶系。産状は柱状の小結晶が集合した塊状が多い。硬度は1.5〜2,比重3.56,へき開しやすい。組成はAsSで,日光に当たると,黄色粉末の雄黄に変化する。群馬県西牧鉱山,北海道手稲鉱山などから美晶を産した。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「鶏冠石」の意味・わかりやすい解説

鶏冠石
けいかんせき
realgar

リアルガーともいう。 AsS。ヒ素の硫化物を主成分とする鉱物。単斜晶系の短柱状晶。比重 3.56,硬度 1.5~2。ヒ素採掘の重要な鉱床になる。

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世界大百科事典(旧版)内の鶏冠石の言及

【雄黄】より

…化学成分As2S3の鉱物。雄黄という和名は,本来鶏冠石の別称であり,orpimentに対しては,雌黄(しおう)または石黄(せきおう)の名称を使用するのが望ましいとされている。レモン黄色透明で,脂肪光沢,へき開面は真珠光沢をもつ。…

※「鶏冠石」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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