鷦鷯(読み)さざき

精選版 日本国語大辞典 「鷦鷯」の意味・読み・例文・類語

さざき【鷦鷯】

〘名〙 (「ささき」後に「ささぎ」とも) 鳥「みそさざい(鷦鷯)」の古名
※古事記(712)下・歌謡「雲雀(ひばり)は 天に翔(かけ)る 高行くや 速総別(はやぶさわけ) 佐邪岐(サザキ)捕らさね」
書紀(720)神代上(兼方本訓)「白(かかみ)の皮を以て舟に為(つく)り、鷦鷯(ササキ)の羽を以て衣に為りて〈略〉〈鷦鷯(せうしう)、此をば娑娑岐(ササキ)と云ふ〉」
[語誌](1)「古事記」では「サザキ」、「日本書紀」の訓注では「ササキ」であるが、平安末期になると「ササギ」の語形も現われる。
(2)「鷦鷯」と「雀」は、別の鳥であるが、「古事記」が「大雀命(おほさざきのみこと)」と用いた理由は不明。
(3)語源的には、コホロギのように、擬声語接尾語「キ」が付いたものと考えられる。「ササ」が擬声語であるとすれば、古代語で「サ」の音価は tsa に近いと考えられているので、鳴き声からの名か。

みそ‐さざい【鷦鷯】

〘名〙 ミソサザイ科の小形の鳥。日本産の鳥では最小で、全長約一〇センチメートル。尾は短い。羽は焦茶色暗黒色の細横紋がある地味な鳥。雄は美しい声でさえずる。クモ昆虫主食とする。ヨーロッパからアジアにかけて広く分布し、日本では、冬は人家付近に、繁殖期初夏には山地の渓流付近の森にすむ漂鳥。みそさんざい。たくみどり。しょうりょう。みそっちょ。《季・冬》 〔撮壌集(1454)〕

しょう‐りょう セウレウ【鷦鷯】

〘名〙 鳥「みそさざい(鷦鷯)」の漢名
菅家文草(900頃)四・堯譲章「鷦鷯従楽、浸灌莫辛艱」 〔晉書‐郭璞伝〕

みそ‐さんざい【鷦鷯】

〘名〙 (「みぞさんざい」とも) =みそさざい(鷦鷯)
※春林本下学集(室町末)「鷦鷯 ミソサンザイ」

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デジタル大辞泉 「鷦鷯」の意味・読み・例文・類語

みそ‐さざい【鷦鷯】

スズメ目ミソサザイ科の鳥。全長約10センチで日本産で最小の鳥の一。全体に濃い茶色で細かい黒斑がある。日本では漂鳥で、渓流沿いに多く、活発に動き回り、短い尾を立てる。春先に張りのある声でさえずる。かきちんない。みそっちょ。 冬》夕暮しののそよぎや―/蓼太

さざき【鷦鷯】

《「ささぎ」とも》ミソサザイの古名。〈新撰字鏡

しょう‐りょう〔セウレウ〕【××鷯】

ミソサザイ別名

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普及版 字通 「鷦鷯」の読み・字形・画数・意味

【鷦鷯】しようりよう(せうれう)

みそさざい。〔荘子、逍遥遊〕鷦鷯深林に(すくら)ふも、一枝にぎず。偃鼠(えんそ)河に飮むも、腹を滿たすにぎず。歸休せよや君、予(わわ)天下を用(もつ)て爲す無し。

字通「鷦」の項目を見る

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動植物名よみかた辞典 普及版 「鷦鷯」の解説

鷦鷯 (ミソサザイ)

学名:Troglodytes troglodytes
動物。ミソサザイ科の鳥

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

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