黄変米(読み)おうへんまい

精選版 日本国語大辞典 「黄変米」の意味・読み・例文・類語

おうへん‐まい ワウヘン‥【黄変米】

〘名〙 黄色に変色した米。特に昭和二九年(一九五四)頃の輸入米で、カビのために黄色になり、悪臭をもった米をいった。
砂時計(1954‐55)〈梅崎春生二八「『黄変米の方はどうなってる?』教授が質問した」

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デジタル大辞泉 「黄変米」の意味・読み・例文・類語

おうへん‐まい〔ワウヘン‐〕【黄変米】

子嚢菌しのうきん一種が繁殖したため、白米が黄色に変色したもの。有毒。

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改訂新版 世界大百科事典 「黄変米」の意味・わかりやすい解説

黄変米 (おうへんまい)

黄色に変色した米のことであるが,とくに微生物の付着繁殖した結果変色した米をさすことが多い。さらに狭義には毒物を生産するカビが繁殖して黄色になった米をいう。毒物を生産し米を黄変させるカビには次の3種類が知られている。(1)ペニシリウム・シトレオビリデPenicillium citreoviride 1936年に台湾米から発見され,シトレオビリディンを生産する。これは急性中毒としては神経毒で,ひどいときには呼吸障害を起こし死亡する。また慢性中毒のときは貧血を起こす。(2)ペニシリウム・イスランジクムP.islandicum 48年にエジプトから輸入した米で発見され,ルテオスカイリンルブロスカイリン,ルグロシンなどのアントラキノン系色素群のほかに含塩素ペプチドのシクロクロロチン(イスランジトキシン)を生産する。ルテオスカイリンおよびイスランジトキシンは肝臓毒である。(3)ペニシリウム・シトリナムP.citrinum 52年にタイから輸入した米で発見され,シトリニンを生産する。シトリニンは腎臓毒である。

 衝心脚気と類似した症状を示すいわゆる在来黄変米(台湾米から発見されたもの)が研究端緒となり,農学医学両面から検討が行われていたが,第2次大戦後の食糧難を切りぬけるため,世界各国から日本に輸入された米から有害カビが分離され,54年から55年にかけていわゆる黄変米事件が起こった。現在は監視体制ができており,また外国からほとんど米を輸入していないので問題になるようなものはない。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「黄変米」の意味・わかりやすい解説

黄変米
おうへんまい

米に種々の微生物が繁殖し、変質米(病変米)を生ずることがある。ペニシリウム属のカビが米に生育すると、黄色あるいは赤紅色の物質を生産し、穀粒が着色するので、これらの変質米を黄変米とよんでいる。日本では昔からごくわずかであるが、食すると衝心脚気(かっけ)に類似した症状を示す、いわゆる在来黄変米の存在が知られていたが、とくに第二次世界大戦後の食糧難時代に、日本に輸入された米のいくつかから有害ペニシリウム菌が分離され、1954~1955年(昭和29~30)を中心に黄変米は大きな話題となった。

 黄変米の原因となる有害微生物のおもなものとして、三つのペニシリウム属の菌があり、第一のシトレオビリドPenicilum citreovirideは、神経毒を生産し、このため急性中毒をおこし、ひどい場合には呼吸障害をおこし死に至る。第二のイスランジカムP. islandicumは、ルテオスカイリン、ルブロスカイリン、ルブロシンなどアントラキノン系色素群とともに含塩素環状ペプチド、シクロクロロチン(イスランジトキシン)を生産する。ルテオスカイリンとイスランジトキシンは肝臓毒であり、またルテオスカイリンは発癌(はつがん)性である。第三のシトリナムP. citrinumは、肝臓毒であるシトリニンという黄色色素を生産する。

[不破英次]

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百科事典マイペディア 「黄変米」の意味・わかりやすい解説

黄変米【おうへんまい】

主としてペニシリウム属Penicilliumのカビの寄生により変質,黄変した米。動物実験で毒性の明らかなものに,呼吸麻痺(まひ)や貧血を起こすペニシリウム・シトレオビリデ(狭義の黄変米菌),腎臓障害を起こすペニシリウム・シトリナム(タイ国黄変米菌),肝臓障害を起こすペニシリウム・イスランジクム(イスランジア黄変米菌)などがある。日本でも1953年ごろ東南アジアから大量輸入した米に混入していて社会問題となったことがある。
→関連項目アオカビ(青黴)

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栄養・生化学辞典 「黄変米」の解説

黄変米

 カビが寄生して,黄色の色素を作り,その色素によって黄色に変質した米.

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