黒部市(読み)クロベシ

デジタル大辞泉 「黒部市」の意味・読み・例文・類語

くろべ‐し【黒部市】

黒部

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日本歴史地名大系 「黒部市」の解説

黒部市
くろべし

面積:八六・七七平方キロ

県の北東部、北アルプスの鷲羽わしば(二九二四メートル)に源を発する黒部川とそうヶ岳(一八五五メートル)から流れ出る布施ふせ川が富山湾に注ぐその間に位置し、北は下新川しもにいかわ入善にゆうぜん町、東は同郡宇奈月うなづき町、南は魚津市に接し、西は富山湾。地形は砂丘・砂堆・平地(低湿地・扇状地)、台地・山地があり変化に富んでいる。南東部は標高一〇〇―三〇〇メートルの洪積世の黒部川の氾濫原で十二貫野じゆうにかんの台地とよばれ、江戸時代末期に開拓された。平地は黒部川および布施川の氾濫によって形成された沖積平野で、黒部川扇状地の南西部にあたる。

市の北側を南東から北西に向かって流れている黒部川は、古来四十八しじゆうはちヵ瀬・いろは川ともよばれ、堤防もなかったので、川原と雑木の原野を自由奔放に流れていたと思われる。天保七年(一八三六)の「増補大路水経」には「三日市より東に植木村又沓掛村あり。此村より黒部川を渡り始るなり。入膳の前上野村まで川原の内なり」とある。かつては本流が舟見野ふなみの台地の下を流れ、古黒部ふるくろべ(現入善町)へ流入していたが、天文四年(一五三五)七月一日の大洪水で西側へ主流が移動した。その後さらに文政一一年(一八二八)七月一〇日の大洪水で主流が西方の下立おりたて村・浦山うらやま(現宇奈月町)若栗わかぐり村・荻生おぎゆう村・大布施おおふせ村・石田いしだ村・村椿むらつばき村・生地いくじ村方面に移動したが、漸次河身が東に移り現在の位置に定着するようになった(下新川郡史稿)。黒部川の洪水は夏の梅雨頃が最も多く、次いで春の融雪時、秋の台風時に多い。口碑によれば、大きな水害として天慶年間(九三八―九四七)、嘉暦年間(一三二六―二九)、天文四年、慶長一五年(一六一〇)、寛永年間(一六二四―四四)、延宝年間(一六七三―八一)、天和三年(一六八三)、貞享元年(一六八四)、元禄年間(一六八八―一七〇四)、宝永年間(一七〇四―一一)、正徳年間(一七一一―一六)、享保一一年(一七二六)、寛延三年(一七五〇)、宝暦年間(一七五一―六四)、文政一一年、安政三年(一八五六)、同六年などがある(黒部市史)。明治以降の改修で主流は安定したものの豪雨ごとに築堤が破壊された。両岸の堤防がだいたい安定し、洪水が少なくなったのは第二次世界大戦後、近年に至ってからのことである。黒部川水域用水のなかで黒部市に関するものは、吉田よしだ用水・飛騨ひだ用水など中世に開削された用水と、さんヶ用水、荻若おぎわか用水、若栗用水など近世前期に開削された用水と、ごう用水・宮野みやの用水・十二貫野用水など近世後期に開削された用水がある。

黒部市
くろべし

2006年3月31日:黒部市と下新川郡宇奈月町が合併
【宇奈月町】富山県:下新川郡
【黒部市】富山県

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「黒部市」の意味・わかりやすい解説

黒部〔市〕
くろべ

富山県北東部,黒部川流域に広がる市。東で長野県に接する。山岳部は国内屈指の多雨多雪地帯。1954年桜井町と生地町が合体して市制施行。2006年宇奈月町と合体。富山湾に面する北西部の平野では砂丘が発達しているが,大半は山岳地帯に含まれる。黒部川河口付近にある中心市街地の三日市は 3の日に市が立つ市場町で,北陸道宿場町として栄えた。また謡曲『鉢木』で有名な桜井庄があったとも伝えられている。黒部川扇状地の扇央部にあたる愛本は,夏場に黒部川河口付近が氾濫するため北陸道の裏街道の渡河点として発達した。農業は米作が中心。贈答品などに利用される大型の黒部スイカも生産される。富山湾に臨む生地ではイワシ,タイ,ホタルイカが水揚げされる。酒造,製材,水産加工業が行なわれるほか,ファスナー,アルミニウム建材の製造も盛ん。宇奈月温泉黒部峡谷の入り口にある観光基地。黒部川に沿って黒薙温泉鐘釣温泉などの温泉地がある。黒部峡谷鉄道終点の欅平付近にある猿飛峡,奥鐘山は,黒部峡谷とともに国の特別名勝・特別天然記念物に指定。標高 3000m級の高山にある白馬連山高山植物帯は国指定特別天然記念物。南東部の後立山連峰に属する山岳地帯は中部山岳国立公園朝日県立自然公園に,西部の僧ヶ岳周辺は僧ヶ岳県立自然公園に含まれる。明日(あけび)に伝わる稚児舞は国の重要無形民俗文化財。JR北陸本線,富山地方鉄道本線,黒部峡谷鉄道,国道8号線が通り,北陸自動車道の黒部インターチェンジがある。面積 426.31km2(境界未定)。人口 3万9638(2020)。

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