鼻濁音(読み)びだくおん

精選版 日本国語大辞典 「鼻濁音」の意味・読み・例文・類語

び‐だくおん【鼻濁音】

〘名〙 鼻音化した濁音頭子音が、鼻腔共鳴を伴う有声音(主としてŋ)である音節東京語では、文節の始め以外に現われるガ行音が一般にそうなる。「おんがく(音楽)」の「が」、「しらぎく(白菊)」の「ぎ」、「どうぐ(道具)」の「ぐ」など。が行鼻音。〔発音教授法(1901)〕

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デジタル大辞泉 「鼻濁音」の意味・読み・例文・類語

び‐だくおん【鼻濁音】

鼻音化した濁音。一般にガ行鼻濁音(ガ行鼻音)をいう。「かがみ(鏡)」「しらぎく(白菊)」「どうぐ(道具)」などの「が」「ぎ」「ぐ」の頭子音の類。音声記号は[ŋ]。→ガ行鼻音
[類語]清音濁音半濁音清濁撥音促音長音

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改訂新版 世界大百科事典 「鼻濁音」の意味・わかりやすい解説

鼻濁音 (びだくおん)

〈ガ行鼻音〉ともいう。音声学的にいえば[ŋ]の音のこと。日本語においてこの音はかなり広く分布しており,方言のなかには[g]の音をもたないで,ふつうは[g]の音である位置にもすべて[ŋ]を用いるものさえある。しかし一般的には[g]の現れうる位置には[ŋ]はたたず,逆に[ŋ]の現れうる位置には[g]はたたないのが原則である(たとえば〈がまがえる〉は[gamaŋaeru]であって,[ŋamaŋaeru]とか[gamagaeru]とか[ŋamagaeru]とかはいわない)。その結果,日本語ではたとえ[g]と[ŋ]との両方の音をもっている方言においても,この二つの区別は,[d]と[n]や[b]と[m]の場合のような区別を言語音として発揮しない。このことは,かな文字のうえに反映し,[da]と[na]などの書き分けのように[ga]と[ŋa]との書き分けを必要としない。伝統的に文字のうえにおいて書き分けてきていないから,このような音の区別が古代以来のものか,後世にいたって発生したものか,くわしくはわからない。現代においては,[ŋ]の音はしだいに整理されていく傾向がある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「鼻濁音」の意味・わかりやすい解説

鼻濁音
びだくおん

日本語において,軟口蓋鼻音[ŋ]をもつ音節の名称であり,ガ行鼻 (濁) 音ともいう。共通語では,ガ行子音に[ɡ]と[ŋ]があり,原則として[ɡ]は語頭に (ガラスなど) ,[ŋ]はそれ以外に (アゴなど) 現れる。後者を前者の「ガ…ゴ」と区別して,特に「カ°…コ°」や「カ …コ 」と書くこともある。音韻論的には/g/と/ŋ/の対立とみる立場と,ともに同一音素/g/と解釈する立場とがある。歴史的には,[ ]から変化してきたとみられる。高知,熊野灘沿岸地方,東北の一部などに現在でも残っているこの[ ]を「鼻濁音」といい,[ŋ]に変化したほうは「鼻音」といって区別することもある。この意味の「鼻濁音」は[ nd ][ mb ]なども含む。ガ行鼻 (濁) 音[ŋ]は,これをもたない方言も多く (中国地方,九州地方,新潟,群馬など) ,東京でも若い世代では消失しつつある。

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知恵蔵mini 「鼻濁音」の解説

鼻濁音

息を鼻腔から抜きながら発声する、日本古来のガ行の子音。「ガ行鼻音」とも呼ばれる。強く明確に発音する通常の濁音とは異なり、優しく柔らかい響きを持つ。一般に、「学生」のように単語の先頭にガ行が来る場合は通常の濁音で、「鏡」のように単語の先頭以外にガ行が来る場合は鼻濁音で発声される。国立国語研究所が2009年に行った調査によると、日常生活で鼻濁音を使う人の数は全国的に激減しており、22世紀には東北地方を除く地域で消滅する可能性もあるとされている。

(2015-3-10)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「鼻濁音」の意味・わかりやすい解説

鼻濁音
びだくおん

ガ行鼻音

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世界大百科事典(旧版)内の鼻濁音の言及

【日本語】より

…なお,〈ガ〉の子音[ɡ]の構えで,軟口蓋の後部を下げ鼻から息を通せば軟口蓋鼻音の[]となる。この音は〈鼻濁音〉と呼ばれ,[a i ɯ e o]の形で語中に用いられる。例えば〈学校〉[ɡakkoː]は〈小学校〉[ʃoːɡakkoː]となる。…

※「鼻濁音」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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