いらっしゃる(読み)イラッシャル

デジタル大辞泉 「いらっしゃる」の意味・読み・例文・類語

いらっしゃ・る

[動ラ五(四)]《動詞「いらせらる」(下二段)が変化して五段(四段)活用化したもの》
行く」「来る」「居る」の尊敬語。おいでになる。「休日にはどこへ―・るのですか」「先生が―・った」「明日は家に―・いますか」
補助動詞
㋐(動詞の連用形接続助詞「て」を添えた形に付いて)「ある」「いる」の尊敬語。「原稿を書いて―・る」
㋑(形容詞の連用形に接続助詞「て」を添えた形、また形容動詞の連用形に付いて)補助動詞ある」「いる」の尊敬語。「いつもお若くて―・る」「ご健康で―・る」
[補説]連用形が丁寧の助動詞「ます」に続くときには、「いらっしゃいます」の形をとる。また、語源は「入らせらる」であるから、「居らっしゃる」と書くのは誤り。
[類語]居る居合わせる控える存在・おられる・おいでになるおわすおわしますましますある来る参る行く

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「いらっしゃる」の意味・読み・例文・類語

いらっしゃ・る

〘自ラ五(四)〙 (「いらせらる」が変化して、四段化したもの)
[一] 「入る」の尊敬語から転じた、「行く」「来る」「居る」の意の尊敬語。おいでになる。
① 「行く」の尊敬語。
洒落本・廓通遊子(1798)発端「すぐに御二階へいらっしゃりまし」
② 「来る」の尊敬語。
※洒落本・廓通遊子(1798)発端「どなたもよふいらっしゃりました。きつひ御見かぎりでござります」
③ 「居る」の尊敬語。
※洒落本・南門鼠(1800)「今日はお宿にいらっしゃりますか」
※桑の実(1913)〈鈴木三重吉〉五「お母さまのいらっしゃらない小さい坊ちゃんは」
[二] 補助動詞として用いられる。動作、作用、状態の継続・進行の意で、その動作の主に当たる人に対する尊敬を表わす。江戸期では主として女性用語。
(イ) 動詞の連用形に、助詞「て(で)」を添えた形に付く。「ている」の尊敬語。
※洒落本・角雞卵(1784か)後夜の手管「『粂といふが、こんやきてるだろう』『ハイきていらっしゃいます』」
(ロ) 形容詞の連用形、またはそれに助詞「て」を添えた形に付く。
人情本・花筐(1841)五「マア御機嫌よくって入らっしゃるのでございませうネ」
(ハ) 動作性、状態性などの名詞、または形容動詞語幹(いずれも主として敬意接頭語の付いたもの)に、「で」または「に」を添えた形に付く。「である」の尊敬語。
※人情本・英対暖語(1838)二「アレもう貴君(あなた)は平気でいらっしゃるヨ。お憎らしい」
※火の柱(1904)〈木下尚江〉一七「阿父(おとっさん)屈指紳商で在(イラ)っしゃるのですから」
[語誌](1)上方からでなく、江戸で生じたとされるが、江戸期では江戸でも例は少なく「おいでなさる」「…なさる」の方が有力である。ただ「滑稽本・浮世風呂‐二」に言語使用者の品格のよさを印象づける例があり、敬意の高いことばであったことがうかがえる。
(2)明治期には二〇年代以降小説に多用されるようになり、明治末期から大正期にかけて、数量的にも用法的にも、ほぼ現在と同じような情況が出来上がっていたとみられる。
(3)「た」「て」に続くとき、「いらっしっ」「いらしっ」「いらっし」「いらし」などの形をとる場合がある。「今日はどっちへいらっしったへ」〔洒落本‐猫謝羅子〕、「何処へいらしたか存んじません」〔花間鶯〈末広鉄腸〉中〕など。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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