意識調査(読み)いしきちょうさ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「意識調査」の意味・わかりやすい解説

意識調査
いしきちょうさ

広義社会調査なかで、諸個人の意識現象に関する社会調査をとくに意識調査とよぶ。諸個人の意識は、家族、階級階層民族国家人種身分道徳宗教政治などの意識領域に加え、職場、地域、余暇など生活のあらゆる領域で問題にされ、その意味では意識調査は現代社会を究明するうえで必要不可欠のものである。具体的には世論調査、選挙調査、読書調査、テレビ・ラジオの番組視聴調査、市場調査、従業員調査などがある。調査の内容は、直接的には知的判断ないし意見を調べるということになるが、そのような意識には、対象者の生活史と現在の社会的立場によって規定されている動機情緒が絡み合っているので、単に表面的な意識を求めるだけでは十分ではない。したがって調査方法も、知的判断ないし意見を調査するのに用いられる質問紙法、面接法のほか、単語連想法や文章完成法などが使われる場合もある。なお、質問紙法は意識を量的に把握するには有効であるが、質的な分析には不適当だという欠点があり、面接法に期待されるところが大きい。その場合も、あらかじめ計画された問いを決められたとおりに質問していく指示的面接directive interviewではなく、対象者の思考感情外部から枠を与えないで、潜在的な意識ないし態度を自由に表現させる非指示的面接non-directive interviewのほうが有効であることが主張されている。対象者の意識を究明するには動機や情緒のほか、フラストレーションなどに関しても正確な分析がなされることが必要とされ、また最終的には、そうした諸要素を規定している個人の生活史や現在の社会的立場のすべてを知らなければ意識はつかみきれないということになる。したがって、意識調査は実質的には態度調査、広い意味では社会調査そのものとほぼ同義になってしまうのである。

[鈴木春男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「意識調査」の意味・わかりやすい解説

意識調査
いしきちょうさ

人々の意識・心理状態を探るために行う調査。住民意識や国民意識調査などのように一般の人々の意識を社会調査の方法で探る場合が多いが,国会議員や企業経営者などの意識調査や労働組合員や大学生へのアンケート調査などのように,特定の対象に絞ったものもある。特定の集団を対象にするものでは集団の構成員全員を被調査者とする全数調査が行われる場合もあるが,一般には調査対象となる人々の集団全体 (母集団) の中から無作為抽出によって回答者 (標本) を選び出す (抽出する) 標本調査が行われることが多い。方法は面接調査が最も信頼性が高いが,費用が少くてすむ郵送法も行われ,また電話調査でも精度と信頼性の高い方法が 1970年代にアメリカで開発されて以来,次第に普及している。調査する問題領域は多岐にわたり,選挙における投票行動や政党支持,内閣支持などの政治意識調査,ライフ・スタイルや生活感覚や文化的価値観に関する調査,商品イメージなどに関する消費者行動調査なども考えられる。調査の規模は特定の市町村などの地域住民の意識調査から,全国規模の世論調査,さらには数ヵ国同時に調査を行う国際比較調査までさまざまなものがある。

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