改訂新版 世界大百科事典 「6価クロム」の意味・わかりやすい解説
6価クロム (ろっかクロム)
クロム化合物中で,クロムが6価として働いているとき,これを6価クロムと呼ぶ。6価クロムは三酸化クロム,クロム酸塩,重クロム酸塩などとして存在し,強い酸性を有し,他の3価のクロムなどと比較してもっとも有害性が強い。クロムの精錬,合金製造,めっき,皮革なめし,クロム化合物製造工場などが環境汚染源であり,工場作業者などでは鼻中隔穿孔,喘息,肺癌など職業暴露によるクロム中毒が発生している。また1975年に明るみに出た日本化学工業の東京江東区におけるクロム鉱滓投棄事件は,産業廃棄物による新しい公害問題として大きな社会的反響を呼び,〈廃棄物の処理及び清掃に関する法律〉改正のきっかけとなった。水質汚濁防止法により環境基準は0.05mg/l以下と定められている。
執筆者:中島 泰知
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報