ABS樹脂(読み)エービーエスじゅし(英語表記)ABS copolymer

精選版 日本国語大辞典 「ABS樹脂」の意味・読み・例文・類語

エービーエス‐じゅし【ABS樹脂】

(ABSはacrylonitrile butadiene styrene の略) スチレン共重合樹脂の一つアクリロニトリルブタジエン、スチレンを共重合させたもの。金属に代わる耐衝撃性をもつ合成樹脂とされる、耐熱性、耐薬品性、耐低温性にも優れ、電気部品や自動車部品として用いられる。

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デジタル大辞泉 「ABS樹脂」の意味・読み・例文・類語

エービーエス‐じゅし【ABS樹脂】

アクリロニトリル(A)・ブタジエン(B)・スチレン(S)の3成分からなる熱可塑性樹脂。耐衝撃性にすぐれ、化学薬品や油にもおかされず、硬い。テレビキャビネットや冷暖房器・自動車部品などに使用。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ABS樹脂」の意味・わかりやすい解説

ABS樹脂
えーびーえすじゅし
ABS copolymer

アクリロニトリル(A)、ブタジエン(B)とスチレン(S)よりなる合成樹脂で、ポリアクリロニトリルの耐熱性、剛直性、耐油性、耐候性と、ポリブタジエンの耐衝撃性、ポリスチレン光沢のよさ、電気特性、加工性とを兼ね備えた優れた性質をもっている。この3成分の単なる混合物ではなく、いろいろな形式で共重合させたものである。重合の形式にはブレンド型とグラフト型とがあり、前者はスチレンとアクリロニトリルの共重合体とアクリロニトリル・ブタジエン共重合体ゴム(NBR)を混合したもので、その共重合体の組成や混合割合によってその物性を変化させている。後者はポリブタジエンの存在下でスチレンとアクリロニトリルとを共重合させたもので、この共重合体の一部がポリブタジエンにグラフト重合(幹となる線状高分子に任意の高分子の枝をつける反応)するために耐衝撃性を示すようになる。用途としては、その強度を買われて、ヘルメット、各種機械、建築材料、バンパーなどの自動車部品、合成木材などに用いられる。

垣内 弘]

『高分子学会編『共重合3 工学解析』(1987・培風館)』『ヘルメット成形技術読本編集委員会編著『ヘルメット成形技術読本』(1989・シグマ出版)』『佐伯康治・尾見信三編著『新ポリマー製造プロセス』(1994・工業調査会)』『伊保内賢編、大井秀三郎ほか著『プラスチック活用ノート』3訂版(1998・工業調査会)』

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改訂新版 世界大百科事典 「ABS樹脂」の意味・わかりやすい解説

ABS樹脂 (エービーエスじゅし)
ABS resin

アクリロニトリル,ブタジエン,スチレンを重合させてつくられる樹脂で,それぞれのモノマーの頭文字をとってABS樹脂と呼ばれる。ポリスチレンの耐衝撃性を改善するために開発された樹脂であり,当初,アクリロニトリルとスチレンの共重合樹脂(AS樹脂)にアクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)をブレンドしてつくられたが,最近では,NBRにアクリロニトリル,スチレンをグラフト重合したABS樹脂とか,そのグラフト樹脂とAS樹脂とのブレンド樹脂も製造されている。ABS樹脂は,樹脂内にゴム成分を含むため耐衝撃性にすぐれ(表参照),また着色が容易でかつ色が鮮やかなこと,剛性が高いこと,成形性がよく,大型成形品がひずみなくできるなどのメリットがあるため,自動車用内装部品や,テレビ,ポータブルラジオ,カセットデッキ,洗濯機,掃除機などの家電製品の外装,ビデオカセットケースなど,美観を要求されるところによく用いられる。また,成形品への塗装,めっき特性もすぐれている。耐候性,耐熱性,難燃性に問題があるが,それぞれ,ゴム成分のエチレン・プロピレンゴムへの変更,α-メチルスチレンまたは無水マレイン酸との共重合,ポリ塩化ビニルとのブレンドまたは難燃剤の添加などにより改良がはかられている。乳化重合あるいは懸濁重合で粉状体を得,これを押出加工により粒状(ペレット)化するが,用途に応じて,3成分の重合比を変えて最も適当な樹脂をつくることができる。ペレットは着色後,押出成形,射出成形によって200~250℃で成形される。冷蔵庫の戸袋部分などの薄肉成形品は,シート状に押出成形したあと,加熱加圧成形,真空成形などにより二次加工してつくられる。
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百科事典マイペディア 「ABS樹脂」の意味・わかりやすい解説

ABS樹脂【エービーエスじゅし】

アクリロニトリル,ブタジエン,スチレンを重合して得られるじょうぶな熱可塑性樹脂。比重1.05〜1.07。ポリスチレンの長所をすべてもつうえに耐熱性,耐衝撃性,寸法安定性が著しくすぐれる。テレビなど家電製品のキャビネット,自動車の計器盤をはじめとする内装部品,事務用機器のハウジング,ヘルメット,旅行かばん等に使用。
→関連項目熱可塑性樹脂ポリアクリロニトリル

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家とインテリアの用語がわかる辞典 「ABS樹脂」の解説

エービーエスじゅし【ABS樹脂】

アクリロニトリル(acrylonitrile)・ブタジエン(butadiene)・スチレン(styrene)を化合して作るプラスチックの一種。硬く丈夫で耐衝撃性・耐薬品性・耐熱性にすぐれ、化学めっきも容易。金属の代替品として、建材や家具材、家電製品部品などに用いる。

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化学辞典 第2版 「ABS樹脂」の解説

ABS樹脂
エービーエスジュシ
acrylonitrile-butadiene-styrene copolymer

[同義異語]アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ABS樹脂」の意味・わかりやすい解説

ABS樹脂
エービーエスじゅし

アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂」のページをご覧ください。

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