EMS(energy management system)(読み)いーえむえす

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

EMS(energy management system)
いーえむえす

情報通信技術(ICT)を駆使して、家庭、オフィス、工場あるいは地域全体の電力使用量をリアルタイムで把握し、電力需給を最適に制御・管理するシステム。EMSは、エネルギー管理システムenergy management systemの略称である。電力使用量を測るスマートメーターのほか、照明・空調などの制御装置、充電装置、通信装置などから構成される。2011年(平成23)3月の東日本大震災後におきた電力供給不足を契機に、省エネルギーや節電の核となり、電力供給量に応じて需要を変化させるデマンドレスポンスや、環境にやさしいエネルギー消費を地域単位で目ざすスマートコミュニティ構想実現のための技術として期待されている。日本では経済産業省などが家庭向け(HEMS(ヘムス):home energy management system)やビル向け(BEMS(ベムス):building energy management system)に補助金を出して、導入を促している。

 HEMSは家庭内の照明、空調、家電機器などの電力使用量をスマートメーターなどで常時把握し、エアコンの省エネモードへの切り替えや照明を暗くするなどの指示を行う。さらに電気自動車の充電状況や太陽光発電による発電状況の情報を収集して電力消費量を効率化し、省エネや居住快適性につなげる。BEMSや工場向けのFEMS(フェムス)(factory energy management system)は配電、空調、照明、OA機器、製造ラインなどの電力消費量を電力・温度センサーなどで把握・制御し、ピーク時の電力削減などに活用する。地域全体のEMSの核となるのが地域エネルギー管理システム(CEMS(セムス):community energy management system)で、火力や再生可能エネルギーの風力発電所、太陽光発電所からの電力供給量と、家庭、オフィス、工場の需要を予測し、時間ごとに変わる最適な電力料金を計算して、家庭やオフィスにインターネットを通じて知らせる機能を担う。民間調査会社の富士経済によると、EMSの市場規模(関連設備・サービスを含む)は2030年に約1兆6500億円に拡大すると予想している。

[矢野 武 2019年5月21日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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