ヘレネ(英語表記)Helenē

精選版 日本国語大辞典 「ヘレネ」の意味・読み・例文・類語

ヘレネ

(Helene)⸨ヘレネー⸩ ギリシア神話中の美女。ゼウスとレダの子。スパルタメネラオスの妃。トロイ王子パリス誘拐(ゆうかい)されたのがもとトロイ戦争が起こった。

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デジタル大辞泉 「ヘレネ」の意味・読み・例文・類語

ヘレネ(Helenē)

ギリシャ神話で、絶世の美女。ゼウスレダとの娘。スパルタ王メネラオスの妻となっていたが、トロイアの王子パリスに誘拐されたことから、トロイア戦争が起こった。ヘレンヘレーネ
(Helene)土星の第12衛星。1980年に発見。名はに由来。土星とディオーネが形成するラグランジュポイントうち、ディオーネの公転方向前側に位置する。後ろ側付近にはポリデューシスがある。非球形で平均直径は約32キロ。ヘレーネ。

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改訂新版 世界大百科事典 「ヘレネ」の意味・わかりやすい解説

ヘレネ
Helenē

ギリシア伝説の絶世の美女。英語ではヘレンHelen。白鳥の姿で近づいたゼウスがスパルタ王妃レダに産ませた卵からかえった。実の母親は復讐の女神ネメシスともいう。ギリシア中から集まった多数の求婚者の中から,ミュケナイ王アガメムノンの弟メネラオスを夫に選んだ彼女は,スパルタ王妃となって1女ヘルミオネHermionēをもうけた。しかし夫の留守中,トロイアの王子パリスに誘惑されて館を出奔したため,トロイア戦争が起き,パリスはこの戦争で弓の名手フィロクテテスに射殺された。パリスの死後,彼女はその弟デイフォボスDēiphobosの妻とされたが,トロイア陥落の際,彼はメネラオスに殺され,ヘレネはメネラオスに伴われて8年かかってスパルタに帰国したという。ただし,エウリピデスの悲劇《ヘレネ》(前412上演)のように,トロイアへ連れ去られたのは実はヘレネの幻影にすぎないとの伝承もあり,また帰国後の彼女についても多くの説がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘレネ」の意味・わかりやすい解説

ヘレネ
へれね
Helene

ギリシア神話でトロヤ戦争の原因となった絶世の美女。鵞鳥(がちょう)に化けたネメシス(天罰の女神)と白鳥に化けたゼウスが交わって生じた卵から生まれたとも、あるいはゼウスが白鳥の姿となってスパルタ王ティンダレオスの妻レダに通じて生ませたとも伝えられる。第二の説によれば、レダは神の血を引くヘレネとポリデウケス人間の血を引くクリタイムネストラとカストルを生んだ。ヘレネは12歳のとき英雄テセウスにさらわれるが、このときは兄弟(カストルとポリデウケス)に救い出される。やがて彼女をめぐってギリシア中から求婚者が押し寄せるが、彼女は結局スパルタ王メネラオスの妻となる。そして娘ヘルミオネを生みながら、今度はトロヤの王子パリスに誘惑されてトロヤへ出奔する。トロヤ遠征は、こうして彼女を取り返すため、全ギリシアの英雄たちによって企てられた。激闘10年ののち、ついにトロヤが陥落すると、メネラオスは戦争の元凶であるヘレネを罰しようと彼女の胸に剣を突きつけるが、その美しさに打たれて剣を取り落とす。そしてヘレネは夫とともにスパルタに帰還し、幸せな余生を送った。また死後は、「白い島」(一種の極楽)でアキレウスと結婚したとも伝えられる。本来、彼女は樹木神、あるいは豊穣(ほうじょう)女神であったのが、のちに英雄伝説中のさらわれる美女に変貌(へんぼう)したものと考えられている。

[中務哲郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヘレネ」の意味・わかりやすい解説

ヘレネ
Helene

ギリシア神話の女性。スパルタ王テュンダレオスの妃レダが,白鳥に変身したゼウスと交わり生んだ卵から,ディオスクロイおよびクリュタイムネストラとともに出生した世界一の美女。テセウスによってさらわれたが,彼がペルセフォネをさらおうとして冥府に行った間にディオスクロイによってスパルタに連れ戻され,ギリシア中の英雄たちの求婚を受けた末にメネラオスと結婚し,娘ヘルミオネを生んだ。夫の留守中に,その宮廷に客として滞在していたトロイの王子パリスに誘惑されてトロイに連れ去られ,これがトロイ戦争の原因となった。パリスがフィロクテテスの弓で射殺され戦死すると,その兄弟デイフォボスの妻になったが,トロイが落城すると,彼女はメネラオスと仲直りしてスパルタに帰り,最後には夫とともにエリュシオンの楽園で不死の生をおくることを許されたという。

ヘレネ
Helenē

ギリシアのエウリピデスの悲劇。前 412年上演。パリスがトロイへ連れていったのはヘレネ自身ではなく,実はその幻影であったというステシコロスの歌に基づく作品。

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百科事典マイペディア 「ヘレネ」の意味・わかりやすい解説

ヘレネ

ギリシア伝説における稀代の美女。ラテン語でヘレナ,英語でヘレン。ゼウスとレダの子。多くの求婚者の中からスパルタ王メネラオスを選んだが,パリスによってトロイアへ連れ去られ,これが原因でトロイア戦争が起こる。10年後トロイアが陥落し,彼女はメネラオスとともに放浪の末故郷に帰ったという。
→関連項目パリスファウスト

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ヘレネ」の解説

ヘレネ
Helene

古代ギリシア人の伝説にいうスパルタ王メネラオスの妃。人間のうちで最も美しい人とされた。トロヤの王子パリスに略奪されてトロヤに住み,トロヤ敗北ののちスパルタに連れ戻された。

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旺文社世界史事典 三訂版 「ヘレネ」の解説

ヘレネ
Helene

ギリシア神話の中の女性
ゼウスと人間の女性レダとの間に生まれ,のちスパルタ王メネラオスの妻となったが,トロヤの王子パリスに誘拐され,トロヤ戦争の原因をつくった。

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世界大百科事典(旧版)内のヘレネの言及

【トロイア戦争】より

…その裁定をゼウスからゆだねられたトロイア王子パリス(別名アレクサンドロス)は,世界の支配権を約束するヘラ,戦いの勝利を提供しようとするアテナを差しおいて,世界一の美女を与えようというアフロディテにリンゴを渡した。ところで当世随一の美女ヘレネは,すでにスパルタ王メネラオスの妃であった。パリスは美神の指示に従い,スパルタに客となり,王の留守に乗じて財宝とともにヘレネをトロイアに連れ去った。…

【メネラオス】より

…ミュケナイ王アガメムノンの弟。多数の求婚者の中から選ばれて絶世の美女ヘレネの夫となり,一女ヘルミオネHermionēをもうけたが,所用で国を留守にしていた間に,トロイアの王子パリスにヘレネを連れ去られたため,トロイア戦争が起きた。この戦争で彼はヘレネの身柄と奪われた財宝をかけてパリスと一騎打ちに及び,勝利の寸前までいったものの,パリスを寵愛する女神アフロディテの妨害にあって,決着をつけることができなかった。…

※「ヘレネ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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