Henoch-Schönlein紫斑病

内科学 第10版 の解説

Henoch-Schönlein紫斑病(血小板/凝固系の疾患)

定義・概念
 Henoch-Schönlein紫斑病は,おもに小児や若年者に認められる全身性アレルギー性血管炎に基づく疾患である.病変は多臓器にわたるが,皮下出血斑,腹部症状,関節症状,腎障害を主症状とする.
原因
 ウイルスや細菌感染が先行することが多く,原因の1つと考えられる.
病理
 IgAを主成分とする免疫複合体が血清中に認められる.皮膚血管や腎糸球体にIgAと補体C3の沈着をみる.腎病変はIgA腎症と類似しており両者の関連性が示唆されている.皮膚生検では血管壁のフィブリノイド壊死,多核白血球浸潤など血管炎の所見がみられる.消化管にも粘膜下浮腫,血管炎の所見がみられる.
臨床症状
 3~10歳の小児に多い.典型的な例では,上気道感染症状の1~3週間後に突然,紫斑が下肢臀部,腕の伸側に出現する.紫斑はしばしば丘疹状で(palpable purpura)数日~数週間持続する.足関節,膝を中心に腫脹を伴う多発関節痛がみられる.消化管症状は腹痛,悪心,嘔吐,血便がみられる.25~50%の患者で糸球体腎炎をきたし,蛋白尿,血尿をみる.
検査成績
 止血機能に異常を認めない.すなわちスクリーニング検査(血小板数,APTT, PT)は正常である.急性期に凝固ⅩⅢ因子の低下を認めることがある.Rumpel-Leede試験の陽性をみる.白血球増加(特に好酸球増加),赤沈亢進がよくみられる.また一過性の血尿,蛋白尿をみる.血清IgAの上昇,IgAリウマトイド因子の存在,血清補体価の低下を認めることがある.
診断
 典型例では診断は臨床症状から比較的容易である.典型的でない場合は皮膚生検を要する.
鑑別診断
 血管炎を伴う膠原病(PNSLEなど),薬剤などによる過敏性血管炎,血小板機能異常など.腹痛は急性腹症として,ほかの疾患との鑑別が重要である.
合併症
 全身の血管炎のため,まれに中枢神経障害,呼吸器,心臓,睾丸に障害をきたす.小腸穿孔,腸重積,ネフローゼ症候群,IgA腎症,ときに腎不全を起こすことがある.
経過・予後
 一般に予後は良好であり,4週程度で自然軽快することが多いが,約半数に皮疹,腹痛の再発をみる.
治療
 対症療法が主体である.関節痛には非ステロイド系抗炎症薬が用いられる.副腎皮質ステロイドは腸管の浮腫を抑え腹部症状を軽減する.重症例では凝固ⅩⅢ因子製剤(フィブロガミン)が有効である.[村田 満]
■文献
Saulsbury FT: Henoch-Schönlein purpura. Curr Opin Rheumatol, 22: 598-602. Review, 2010.
(1)
単純性紫斑病

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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