IGZO(読み)いぐぞー

日本大百科全書(ニッポニカ) 「IGZO」の意味・わかりやすい解説

IGZO
いぐぞー

インジウム(In)、ガリウムGa)、亜鉛(Zn)、酸素(O)から構成される透明な酸化物半導体。日本の科学技術振興機構JST)の創造科学技術推進事業、および戦略的創造研究推進事業発展研究チームのリーダーであった東京工業大学教授細野秀雄(1953― )のグループが、2004年(平成16)に開発に成功した。IGZOを使った薄膜トランジスタTFT:thin film transistor)を液晶ディスプレーに用いた場合、現行で標準になっている水素化アモルファスシリコンよりも、理論上では10倍以上の高画素化、高精細化をすることが可能となり、4Kや8Kといわれる高精細液晶ディスプレーにおける基幹材料になっている。さらに、電力消費を5分の1から10分の1程度まで抑えられるため、搭載した電子デバイスの駆動時間を飛躍的にのばすことができる。

 シャープが、このIGZOを採用した液晶パネルの実用化に世界で初めて成功した。2012年1月にJSTとシャープは、IGZOを用いた薄膜トランジスタに関する特許ライセンス契約を締結して量産化に取り組み、IGZOを採用した液晶パネル搭載のスマートフォンを発売している。また、韓国のサムスンやLGグループ、日本の凸版印刷キヤノンといったメーカーも、IGZOを応用した技術開発を進めている。

 今後は、高精細化や低消費電力化という面ばかりでなく、透明で薄く、折り曲げられる基盤へ応用できる特性なども生かした開発の展開が可能になる。実現すれば、電子ペーパーフレキシブルディスプレーといった次世代ディスプレーだけでなく、LED照明太陽電池などの製品分野でも応用が期待されている。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

知恵蔵mini 「IGZO」の解説

IGZO

半導体の1つで、「酸化物半導体」の略称。通常は絶縁体になりやすい酸化物でありながら半導体の性質をもつ物質。透明伝導膜や超伝導、センサーなどへの用途が研究されているが、なかでも注目されているのが「透明アモルファス酸化物半導体」で、液晶パネルなどのディスプレイに使った場合、高画素・低消費電力などの劇的な性能向上と製造コスト削減といったメリットがある。IGZO液晶は2002年より研究開発に取り組んできたシャープ株式会社が、12年春から、亀山第2工場(三重県)で量産を始めた。IGZOを用いたディスプレイを世界で初めて搭載したスマートフォンの製造にも成功、12年10月11日、製品化することを発表した。

(2012-10-15)

出典 朝日新聞出版知恵蔵miniについて 情報

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