II型アレルギー反応

内科学 第10版 「II型アレルギー反応」の解説

II型アレルギー反応(アレルギー性疾患の総論)

(3)Ⅱ型アレルギー反応
 Ⅱ型アレルギー反応は,細胞傷害型といわれ,IgG,IgMが関与する.対応する抗原は,細胞膜構成成分そのものである場合と,細胞膜に結合した物質(外来性の薬物やウイルスなど)の場合がある.前者については,自己の細胞に対する自己抗体産生による場合と,ほかの個体から同種抗体が侵入するために起こる場合がある.自己抗体産生によるⅡ型アレルギーの例としては,自己免疫性溶血性貧血(抗赤血球自己抗体による),特発性血小板減少性紫斑病(抗血小板抗体による),慢性甲状腺炎(抗甲状腺抗体による),Goodpasture症候群(抗基底膜抗体による)などがあげられる.一方,同種抗体が侵入する例としては,輸血血液型不適合妊娠などがある.細胞傷害の機序としては,抗体が細胞に結合することで,補体系が活性化され,古典的経路によって最終的にC5~C9成分が活性化することにより,細胞膜の傷害を引き起こすことがあげられる.また,補体の活性化に伴ってマクロファージや好中球などのエフェクター細胞を引き寄せ活性化させることも細胞傷害に寄与している.一方,細胞膜に結合した抗体のFc部分に対するFc受容体を有するマクロファージやリンパ球などによる細胞傷害の機序も考えられている.このような細胞傷害はADCC(antibody-dependent cell mediated-cytotoxicity)といわれている.そのほか,細胞膜に存在する受容体に対して抗体が結合することで,細胞機能に影響を及ぼす機序もⅡ型アレルギー反応と考えられている. たとえば重症筋無力症では,アセチルコリン受容体に対する自己抗体が産生されることにより,受容体へのアセチルコリンの結合が阻害されたり,自己抗体が結合した受容体に対するADCCが引き起こされることで,筋の機能不全が生じていると考えられている. 一方で,受容体に結合した抗体が,機能阻害ではなく,機能促進的に作用することもあり,甲状腺機能亢進症(Basedow病)では,甲状腺のTSH受容体に自己抗体が結合することにより,甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることにより発症する.このように,産生された自己抗体が細胞・組織の機能を亢進させる場合もあり,Ⅴ型アレルギーと分類されることもある.
 また,薬剤などの外来性の物質を抗原とするⅡ型アレルギー発症の機序としては,2種類に大別される.1つは,外来性物質であるハプテンにキャリア蛋白が結合した場合に,B細胞がT細胞からの刺激を受け,外来物質に対する抗体を産生するもので,赤血球に結合した外来物質に対して産生された抗体が結合することで赤血球の溶血を引き起こすものである.代表としてペニシリン使用時の薬剤性溶血があげられる.2つめは,薬剤が赤血球に結合することで,B細胞から赤血球抗原に対する自己抗体が産生される機序で,α-メチルドパによる薬剤性溶血が代表的である.[茆原順一]
■文献
茆原順一:好酸球が語るアレルギーの臨床と分子病態.アレルギー,59: 943-949, 2010.
伊藤 亘,茆原順一:アレルギー疾患の診断の進め方.医学と薬学,55: 15-21, 2006.
Palomares O, Yaman G, et al: Role of Treg in immune regulation of allergic diseases. Eur J Immunol, 40: 1232-1240, 2010.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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