Mac OS(読み)まっくおーえす

日本大百科全書(ニッポニカ) 「Mac OS」の意味・わかりやすい解説

Mac OS
まっくおーえす

アメリカ・アップル社のパソコンMacintoshマッキントッシュ)用のOS(オペレーティングシステムOperating System)。Mac OSはバージョン9までを数えた後、2001年にはローマ数字の10のⅩからテンと読むMac OS X(マックオーエステン)が発売されている。Macintoshはリンゴの品種の名前McIntosh(和名:旭(あさひ))にちなむが、同名のオーディオ製品の商標と区別するためaを加えてMacintosh、略してMacと命名した。OSとはコンピュータ・システムを効率よく使うためのソフトウェアで基本ソフトともよび、おもに接続されたハードウェアの動作やアプリケーションの実行を管理するカーネルkernel)と人間が操作しやすくする手段や手順を提供するシェル(shell)とよぶソフトウェアで構成されている。

 Mac OSは、1984年のMacintosh発売当初から優れた図形によった使用者インターフェース(GUI:Graphical User Interface)を用い、パソコン画面に役割を表示し、ごみ箱やフォルダ(ファイル管理用の表)といった概念を取り入れている。これにより、まったくの初心者にもわかりやすく扱いやすくなり、コンピュータが他の家電製品と同様に扱えるようになった。また、強力なグラフィックス機能をもち、出版やデザインおよびイラスト関係のソフトが充実されていることからDTP(Desk Top Publishing)分野では圧倒的なシェアをもち続け、さらに、マルチメディアの言葉が普及する以前からマルチメディア的機能をも備えていた。

 もともとアップル社では、OSはパソコン本体とは不可分なものと考え、便宜的にシステム(日本語版:漢字Talk(トーク))とよんでいた。Macintosh発売の1984年から1991年までのバージョンアップを重ねたSystem 1,2,3,4,6は、まだ白黒画面で機能は貧弱であるものの、GUI OSとしては動作は軽快なものであった。続く1991~1997年のSystem 7系列では画面はカラーになり、メモリー容量はハード・ディスクを用いてより大きくして、仮想メモリーや複数アプリケーションの実行可能な疑似マルチタスクマルチプロセス)などの新技術を次々と投入して機能を向上させた。次いで、1997年のsystem 7.5.1に続くOSから、アップル社は市場拡大のためにライセンスを提供している他社製のパソコン(互換機)でも、Macintoshのソフトを使用できるOSを搭載していることが一目でわかるようにMac OS 7.6と呼び名のみを変え、番号は継続した。Macintosh互換機は事実上なくなってはいるものの、Mac OSの名は継承されている。

 1997~2001年にバージョンアップしたMac OS 8,9では、三次元的な表示を使用し、ファイルシステムを視覚的に訴えながら並行したプロセス処理を可能にし、フォルダ・ナビゲーション、キー・チェーン(パスワードをまとめて管理する)、疑似マルチユーザーを逐次加えて相次いだ機能向上が図られた。しかし、続くMac OS Xとは設計思想が一味違い、動作が軽快であることから愛用者も多い。

 2001年発売のMac OS Xは、従来のMac OS方式に、NeXT(ネクスト)社(1996年にアップルが買収)のもつOSと、アプリケーションとOSの仲立ちをするOPENSTEP(オープンステップ)を導入したもので、従来のMac OS 9 までとは方式が一新され、アプリケーションを2~3倍の高速で起動する。また、内包している言語が15か国語の多言語仕様OSであるので付属アプリケーションを加えると70種もの言語が使用できる。

 Mac OS Xの基本はフォントや各種ドライバー、入出力・ディスクの管理を行うプログラムとルーチン類、「Finder(ファインダ)」とよばれるファイル管理や、「Aqua(アクア)」とよぶ水をイメージした優しいデザインのカラム表示のウィンドウのほか、よく使うアプリケーションにはエイリアス(分身)で素早く起動できるプログラムで構成されている。時分割OSのUNIX(ユニックス)を採用し、完全なマルチタスクやメモリー保護などを実現したうえで、従来のMac OSのユーザー・インターフェースを継承・改善している。ファインダのウィンドウのサイズは応答性よく変更でき、三次元グラフィックを利用して20%の高速化を実現した。さらに、多くの新機能がv10.1~v10.5とバージョンアップされるとともに加えられている。従来のMac OS用アプリケーションも使えるが、機能をフルに引き出すにはMac OS Xに最適化する必要はある。

 Mac OS Xのコードネームはすべてネコ科の猛獣で、2001年リリースされたバージョン10.0のMac OS X v10.0はチーターで、同年のv10.1のピューマにはCDとDVDの記録再生機能など、2002年発売のv10.2からアメリカでは製品名に併記されるようになったコードネームのジャガーには手書き文字認識やネットワーク機能などを追加。2003年発売のv10.3から日本でも併記されるようになったコードネームのパンサーでは暗号化機能など、2005年発売のv10.4タイガーはセキュリティ機能の充実など200以上の新機能を搭載してシステム内部を大きく刷新、2007年発売のv10.5レパードではアニメーションも容易に実現できる。さらに、Windows(ウィンドウズ)マシンとMacintoshを併用するユーザーのためにIntel(インテル) Mac(CPUのみIntel社製)上ではWindows XP、Windows Vista(ビスタ)で起動できるように配慮されている。

[岩田倫典]

『新居雅行著『極めるMac OS X』(2002・技術評論社)』『David Pogue著、桜井知久訳『Mac OS X』第2版(2003・オライリー・ジャパン、オーム社発売)』『野戸美江著『OS図鑑――「Windows」「Mac OS」「UNIX」…OSの仕組みと歴史が分かる!』(2003・工学社)』『藤広哲也著『そこからパソコンがはじまった!――栄光と激動のコンピュータ1980年代史』(2004・すばる舎)』

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IT用語がわかる辞典 「Mac OS」の解説

マックオーエス【Mac OS】

アップルが同社のパソコン、Macintosh向けに開発したオペレーティングシステムのシリーズ名。1984年に初代Macintoshが発売されてしばらくの間は単に「System(システム)」と呼ばれていたが、互換機が普及した1997年より「Mac OS」が正式名称になった。優れたGUI環境とWYSIWYG(ウィジウィグ)表示を早くから実現し、グラフィックデザインやDTPの分野で好んで用いられた。2001年にUNIX系のオペレーティングシステムを基盤とした「Mac OS X」が登場した。

出典 講談社IT用語がわかる辞典について 情報

ASCII.jpデジタル用語辞典 「Mac OS」の解説

Mac OS

1984年に、アップル社が自社のパソコンのために開発したOS。一時期、公認の互換機上でも動作したが、現在は同社が販売するパソコン(Macシリーズ)でのみ動作する。テキストベースのOSが主流であった当時、パソコンで動作するGUIを初めて搭載したOSとして登場した。当初、System x.x(国内では「漢字Talk」)と呼ばれていたが、互換機にライセンスを供給するため、1997年にリリースされたVer.7.6から、全世界で「Mac OS」という名称に変更された。2000年には、合併したネクスト社のOS「OPENSTEP」をベースに、UNIX系のOSである「Mac OS X(マック・オーエス・テン)」に生まれ変わり、現在に続く。Mac OS Xには、個人向けとサーバー用途向けのバージョンがある。

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知恵蔵 「Mac OS」の解説

Mac OS

米アップルコンピュータが開発した、自社のパソコンであるマッキントッシュ専用のOSのこと。もともとは完全に自社開発していたが、バージョン10にあたる現行のMac OS XシリーズはUNIXの一種であるMach(マーク)をベースに再開発されたものである。2007年現在の最新バージョンは10.5。名称はMac OS X Leopard(レパード)である。

(斎藤幾郎 ライター / 2008年)

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パソコンで困ったときに開く本 「Mac OS」の解説

Mac OS

⇨マックOS

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