引物(読み)ひきもの

精選版 日本国語大辞典 「引物」の意味・読み・例文・類語

ひき‐もの【引物】

〘名〙
① 布を引いて内外の仕切りとする物。帳(とばり)几帳(きちょう)壁代(かべしろ)垂幕などをいう。
※今鏡(1170)六「さて嵯峨にこもりゐ給ひて、ひき物のうちにたれこめて」
※増鏡(1368‐76頃)六「さまざまの風流の破子、ひき物など」
③ ②のうち、特に、供応の膳に添えて出す肴(さかな)菓子など。
※三議一統大双紙(15C前)宮仕門「引物も三様有。折をは右に置て可盛。公卿に餝たる物をは左に置て可盛」
④ 所定の年貢額から差し引かれるもの。中世の荘園では、日照や洪水などによる損害、幕府や守護などから臨時に賦課される反米(たんまい)・反銭(たんせん)などは領主百姓が共同で負担したが、領主負担分は年貢から差し引かれた。
※三箇院家抄(1469頃)一「免引物在之」
※類聚雑要抄(室町)二「東西遣戸 障子、有各引物
⑥ 家の梁(はり)。うつばり。〔羅葡日辞書(1595)〕

ひけ‐もの【引物】

〘名〙
欠点があって値引きしてある商品。きずもの。ろうずもの。
談義本・風流志道軒伝(1763)五「麒麟鳳凰に星入のひけ物でも出そふなもの」
② よく売れて買い手が探し求める商品。〔日葡辞書(1603‐04)〕

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デジタル大辞泉 「引物」の意味・読み・例文・類語

ひき‐もの【引(き)物】

引き出物。また特に、ぜんに添えて出す菓子・料理などの土産物
布を引いて仕切りとするもの。壁代かべしろとばりなど。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の引物の言及

【引出物】より

…しかし中世後期以降,それは通常の贈物ととくに変わらぬものとなっていったと思われ,戦国期の武将たちの間で行われた贈答品は,馬や鷹,太刀や弓矢等の武具一式など,鎌倉時代の引出物と同じものを基本とし,金,銭や扇,また鶴,白鳥,雁,鮭,鱈,鯉の魚鳥や,菜,昆布などの物産が,それに加えて用いられている。【網野 善彦】
[民俗]
 一般には引物(ひきもの)ともいい,特に土産(みやげ)にもたせるため膳に添えて出す肴や菓子の類を呼ぶ。今日ではことに婚礼披露の際の贈物に対していう場合が多く,慶事の品のようにみられがちであるが,法事などに出される土産の品も引出物の一つである。…

※「引物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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