RAS法(読み)らすほう(英語表記)RAS method

日本大百科全書(ニッポニカ) 「RAS法」の意味・わかりやすい解説

RAS法
らすほう
RAS method

産業連関分析において、あるすでに得られている投入係数表に基づいて、他の時点における投入係数表を推定するための手法のこと。産業連関分析における投入係数表は、産業連関表がつくられた時点における産業間の投入・産出の技術的構造を示すものであるが、その構造は、経済的環境の変化や技術進歩などに伴って時間とともに変動する。しかし、産業連関表の作成には膨大な作業が必要であり、現在の状況を短時間ののちに産業連関表として把握することはむずかしい(わが国でも正式な産業連関表は5年ごとに作成されるのみである)。したがって、利用可能な最新の産業連関表でも、すでに数年過去の投入・産出の構造となっており、現在あるいは将来の経済分析や経済予測をするためには、その時点における構造を推定することが必要となる。その際、その時点での投入係数そのものはわからないにしても、各産業の総産出額、中間需要合計額、中間投入合計額については、すでに実績値として得られているか、かなりの正確さをもって予測可能であることが多い。したがって、既存の投入係数表の各数値を、行と列について、それぞれ一定割合ずつ変動させることによって分析時点の総産出額等の数値に適合させることを考える。すなわち、基準となる産業連関表の投入係数行列(そのi行j列の要素はa0ij)の第i行にriを掛け、第j列にsjを掛けることによって、各投入係数を変動させ、新しい投入係数a0ijを推定する。そのことを数式として表現すると、
  aij=ria0ijsj(i,j=1,2,……,n)
と書かれるところから、この推定手法はRAS法とよばれている。

高島 忠]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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