SI接頭語(読み)えすあいせっとうご(英語表記)SI prefixes

日本大百科全書(ニッポニカ) 「SI接頭語」の意味・わかりやすい解説

SI接頭語
えすあいせっとうご
SI prefixes

国際単位系SI)において、十進の倍量分量を表すためにSI単位の前につけられる接頭語。SI接頭辞ともいう。量の大きさを簡潔に表現するために、国際単位系では10の整数乗倍を意味する接頭語20種類を、以下に示すような名称記号で定義している(10-24から1024まで)。

〔1〕係数:101、接頭語名:デカ、記号:da
〔2〕係数:102、接頭語名:ヘクト、記号:h
〔3〕係数:103、接頭語名:キロ、記号:k
〔4〕係数:106、接頭語名:メガ、記号:M
〔5〕係数:109、接頭語名:ギガ、記号:G
〔6〕係数:1012、接頭語名:テラ、記号:T
〔7〕係数:1015、接頭語名:ペタ、記号:P
〔8〕係数:1018、接頭語名:エクサ、記号:E
〔9〕係数:1021、接頭語名:ゼタ、記号:Z
〔10〕係数:1024、接頭語名:ヨタ、記号:Y
〔11〕係数:10-1、接頭語名:デシ、記号:d
〔12〕係数:10-2、接頭語名:センチ、記号:c
〔13〕係数:10-3、接頭語名:ミリ、記号:m
〔14〕係数:10-6、接頭語名:マイクロ、記号:μ
〔15〕係数:10-9、接頭語名:ナノ、記号:n
〔16〕係数:10-12、接頭語名:ピコ、記号:p
〔17〕係数:10-15、接頭語名:フェムト、記号:f
〔18〕係数:10-18、接頭語名:アト、記号:a
〔19〕係数:10-21、接頭語名:ゼプト、記号:z
〔20〕係数:10-24、接頭語名:ヨクト、記号:y
[今井秀孝]

沿革

1012(テラ)から10-12(ピコ)までの12種類の接頭語の名称と記号は、1960年のSI制定の際に導入され、その後10-15(フェムト)と10-18(アト)が1964年、1015(ペタ)と1018(エクサ)が1975年、1021(ゼタ)、1024(ヨタ)、10-21(ゼプト)、および10-24(ヨクト)が1991年に追加されて現在の体系となっている。

[今井秀孝]

使い方のルール

SI接頭語の使い方のルールは次のように決められている。

(1)接頭語の記号は立体(ローマン)とする。

(2)単位記号とはスペースをつくらずに一体として表現する。

(3)接頭語と単位の名称は続けて表記する。例:millimeter(mm)、micropascal(μPa)、meganewton(MN
(4)接頭語は、単独あるいは複数の接頭語の結合で用いてはならない。

(5)接頭語は、非SIに対しても使用することができる。ただし、時間の単位(minute:min、hour:h、day:d)とともに用いることはできない。例:μL(マイクロリットル
[今井秀孝]

用例と換算

(1)体積の用例 単位は立方センチメートル(cm3)、または立方メートル(m3)である。cm3をm3に換算する場合は、まずcmに10-2を掛ける(cm=10-2m)。立方は3乗の意味であるので、10-2を3乗することになり[(10-2)3]、合計で(10-6)を掛けることとなる。たとえば1.2cm3の場合の換算式は以下のとおりである。1.2cm3=1.2(cm)3=1.2(10-2m)3=1.2×10-6m3

(2)回転速度の用例 単位は毎秒(s-1)、毎分(min-1)である。毎マイクロ秒(μs-1)を毎秒(s-1)に換算するときは、まずマイクロ秒(μs)を秒(s)に換算する。マイクロは100万分の1なので秒(s)に10-6を掛ける(μs=10-6s)。たとえば回転速度5000回転/マイクロ秒(μs-1)を毎秒(s-1)に換算すると、5000回転/100万分の1秒(10-6s-1)となる。1秒当りの回転数を求めるには回転数に100万(106)を掛ければよいので、5000×100万=50億回転となる(5×109s-1)。換算をまとめると以下のようになる。5000μs-1=5000(μs)-1=5000(10-6s)-1=5×109s-1

(3)電界強度の用例 単位はボルト毎メートル(V/m)である。ボルト毎センチメートル(V/cm)をV/mに換算する場合は、(1)と同様にまずcmに10-2を掛ける(cm=10-2m)。たとえば、1V/cmの場合、V/mに換算すると、1V/10-2mとなる。1メートル当りのボルト数を求めるには100(102)を掛ければよいので、100V/mとなる。換算をまとめると以下のようになる。1V/cm=(1V)/(10-2m)=102V/m=100V/m。

[今井秀孝]

累乗

前述のように、SIの接頭語は10の累乗(べき乗)に対してのみ定義されており(十進法の尊重)、情報科学や電気工学の分野で採用する2の累乗に対しては使用しないとしている。たとえば、1キロビットは、1000ビットに相当し、1024(210)ビットではない。そこで、国際電気標準会議(IEC:International Electrotechnical Commission)では、2の10乗、2の20乗、2の30乗、2の60乗などについては、それぞれ1キビ(kibi:記号Ki)、1メビ(mebi:記号Mi)、1ギビ(gibi:記号Gi)、1エクサビ(exbi:記号Ei)などのように定義して区別している。たとえば、1キビバイト(1 KiB)=210B=1024Bである。[参考規格:IEC 60027-2:2005、第3版]
[今井秀孝]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「SI接頭語」の意味・わかりやすい解説

SI接頭語
エスアイせっとうご
SI-prefix

SI単位の 10の整数乗倍の単位を構成するための接頭語。マイクロ,センチ,デカ,ギガなど 16個がある。これらを用いて適当な補助単位を構成すれば物理量の巨大な数値または微小な数値の桁数を適当な大きさに縮小できる。たとえば1万 2000mは 12km,0.0034mは 3.4mmと表わすことができる。接頭語を含む単位に指数がついている場合は接頭語も含めて累乗される。たとえば 1l=1dm3=10-3m3 であって,1 dm3 は 10-1m3 ではない。また2個以上の接頭語を並べた合成接頭語は用いない。たとえば 10-9s=1ns であって 1mμs とは書かない。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

化学辞典 第2版 「SI接頭語」の解説

SI接頭語
エスアイセットウゴ
SI prefixes

国際単位系(SI単位)では,諸単位の接頭語を次のように定めている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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