ミルクホール

精選版 日本国語大辞典 「ミルクホール」の意味・読み・例文・類語

ミルク‐ホール

〘名〙 (洋語milk hall) 牛乳パンケーキ類を出す、手軽な飲食店。はやり始めた明治四〇年(一九〇七前後は、店に新聞雑誌を備え付けて自由に閲覧させたりした。
野分(1907)〈夏目漱石〉五「ミルクホールに這入る。〈略〉焼麺麭を噛って牛乳を飲む」

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デジタル大辞泉 「ミルクホール」の意味・読み・例文・類語

ミルク‐ホール

《〈和〉milk+hall》牛乳やコーヒー・パン・ケーキなどを供した軽飲食店。明治末期から昭和初期にかけて流行した。

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改訂新版 世界大百科事典 「ミルクホール」の意味・わかりやすい解説

ミルクホール

牛乳を飲ませ,パンなどを供する簡易な飲食店。明治後期にビヤホールができてから,〈ホール〉という呼称が流行したが,〈ミルクホール〉も日本人がつくった言葉で,東京の学生街から始まったらしい。明治初年に始まる新聞縦覧所の性格をうけつぎ,牛乳を飲む者には新聞・雑誌や官報を無料で閲覧させた。やがてケーキやコーヒー,洋食なども提供するようになり,上下がカステラで中にようかんが入った〈シベリヤ〉という菓子はミルクホール独特のものであった。店は全体に飾り気が少なくて,入口には白地に何々軒などと染めだしたのれんが掛けられ,入口の戸はガラス戸であった。いすテーブルは簡単なもので,ケーキの入ったケースなどがテーブル上に置かれていた。ウェートレスは町娘風で,喫茶店よりも安価のため客の中心は若い工員,店員,学生などであった。多くの店は昭和の戦時統制で廃業した。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミルクホール」の意味・わかりやすい解説

ミルクホール
みるくほーる

牛乳、パン、ミカン清涼飲料などを供する簡易飲食店をいう和製英語。1907年(明治40)ごろから昭和初期にかけて東京をはじめ地方都市に流行し、新聞、雑誌、官報なども置いて自由に閲覧させ、庶民や学生に憩いと談合の場所を提供していたが、1921年(大正10)ごろからしだいに喫茶店に変わり、現在では駅や遊園地ミルクスタンドにわずかにその名残(なごり)がみられる。

[佐藤農人]

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