エナガ(読み)えなが(英語表記)long-tailed tit

改訂新版 世界大百科事典 「エナガ」の意味・わかりやすい解説

エナガ (柄長)
long-tailed tit
Aegithalos caudatus

スズメエナガ科の鳥,またはエナガ科の鳥の総称全長約14cm。スズメより小さく,尾が長い。雌雄同色。体は白いが,腰や下腹部はブドウ色を帯びている。太い眉線と上背,翼,尾は黒い。ユーラシア大陸の中緯度地方に多く分布し,日本では九州以北に留鳥としてすみ,北海道のものは頭部が真っ白で別亜種とされる。低地山地落葉広葉樹林,あるいはマツ林と常緑樹林の混合林を好み,二次林に多い。たえず発声し,気ぜわしく動いていて,動作が細かい。樹木の内部ややぶなどの小枝を渡り歩いて小さい虫を探して食べるが,とくにアブラムシを好む。やわらかい果皮をもった果実や樹液にもやってくる。器用に枝をつかみ,しばしば完全に逆さにつり下がる。片脚でつり下がり,片脚で餌を握りくちばしのほうへもっていってつついて食べるということもする。一夫一妻で繁殖し,クモの糸などを使ってコケ類をとじこみ,袋状の巣を木の枝につくる。出入口は側面上方にある。巣の表面は地衣類などをはりつけてカムフラージュしてある。1腹の卵は6~12個。巣立った幼鳥は群れで行動し,夏にはいくつもの幼鳥群や成鳥が集まって大きな群れとなるが,秋に分裂し,10羽前後の群れとなり,群れのなわばりをつくる。群れは低木の小枝に一列に並んで眠る。冬は群れのなわばり中で過ごし,隣の群れと出会うとたたかいになる。

 エナガ科Aegithalidaeは世界で7~8種知られている。どれも群れ生活をし,よく似た巣をつくる。ユーラシア大陸と北アメリカに分布し,いずれも樹林性である。4種はヒマラヤから中国中南部にかけての地域にすむ。ズアカエナガA.concinnusは中国南部,東南アジアからインド北部の山地にいるもので,頭頂部は赤褐色である。北アメリカのヤブガラPsaltriparus minimusはじみな灰褐色の鳥で,エナガと同じ材料で巣を木の枝へつるすようにつくる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エナガ」の意味・わかりやすい解説

エナガ
Aegithalos caudatus; long-tailed tit

スズメ目エナガ科。全長 13~15cm。尾が長く,全長のおよそ半分を占める。約 20亜種に分類され,頭部全体が白い北方系と,黒色の太い眉斑のある南方系とに大別される。そのほかの羽色も亜種によってやや変化があるが,配色や模様は似ている。喉から腹が白く,肩と下尾筒がややピンク色で,尾羽は外側の羽毛が白く中央部が黒い。渡りをせず,分布はヨーロッパからユーラシア大陸中央部を横切り,東アジアカムチャツカ半島に及ぶ。生息地は亜種によりやや異なるが,平地から低山帯の落葉広葉樹林から常緑広葉樹林,針広混交林である。早春から繁殖を始め,非繁殖期は 20羽前後の群れになる。日本では 4亜種が生息し,北海道にすむシマエナガ A. c. caudatus は頭部全体が白い。ほかの 3亜種は南方系で本州以南に生息し,形態上の差は小さい。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「エナガ」の意味・わかりやすい解説

エナガ
えなが / 柄長
long-tailed tit

広義には鳥綱スズメ目エナガ科に属する鳥の総称で、狭義にはそのうちの1種をさす。種としてのエナガAegithalos caudatusは全長14センチメートルで尾が長い。体は白く、後部にブドウ色があり、目からうなじ、上背、肩、翼、尾は黒色。ユーラシアの中緯度地方に広く分布し、日本では九州以北のいずれの地方にもいる留鳥である。北海道のものは頭に黒い部分がなくて白い。低山帯や平地の樹林に多く、とくに落葉広葉樹林や針葉樹との混合林を好む。樹林の林縁やクリやナラにマツを交えた二次林でよくみかける。樹木の小枝に逆さにぶら下がって餌(えさ)をとり、昆虫、果実、樹液などを食べる。冬は10羽前後の群れで生活し、群れごとの縄張りがある。繁殖期にはつがいに分かれて、コケをクモの卵嚢(らんのう)、ガの繭などの虫の糸で織り込んで袋状の巣をつくる。雛(ひな)の給餌(きゅうじ)は両親ですることがある。

 エナガ科Aegithalidaeは7種知られており、ユーラシア大陸と北アメリカに分布し、ヒマラヤとその周辺には4種が集中している。北アメリカのものはヤブガラPsaltriparus minimus1種で、色は鈍い草色である。

[中村登流]


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百科事典マイペディア 「エナガ」の意味・わかりやすい解説

エナガ

エナガ科の鳥。翼長6cm,尾が長い。頭部は白く,黒く太い眉斑があり,背面は黒色,淡赤色,白色が混じる。ユーラシア大陸中部に広く分布し,日本では全国の平地〜低山の林に群生。北海道のものは眉斑がなくシマエナガという。巣は鳥の羽毛やコケをクモの糸などで固め,球形。おもに小昆虫やクモなどを食べる。

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