テイク・オフ
ていくおふ
take off
経済発展の一つの段階を表す概念。離陸ともいう。W・W・ロストウがその経済発展段階説のなかで初めて用いたことばである。彼によれば、すべての国の経済発展は、〔1〕伝統社会、〔2〕過渡期、〔3〕テイク・オフ、〔4〕成熟期、〔5〕高度大衆消費時代、という五つの成長段階をたどるものとされる。このうちテイク・オフとは、ちょうど飛行機が離陸するときのように、経済が高い率で本格的な成長・発展の段階に突入する時期で、その要件としては、投資比率が10%を超えること、少なくとも一つ以上の主導産業が高い成長を達成すること、離陸のための制度的条件が満たされること、などがあげられている。ロストウによれば、日本のテイク・オフ期は明治10年代以降の1878~1900年ごろであったとされている。
[羽鳥 茂]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
テイク・オフ
take-off
アメリカの経済学者 W.W.ロストウがその著書『経済成長の諸段階』のなかで展開した経済発展五段階説のなかの一段階で,「離陸期」と訳される。ロストウはすべての社会がたどる経済的発展段階を,(1) 伝統的社会,(2) 離陸のための先行条件期,(3) 離陸期,(4) 成熟への前進期,(5) 高度大衆消費時代という五段階に分けて考察し,離陸期では政治,経済,社会の急速な構造的変化が生じ,低開発状態からの脱出が行われると考え,この離陸期の段階にある国としてアルゼンチン,ブラジル,チリ,コロンビア,フィリピン,ベネズエラ,インド,中国などをあげた。ここから一般に発展途上国の自立的経済成長の時期をテイク・オフというようになった。しかしあらゆる諸社会がいずれこの五段階を通過するというロストウの説は,A.G.フランクや S.アミンなどの第三世界出身の理論家によって「発展を段階的に把握する視点は中心部の形成過程についてはほぼ妥当するとしても,周辺部のそれについては妥当しない」と批判されている。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報