ドリン剤(読み)ドリンざい

精選版 日本国語大辞典 「ドリン剤」の意味・読み・例文・類語

ドリン‐ざい【ドリン剤】

〘名〙 (ドリンはdrin) 有機塩素系殺虫薬の一種、環状ジエンの殺虫剤総称ディルドリンアルドリンエンドリンなど。防疫農薬などに広く用いられたが、蓄積毒性問題となり、世界各地で使用が禁止されつつある。

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改訂新版 世界大百科事典 「ドリン剤」の意味・わかりやすい解説

ドリン剤 (ドリンざい)

有機塩素系殺虫剤で,アメリカのハイマンJ.Hymanによって1948年ころから開発された。環状ジエン体に塩素が置換した一連の殺虫剤の総称。アルドリン,クロルデン,ディルドリン,エンドリン,ヘプタクロル,ベンゾエピン(α-およびβ-エンドスルファン)などがこの系列に含まれる。これらはディールス=アルダー反応(ジエン合成)によって製造され,いずれも土壌害虫に卓効があることから,日本でもこれらドリン剤が多用された。化学的に安定なために残留性が大で,しかも魚毒性が大きいため,エンドリンは作物残留性農薬および水質汚濁性農薬に,ディルドリンとアルドリンは土壌残留性農薬に,またベンゾエピンは水質汚濁性農薬に指定されている。現在これらドリン剤の多くは農薬の登録から抹消され,ベンゾエピン剤(商品名マリックス,チオダン)のみが登録に残っている。なお,ドリン剤の哺乳動物に対する急性毒性50%致死量LD50ラット経口)は,ヘプタクロル90~135mg/kg,アルドリン67mg/kg,エンドリン17~29mg/kg,ベンゾエピン40~50mg/kgである。ドリン剤はγ-BHC同様昆虫中枢神経系に作用し殺虫効果を表す。
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化学辞典 第2版 「ドリン剤」の解説

ドリン剤
ドリンザイ
drin insecticides

有機塩素系殺虫剤の一種で,環状ジエン殺虫剤の総称.ディールス-アルダー反応により合成され,アルドリン,ディルドリン,エンドリンなどがある.アルカリに安定で,アルカリ性の農薬や肥料と混用すると土壌害虫の駆除に効果がある.しかし,残留性が高く,淡水魚に対する毒性(TLm 値)がきわめて強いので,農薬取締法によりその製造・使用が規制されている.現在,エンドスルファン(LD50 80~100 mg/kg(ラット,経口))のみが登録に残っている.

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