中小企業基本法(読み)チュウショウキギョウキホンホウ

デジタル大辞泉 「中小企業基本法」の意味・読み・例文・類語

ちゅうしょうきぎょう‐きほんほう〔チユウセウキゲフキホンハフ〕【中小企業基本法】

中小企業の経済的、社会的制約による不利を是正し、その成長・発展を図るため、中小企業に関する政策の目標を示した基本法。昭和38年(1963)施行。

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精選版 日本国語大辞典 「中小企業基本法」の意味・読み・例文・類語

ちゅうしょうきぎょう‐きほんほう チュウセウキゲフキホンハフ【中小企業基本法】

〘名〙 日本の中小企業の特殊性を重視してその将来の政策の基本的な大綱を定めた法律。昭和三八年(一九六三公布。平成一一年(一九九九改正。改正により、それまでの設備の近代化促進経営管理合理化大企業による圧迫からの保護などについての規定に代わり、経営革新・創業の促進、経営基盤強化などについての規定が設けられた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「中小企業基本法」の意味・わかりやすい解説

中小企業基本法
ちゅうしょうきぎょうきほんほう

中小企業に関する施策の基本理念・基本方針について定め、国および地方公共団体の責務を明らかにする法律。1963年(昭和38)制定。昭和38年法律第154号。1963年制定当時の中小企業政策の目標としては、いわゆる「二重構造の解消」が存在していた。すなわち、大企業と中小企業とは大きな賃金格差および生産性格差が存在し、それを解消するために中小企業が過当競争に陥り、かえって状況が悪化するというスパイラルに陥っている、よって中小企業を保護すべきであるとの考え方であった。この目標を達成するために国が講ずるべき施策として、設備の近代化、技術の向上、経営管理の合理化などの「中小企業構造の高度化政策」と、過度の競争の防止、下請取引の適正化、事業活動の機会の適正な確保などの「事業活動の不利の補正政策」を明らかにした。また、資金調達力を補充するための資金融通の適正円滑化と資本充実のために必要な施策や、それら施策の推進基盤として、行政機関と中小企業団体の整備、中小企業政策審議会の設置などについて規定した。

 かつて(とくに1960年代の高度経済成長期)の日本経済は大企業を中心に担われており、二重構造の下部にある中小企業は、ややもすれば、さまざまな問題を抱えた弱い企業であると評価されがちであった。しかし、(1)大企業の発展を支えていた技術革新は1980年代より行き詰まり、(2)中国を中心とするアジア諸国が成長し、そして、(3)1990年代初頭のバブル経済崩壊による大不況突入により、大企業の成長が頭打ちとなった。そこで今度は、これまで、さまざまな問題を抱えた弱い企業であると評価されがちであった中小企業に日本経済の中心を担わせるべく、政策転換がなされた。規制緩和による新規創業支援の促進、さらには、ベンチャー企業の進展もこれの追い風となった。そこで、1999年(平成11)12月に法の抜本的改正が行われた。改正法では、旧法の「大企業との格差の是正」という基本理念を転換し、中小企業については「多様な事業の分野において特色ある事業活動を行い、多様な就業の機会を提供し、個人がその能力を発揮しつつ事業を行う機会を提供することにより我が国の経済の基盤を形成している」として、独立した中小企業者の自主的な努力を支援することで、その多様で活力ある成長発展が図られねばならないとした。そしてそのための国の施策として、経営革新および創業の促進・創造的な事業活動の促進を図ること、経営資源の確保の円滑化・取引の適正化などにより中小企業の経営基盤の強化を図ること、事業転換の円滑化などにより経済的社会的環境の変化への適応の円滑化を図ることなどがあげられた。なお改正法における中小企業者の範囲は、卸売業は資本金1億円以下、従業員数100人以下、小売業は資本金5000万円以下、従業員数50人以下、サービス業は資本金5000万円以下、従業員数100人以下、製造業その他は資本金3億円以下、従業員数300人以下となっている。

[福原紀彦・武田典浩]

『渡辺幸男・小川正博・黒瀬直宏・向山雅夫著『21世紀中小企業論――多様性と可能性を探る』新版(2006・有斐閣アルマ)』『清成忠男著『日本中小企業政策史』(2009・有斐閣)』『高田亮爾・上野紘・村社隆・前田啓一編『現代中小企業論』増補版(2011・同友館)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「中小企業基本法」の意味・わかりやすい解説

中小企業基本法
ちゅうしょうきぎょうきほんほう

昭和 38年法律 154号。中小企業に関する国の政策の基本的指針を示した法律。日本経済の高度成長,貿易の自由化,企業間の格差の出現など従来,中小企業を取巻いていた環境が変化したなかで,中小企業が国民経済に果している役割にかんがみ,中小企業の経済的,社会的制約による不利を是正し,中小企業者の創意工夫を尊重し,中小企業の成長をはかることを目的として制定されたもの。国の中小企業に関する政策の目標 (1条) ,および政策事項 (3条) ,中小企業の範囲 (2条) を定めている。特に国の施策として,中小企業構造の高度化に関し,設備の近代化 (9条) ,技術の向上 (10条) ,経営管理の合理化 (11条) などをあげる。また,事業活動の不利の是正 (17~22条) ,小規模企業 (23条) ,金融,税制 (24,25条) ,行政機関および中小企業団体 (26,27条) ,中小企業政策審議会 (28~33条) について規定している。

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百科事典マイペディア 「中小企業基本法」の意味・わかりやすい解説

中小企業基本法【ちゅうしょうきぎょうきほんほう】

中小企業対策の基本法(1963年)。中小企業の経済的・社会的不利の是正,自主的努力の助長によるその成長を目標とし,設備近代化,技術向上,経営合理化,共同化等による構造の高度化,下請の適正化,従業員の福祉向上等を国の施策とし,中小企業政策審議会の設置を規定。

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世界大百科事典(旧版)内の中小企業基本法の言及

【中小企業】より

…また中小企業者の数の多さゆえに,現実にその保護を要求する政治的な圧力も必然的に強くなり,一方で,可能な限り自由な競争を維持するという前提を保ちつつ,他方で,いかにして健全な中小企業を育成するかという,中小企業政策の課題が生ずるのである。 1963年に制定された中小企業基本法は,現在の日本における中小企業政策の基本的な枠組みを定める法律である。同法は工業,鉱業,運送業等については資本規模で1億円以下,常用従業員規模で300人以下の企業を,卸売業については資本規模で3000万円以下,常用従業員規模で100人以下の企業を,小売・サービス業については資本規模で1000万円以下,常用従業員規模で50人以下の企業をそれぞれ中小企業として定義し,その経済的・社会的制約による不利を是正し,自主的な努力を助長して,中小企業の成長発展と,中小企業従業者の経済的・社会的地位の向上に資するように国が政策を実施すべきことを規定する。…

※「中小企業基本法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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