北海道拓殖銀行(読み)ほっかいどうたくしょくぎんこう

改訂新版 世界大百科事典 「北海道拓殖銀行」の意味・わかりやすい解説

北海道拓殖銀行[株] (ほっかいどうたくしょくぎんこう)

北海道をおもな地盤とした都市銀行。本店札幌。北海道の開発を目的として1900年2月16日特殊銀行普通銀行・特殊銀行)として設立された。農工銀行法の制定にともない,北海道にも農工銀行が設立されるはずであったが,同地の特殊事情を考慮して代りに1899年北海道拓殖銀行法が制定され,これにもとづき(株)北海道拓殖銀行(北拓)が設けられた。公称資本金300万円(うち100万円は政府出資),初代頭取曾根静夫(山形県知事,拓殖務省北部局長歴任)で発足。業務は農工銀行よりはるかに広く,不動産貸付けのほか,北海道の開発を目的とする株券債券担保の貸付け,社債の応募・引受け,北海道の産物を担保とする貸付けならびに荷為替業務,拓殖債券の発行および預金の受入れ等であった。05年拓殖債券を発行し,樺太サハリン)にも進出し,第2次大戦期には北海道・樺太の諸銀行を合併し,同地方唯一の本店銀行となった。農地担保の長期貸付けは,北海道における集約的農耕への転換にともない一時期急増したが,同地方開発の重点が農業部門より商工鉱業へ移行するにしたがい減少した。40年代には長期貸付額より短期貸付額や有価証券所有額のほうが多い。50年4月北海道拓殖銀行法の廃止により,銀行法による普通銀行に転換した。また52年,長期信用銀行法の制定にともない拓殖債券発行による長期金融業務を停止して純粋の商業銀行に転換し,55年11月には,拓殖債券の償還終了を契機に都市銀行に加わった。資本金1238億円(1997年5月),預金残高7兆1423億円(1997年3月)。97年11月,巨額の不良債権のため経営が破綻した。そのため道内の営業権を北海道の第二地方銀行である北洋銀行に,本州のそれを中央信託銀行に譲渡することとなり,99年3月解散した。これは都市銀行の経営破綻の初の例である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「北海道拓殖銀行」の意味・わかりやすい解説

北海道拓殖銀行
ほっかいどうたくしょくぎんこう

北海道開発を目的とした特殊銀行として1900年(明治33)北海道拓殖銀行法に基づき設立。拓殖債券の発行による資金を、農地などを担保に長期開発資金として貸し出すという不動産金融が主要な業務であった。1950年(昭和25)普通銀行に転換したのち、債券の発行を停止し、1955年都市銀行に加入した。その成り立ちから、北海道を中心的な営業基盤とし、北海道の発展に貢献してきたが、その後、本州における支店網の整備にも力を注いだ。1990年代前半のバブル期に不動産開発会社に巨額の融資を行ったが、バブルの崩壊に伴い、その大半が不良債権となった。そのため経営不振に陥り、1997年(平成9)11月経営が破綻(はたん)、1998年11月北海道内は北洋銀行に、本州は中央信託銀行(2000年合併により中央三井信託銀行となる)に、それぞれ営業を譲渡し、営業活動を停止、解散した。

[外山茂樹]

『北海道拓殖銀行編・刊『北海道拓殖銀行史』(1971)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「北海道拓殖銀行」の意味・わかりやすい解説

北海道拓殖銀行
ほっかいどうたくしょくぎんこう

旧都市銀行。北海道開拓のため制定された北海道拓殖銀行法に基づいて 1900年に設立。最初は農地や宅地を担保に長期資金を貸付ける不動産融資業務を主としていた。 05年第1回拓殖債券を発行,16年には一般他銀行の代理業務および信託業務の営業が認められ,第2次世界大戦終了時までに北海道内の銀行を次々と合併し急成長を続けた。 50年北海道拓殖銀行法が廃止されて普通銀行となり,55年には都市銀行となった。 97年,経営不振のため破綻をきたし,98年に北海道地区は第2地方銀行の北洋銀行,本州地区は中央信託銀行 (現中央三井信託銀行) に営業権を譲渡した。

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世界大百科事典(旧版)内の北海道拓殖銀行の言及

【銀行】より

…第二地方銀行の兵庫銀行が95年8月,太平洋銀行が96年3月,阪和銀行が96年11月,それぞれ破綻した。特に97年11月北海道拓殖銀行(都市銀行),山一証券,徳陽シティ銀行等の破綻により,日本の金融システムは最大の危機に直面し,〈日本発,世界金融恐慌〉の寸前までいったといわれる。この間に政府は金融の規制緩和を段階的に進め,またBIS(国際決済銀行)による自己資本比率の規制の導入(1993),預金保険機構の強化策なども講じてきたが,金融危機はいっそう深化している。…

※「北海道拓殖銀行」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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