古田足日(読み)フルタタルヒ

デジタル大辞泉 「古田足日」の意味・読み・例文・類語

ふるた‐たるひ【古田足日】

[1927~2014]児童文学者・文学評論家愛媛の生まれ。山中恒らとともに小川未明童話批判。作「ロボット・カミイ」「おしいれのぼうけん」「宿題ひきうけ株式会社」、評論「現代児童文学論」など。

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知恵蔵 「古田足日」の解説

古田足日

児童文学作家、評論家。1927 年、愛媛県川之江町(現四国中央市)出身。命名は「出雲国造神賀詞」(いずものくにのみやつこのかんよごと)にある文言に由来。戦後の児童文学界において、創作と評論の両方の分野で活躍した。
早稲田大学文学部ロシア文学科在学中に早大童話会に入り、児童文学の創作と、後に評論を始める。53年、早稲田大学中退。59年の『現代児童文学論―近代童話批判』(くろしお出版)で日本児童文学者協会新人賞を受賞。61年に『ぬすまれた町』(理論社)を発表して、以降は児童文学作家としても活動し、67年、『宿題ひきうけ株式会社』(理論社)で日本児童文学者協会賞を受賞した。
代表作『おしいれのぼうけん』(童心社)は、74年に刊行された絵本。当時、駆け出しの編集者だった酒井京子・童心社取締役会長に、「作家と絵描きと編集者が三位一体となって絵本を作るべきだ」と説き、「女性も働く時代だから、舞台は保育園に」と考えて、画家の田畑精一と3人で保育園を取材し完成させた。同書は80ページもの長編絵本であるが、時代を越えて読み継がれロングセラーとなり、2012年には累計販売部数200万部を超えた。
主な作品には他に『ロボット・カミイ』(福音館書店)、『大きい1年生と小さな2年生』(偕成社)、『ダンプえんちょうやっつけた』(童心社)、『モグラ原っぱのなかまたち』(あかね書房)、評論では『児童文学の旗』(理論社)などがある。
97年から02年まで日本児童文学者協会会長を務めた。
平和運動にも力を注ぎ、作家の松谷みよ子らと共に「子どもの本・九条の会」の代表を務めた。絶筆となったエッセー「児童文学、三つの名言」では、教育基本法の改正によって盛り込まれた「愛国心教育」を憂えていたという。
14年6月8日、心不全のため死去。享年86。

(葛西奈津子 フリーランスライター/2014年)

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「古田足日」の解説

古田足日 ふるた-たるひ

1927-2014 昭和後期-平成時代の児童文学者。
昭和2年11月29日生まれ。昭和28年鳥越信,山中恒(ひさし)らと早大童話会の名で「少年文学の旗の下に」を起草し,伝統的な童話を批判する。34年評論「現代児童文学論」,36年創作「ぬすまれた町」を刊行。42年「宿題ひきうけ株式会社」で日本児童文学者協会賞。平成9年日本児童文学者協会会長。平成26年6月8日死去。86歳。愛媛県出身。早大中退。

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知恵蔵mini 「古田足日」の解説

古田足日

児童文学作家、評論家。1927 年、愛媛県生まれ。早稲田大学中退。59年に『現代児童文学論』で日本児童文学者協会新人賞を受賞。61年に『ぬすまれた町』を発表して以降は児童文学作家としても活動し、66年に『宿題ひきうけ株式会社』(理論社)で日本児童文学者協会賞を受賞した。その後も『ロボット・カミイ』(福音館書店)、『おしいれのぼうけん』(童心社)、『大きい1年生と小さな2年生』(偕成社)などの作品を発表。97年から2002年まで日本児童文学者協会会長も務めた。14年6月8日、心不全のため死去。享年86。

(2014-6-12)

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世界大百科事典(旧版)内の古田足日の言及

【児童文学】より

… そうしたなかで,当時文学的にも社会的にも無名だった若い世代は,模索の手を未明の伝統という聖域へ伸ばし,53年の早大童話会による〈少年文学宣言〉を皮切りに,未明の伝統への否定的克服の道を歩みはじめた。60年,外国児童文学の洗礼を受けた石井桃子,瀬田貞二,渡辺茂男らのグループが《子どもと文学》を刊行したことでその動きはさらに強まり,57年,いぬいとみこの長編幼年童話《ながいながいペンギンの話》を筆頭に,神沢利子,佐藤さとる,中川李枝子,古田足日,松谷みよ子,山中恒らの新人作家がそれぞれの処女作をひっさげて登場,60年を越えた時点で日本の児童文学地図は完全に塗りかえられるに至った。以来今日まで,翻訳や評論・研究の分野を含め,また読書運動など普及の面も含めて児童文学は盛況の一途をたどっている。…

※「古田足日」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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