名目金(読み)みょうもくきん

精選版 日本国語大辞典 「名目金」の意味・読み・例文・類語

みょうもく‐きん ミャウモク‥【名目金】

〘名〙 江戸時代金融の一形態。寺社公家大名がその余財を、また金持が寺社・大名などの名を借り、貸借訴訟が優先的に取り上げられることを利点として、一般に金を貸し付けること。また、その金。利率高利貸付より低く、時の公定利率であったが、別に礼金、筆墨料などを差し引いて貸し付けるのを普通とした。〔随筆守貞漫稿(1837‐53)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「名目金」の意味・わかりやすい解説

名目金 (みょうもくきん)

江戸時代における金融制度の一種。名目銀ともいう。格式の高い門跡寺院や,幕府と特別な関係にある寺社などが,堂舎の修復料そのほか,なんらかの名目を冠した資金すなわち名目金を,武家町人農民に貸し付けた。名目金貸付けの源流は,はやく中世の有力寺社にみられ,祠堂銭として集めた金銭を貸し付けて利殖していた。江戸時代に入り,とくに中期ごろより幕府はこの名目金貸付けに対し,公金貸付けと同様の貸借訴訟上の優先権を認めたので,公家や三家などでも,寺社にならってさかんに名目金貸付けを行うようになった。幕府がその債権を保護した本来の理由は,門跡や寺社自身に利殖させることにより,幕府が負担すべき修理費その他の助成金を軽減するためであったと思われる。名目金の実際の貸付業務は,豪商,豪農が担当する場合が多かったが,債権を保護されたこの安全融資に目をつけた彼らが,差加金(さしくわえきん)と称して貸付資本に自己の資金を加え,はなはだしい場合は全額が豪商あるいは豪農の出資金であり,寺社などは文字どおり単に名目を貸すにすぎないこともあった。貸付対象は,ひろく大名から庶民にまで及んだ。利息はそれほど高くはなかったが,礼金,筆墨料などが貸付金から差し引かれ,返済の取立てもひじょうに厳しかったことから,結局は高利貸に類するものであった。
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世界大百科事典(旧版)内の名目金の言及

【高利貸】より

…礼金や利息を天引きし即日返済や日ごとに割賦返済する烏金(からすがね)や日済金(ひなしがね)などは近世後期から明治期に全盛となる。盲人保護に付随した座頭金は,先祖供養の寄付金を元本とする祠堂金や寺社修復料積立てや宮家の高名を利用する資本などとともに名目金として三都(江戸,京都,大坂)や城下町に浸透した。これらは公権力の名の下に元利保護が徹底し,したがって貸金が豊富に集まった。…

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