土用(読み)どよう

精選版 日本国語大辞典 「土用」の意味・読み・例文・類語

ど‐よう【土用】

〘名〙
陰暦で、立春・立夏・立秋・立冬の前各一八日間の称。陰陽五行説で四季を五行にあてはめる場合、春・夏・秋・冬を木・火・金・水に配すると土があまるので、四季それぞれ九〇日あるうちの終わりの五分の一ずつを土にあてたもの。春は清明、夏は小暑、秋は寒露、冬は小寒の後、各一三日目に土用入りとなり、一八日で土用が明けて新しい季節が始まる。土用中に土を犯すことは忌むべきこととされ、葬送などはこの期間は延期された。
春記‐長暦四年(1040)九月一〇日「主殿寮御鼎、不移居。依土用也」
※増鏡(1368‐76頃)一四「どようの程にて、しばしかしこにおはしますさへいと悲し」
② 一般には、小暑から立秋までの夏の最も暑いさかり。夏の土用。暑気あたりを避けるため、また、元気をつけるため、蒜(にんにく)・あんころ餠・鰻(うなぎ)などを食べる風習がある。《季・夏》
※日本書紀兼倶抄(1481)上「六月土用の時に、沈火のまつりとて我等が方にあるぞ」
仮名草子仁勢物語(1639‐40頃)下「水無月の土用、餠搗かせければ、男手に豆一二出たり」

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デジタル大辞泉 「土用」の意味・読み・例文・類語

ど‐よう【土用】

雑節の一。1年に4回あり、立春立夏立秋立冬の前各18日間。
立秋前の夏の土用。うしの日うなぎを食べる風習がある。 夏》「ほろほろと朝雨こぼす―かな/子規

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「土用」の意味・わかりやすい解説

土用
どよう

暦の雑節の一つ。中国では、1年春・夏・秋・冬の四季に、木・火・土・金・水の五行をあてようとしたが、四季に五つを割り当てるのはむりである。そこで春・夏・秋・冬の四季に木・火・金・水をあて、各季の終わり18日余に土気をあてた。これを土用といい、土曜用事を略したものである。現行暦では、太陽の視黄経がそれぞれ27度、117度、207度、297度に達したときが、それぞれ春の土用、夏の土用、秋の土用、冬の土用の入りで、その期間はおよそ18日間で、各季の土用があけると、立夏、立秋、立冬、立春である。今日では夏の土用だけが用いられており、夏の土用に入って(だいたい7月20日ごろ)、最初の丑(うし)の日が「土用丑」である。

[渡辺敏夫]

気象

夏の土用は気象のうえからは7月下旬から8月上旬にかけての真夏の晴天時にあたり、例年一年中でもっとも暑気が甚だしく、蒸し暑い天気が続く。また雷雨の発生もこのころに多い。ただし近年は気候の変動を反映して年による土用の天気の違いが大きい。梅雨(つゆ)のあがりが思わしくなく、曇雨天の日が8月上旬まで多かったり、また梅雨明け以後の猛暑は長続きせず、8月に入ると、気温が低下して早くも秋風が吹くといった年が少なくないのである。夏の土用は、本土では台風の影響を受けやすくなるシーズンであることも忘れてはならない。

[根本順吉]

民俗

夏の土用に入った3日目を土用三郎といって、この日の天候でその年の豊凶を占った。このころは1年でもっとも暑いときなので、土用干しといって衣服や書物などの虫干しをする。また土用の丑の日(うしのひ)に丑湯といって薬湯に入ったり、夏負けしないためウナギの蒲(かば)焼きやどじょう汁を食べる風習がある。中国地方では、牛の祇園(ぎおん)といって牛を引いて行って海に入れる。また薬草は、夏の土用にとったものがとくに薬効があると、昔からいわれている。

 岡山県の各村では、夏の悪疫を退散させるために土用祈祷(きとう)を行う例がある。土用念仏ともいって大数珠(じゅず)を繰り回して念仏を唱える。同県高梁(たかはし)市備中(びっちゅう)町西山地区では、土用入りの日に家内安全と虫送りの祈祷のため、寺から僧がきて道中念仏を唱えて家々を回り、『般若心経(はんにゃしんぎょう)』を読誦(とくじゅ)するという。

[大藤時彦]


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改訂新版 世界大百科事典 「土用」の意味・わかりやすい解説

土用 (どよう)

雑節の一つ。年4回各季にあるが,一般には太陽の黄経117°に達した夏の土用を指す。立秋前18日間をいい,初日を土用の入りという。極暑のためその暑さを利用したり,また暑気負けを防ぐ各種の習俗が行われている。利用するほうでは,衣類や書物に風を通して虫干しする土用干しの風が全国的である。

 夏負け防止では土用丑の日の伝承が多く,ウの字のつくウナギ,ウリ,牛の肉や土用餅を食べる風習がある。静岡市にはユリの根を入れた土用粥を食べる所もある。海水浴をするとじょうぶになるといったり,薬草が流れてくるといって川で水浴したり,ショウブや薬草を入れた湯に入る所も少なくない。土用の灸治は薬効があるともいう。温泉祭をする所も多く,丑の日のふろは千日の入浴に価するなどともいう。その他,熊本県水俣市地方では土いじりを忌み,新潟県三条市地方では土用血といって馬の血取りをしたという。3日目を土用三郎といい,この日の晴雨によって豊凶を占う農村も多い。
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百科事典マイペディア 「土用」の意味・わかりやすい解説

土用【どよう】

雑節の一つ。一年に4回あり,立夏の前18日間を春の土用といい,以下,立秋立冬立春の前の各18日間をいう。しかし普通は夏の土用をさし,その初日を〈土用の入り〉という。この間,土用干しをしたり,土用餅(もち)を作る。また土用の丑(うし)の日にウナギを食べると暑気にあてられないといい,ウリ,うどんなど〈う〉の字のつく物を食べるところもある。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「土用」の意味・わかりやすい解説

土用
どよう

雑節の一つで立夏立秋立冬立春直前の 18日間ずつをさす。中国古来の五行説によれば,宇宙の万物は木,火,土,金,水の5つの元気で組成されているといわれ,木の方位は東で春を,火の方位は南で夏を,金の方位は西で秋を,水の方位は北で冬をそれぞれ代表し,土は中央で四季の主であるという。この場合,土の代表する季節がないので,春,夏,秋,冬の土用を定め,それにあてている。現行暦では太陽の黄経が 27°,117°,207°,297°になった日をそれぞれ春,夏,秋,冬の土用の入りと定めて暦に記入されているが,実際には夏の土用だけが土用の丑の日,土用干し,土用波などといわれて,一般社会に親しまれている。

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日本文化いろは事典 「土用」の解説

土用

土用 とは、 立春(2月4日頃)立夏(5月5日頃)立秋(8月7日頃)立冬(11月7日頃)の前18日間を言います。それぞれ、立春前の「冬の土用」が1月17日頃、立夏前の「春の土用」が4月17日頃、立秋前の「夏の土用」が7月20日頃、立冬前の「秋の土用」が10月20日頃から始まります。その中でも、現在は「夏の土用」の間の丑の日にうなぎを食べる「土用の丑〔うし〕」という行事が有名です。

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占い用語集 「土用」の解説

土用

二十四節気の立春、立夏、立秋、立冬の前の18日間のこと。季節と季節の変わり目の混沌とした時期を示す。土用は各季節の変わり目にあるが、一般的には夏の土用を指すことが多い。この夏の土用の丑の日に鰻を食べる習慣がある。

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