夜郎自大(読み)やろうじだい

精選版 日本国語大辞典 「夜郎自大」の意味・読み・例文・類語

やろう‐じだい ヤラウ‥【夜郎自大】

〘名〙 (形動) (「史記‐西南夷伝」にみえる中国西南の民族夜郎が、漢の強大さを知らずに自分勢力をほこったというところから) 自分の力量を知らないでいばること。
米欧回覧実記(1877)〈久米邦武〉四「久しく封建の国にて、貴族甚だ多く〈略〉欧洲にて貴栄なる国体なりと誇りて、頗る夜郎自大の心あり」

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デジタル大辞泉 「夜郎自大」の意味・読み・例文・類語

やろう‐じだい〔ヤラウ‐〕【夜郎自大】

[名・形動]《「史記」西南夷伝にみえる話で、昔、夜郎の強大さを知らずに自分の勢力を誇ったところから》自分の力量を知らずにいばること。また、そのさま。夜郎大。「夜郎自大な振る舞い」
[補説]「野郎自大」と書くのは誤り。
[類語]空威張り虚勢増上慢野狐禅やこぜん唯我独尊遼東のいのこ雪駄の土用干し天狗てんぐになる道を聞くこと百にして己にく者しと為す

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四字熟語を知る辞典 「夜郎自大」の解説

夜郎自大

実は大したことがないのに、自分たちの力を誇ってること。

[使用例] 日本は世界の田舎者であり、世間知らずであって、勝手放題の一人よがりとなったのである。いわゆる中国人がいう夜郎自大の類である[とくとみほう*敗戦学校|1948]

[使用例] ひとつには「リメムバア・パール・ハーバー」の合言葉を敵にあたえて全アメリカを団結させ、ふたつには海軍に夜郎自大の風を生ぜしめて、「沈黙の海軍」は消滅した[阿川弘之*雲の墓標|1955]

[使用例] 「シロートさん」なんだから書くことの問題については、黙って引っ込んでろ、というのは、その人たちの夜郎自大な「職業幻想」にすぎない[内田樹*街場のマンガ論|2010]

[解説] づらから、夜中にうさんくさい野郎が何かするような感じがありますが、そうではありせん。「史記」のエピソードが元になったことばです。
 漢の武帝は、南部地域の南越国を征服しようとしていました。その手始めに、南越国に隣接するてん国や夜郎国に使いを送りました。
 漢からの使者に対し、滇国、夜郎国のそれぞれの王が尋ねました。
 「漢とわが国と、どちらが大きいのか」
 もちろん、漢のほうが強大なのに決まっています。滇王も夜郎王も、国外事情について知らなすぎました。
 ここから、世間知らずで威張っている人々のことを「夜郎自大」(夜郎、みずからを大となす)と言うようになりました。なぜか「滇自大」とは言いません。
 つまり、「井の中のかわず」と同じです。ただ、「井の中の蛙」より「夜郎自大」のほうが指す人数が多い感じがあります。「夜郎自大的になりがちな国民性」のように使うとしっくりきます。

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世界大百科事典(旧版)内の夜郎自大の言及

【貴州[省]】より

…秦には黔中郡がおかれ,漢代には益州,荆州にかわり,武陵郡や牂牁(しようか)郡が設けられた。武帝の時代夜郎国も牂牁郡に属したが,帝が夜郎に使者を派遣したとき,夜郎王が“強大”な漢に対して自分達とどちらが大きいかと問い〈夜郎自大〉の言葉を生んだことは有名である。またこのころから漢族が流入し開墾が進んだ。…

【夜郎】より

…中国,戦国期から漢代に今の貴州省西部に建国した農耕民族。西南夷のなかでも最大の勢力をほこり,前漢の武帝の使者に漢と夜郎とではどちらが大きいかとたずねて,〈夜郎自大〉のことわざが人口に膾炙(かいしや)されることになった。武帝は,初めは南越討伐の拠点として,のちには大月氏と連合して匈奴を討つためにこの地を重視,前111年(元鼎6)牀柯(そうか)郡をおき,その長を王に封じたが,前漢代を通じて反乱をくりかえした。…

※「夜郎自大」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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