寄らば大樹の陰(読み)ヨラバタイジュノカゲ

デジタル大辞泉 「寄らば大樹の陰」の意味・読み・例文・類語

らば大樹たいじゅかげ

身を寄せるならば、大木の下が安全である。同じ頼るならば、勢力のある人のほうがよいというたとえ。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

ことわざを知る辞典 「寄らば大樹の陰」の解説

寄らば大樹の陰

頼りにするのなら、大きな勢力のあるものを選ぶのが得策であるというたとえ。

[使用例] 松五郎「さすがは、うちの檀那だけあって、ちょっとの奢りが、このとおりだ。世間じゃあ、鬼小林屋の、強欲重吉のとぬかしやがるが、立ち寄らば大樹の蔭さ。」蓮蔵「今、小林屋の身内と言やあ、侍ならば薩長方という格で、どこへ出たって、五稜郭の物見櫓ほど鼻が高けえさ。」[久保栄*五稜郭血書|1933]

[使用例] 二言目には、うちが、うちが、って、言うがね〈略〉うちってのは、寄らば大樹の蔭、わが忠誠を捧げる主君のお家、じゃぁなかった、わが勤める会社のことだとよ。自分イコール会社になるんだから、立派なもんだ[柴田翔*われら戦友たち|1973]

[解説] 江戸初期から明治期まで、「立ち寄らば大木の蔭」としてよく知られた表現です。比喩としては、世話になるのなら大きな屋敷大店がよいということになります。今日では、それが「寄らば大樹の陰」となり、会話では「寄らば大樹」でとどめることも多くなっています。ことわざは、概して長い間に短くなる傾向がありますが、約三〇〇年もの間安定した形で使われていたものが、近代に入って大きく変貌した珍しい例といえます。
 「大木」が「大樹」になったのは、「わが田へ水を引く」を「我田引水」とした明治期の風潮に沿ったものですが、昭和前期まで読みは「おおき」が優勢でした。「立ち寄らば」から「寄らば」への変化は大正期以降に生じ、背景にはサラリーマンの登場に象徴される社会的変動がありました。官民の何らかの組織に所属する人が増加し、組織に依存する傾向が強まった時代といえるでしょう。

[対義] 鶏口となるも牛後となるなかれ

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