岩城宏之(読み)いわきひろゆき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「岩城宏之」の意味・わかりやすい解説

岩城宏之
いわきひろゆき
(1932―2006)

指揮者。東京生まれ。東京芸術大学音楽学部打楽器科を中退、1956年(昭和31)にNHK交響楽団指揮研究員となり、渡辺暁雄(あけお)、斎藤秀雄に指揮を師事。同年、N響特別演奏会でチャイコフスキーの交響曲第6番『悲愴(ひそう)』を指揮してデビュー。60年のN響世界一周演奏旅行に参加、以後国内はもとより、ベルリンフィルウィーン・フィル、バンベルク交響楽団をはじめ欧米諸都市のオーケストラ客演指揮を務めた。現代曲とりわけ日本人作曲家の初演作品の指揮および録音を多く手がけ、その普及に貢献した。

 1988年(昭和63)より日本最初の職業室内オーケストラであるオーケストラ・アンサンブル金沢の音楽監督を務めた。同オーケストラのために作品を委嘱して定期公演で取り上げるほか、「21世紀へのメッセージ」としてCD録音し、室内オーケストラのレパートリー開拓にも貢献した。東京混声合唱団音楽監督、メルボルン交響楽団終身桂冠指揮者、札幌交響楽団終身桂冠指揮者、N響終身正指揮者を兼任。オーストラリア大勲章(1985)、サントリー音楽賞(1988)、フランス芸術文化勲章(1990)、放送文化賞(1993)、紫綬(しじゅ)褒章(1996)、日本芸術院恩賜賞(2002)、朝日賞(2006)などを受けた。『楽譜風景』(1983)など多数著作があり、91年(平成3)には日本エッセイストクラブ賞を受賞

[楢崎洋子]

『『岩城音楽教室――ワクをはずして、もっと楽しもう』(1977・光文社)』『『行動する作曲家たち――岩城宏之対談集』(1986・新潮社)』『『森のうた』(1990・朝日新聞社)』『『いじめの風景』(1996・朝日新聞社)』『『作曲家武満徹と人間黛敏郎』(1999・作陽学園出版部)』『『指揮のおけいこ』(1999・文芸春秋)』『『オーケストラの職人たち』(2002・文芸春秋)』『『音の影』(2004・文芸春秋)』『『九段坂から――棒ふりはかなりキケンな商売』(朝日文庫)』『『楽譜の風景』『フィルハーモニーの風景』(岩波新書)』『『岩城宏之のからむこらむ』『ハニホヘト音楽説法』(新潮文庫)』『『棒ふりの休日』『棒ふりの控室』『棒ふりのカフェテラス』(文春文庫)』『『回転扉のむこう側』(集英社文庫)』

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百科事典マイペディア 「岩城宏之」の意味・わかりやすい解説

岩城宏之【いわきひろゆき】

指揮者。東京都生れ。東京芸術大学打楽器科中退。1956年指揮者デビュー,1969年よりNHK交響楽団正指揮者を務める。札幌交響楽団正指揮者,オーケストラ・アンサンブル金沢の音楽監督も務めた。1968年オランダの国立ハーグ・フィルハーモニー管弦楽団常任指揮者,1974年オーストラリアのメルボルン交響楽団首席指揮者(1987年桂冠指揮者)。1977年には日本人で初めてウィーン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮するなど,海外でも活躍した。打楽器奏者としても活動し,新作の初演,演奏会のプロデュースや著作を通じてクラシック音楽の普及に尽力した。著書に《フィルハーモニーの風景》(1991年日本エッセイスト・クラブ賞受賞)などがある。2001年度芸術院恩賜賞受賞,2003年芸術院会員。妻はピアノ奏者木村かをり。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「岩城宏之」の意味・わかりやすい解説

岩城宏之
いわきひろゆき

[生]1932.9.6. 東京,東京
[没]2006.6.13. 東京
指揮者,打楽器奏者。東京芸術大学器楽科在学中に NHK交響楽団の指揮研究員を経て副指揮者となり,1956年同交響楽団で指揮者デビュー,同団指揮者を経て 1969年終身正指揮者。そのほか名古屋フィルハーモニー交響楽団音楽総監督,札幌交響楽団音楽監督などを歴任。死去直前まで東京混声合唱団音楽監督,オーケストラ・アンサンブル金沢音楽監督,メルボルン交響楽団終身桂冠指揮者として,病をおして活動を続けた。ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団をはじめヨーロッパ各地のオーケストラにも客演。エネルギッシュで情熱的な指揮表現で人気を集め,また「初演魔」と呼ばれるほど内外の現代音楽の紹介に力を入れ,日本の作曲界に大きな功績を残した。『フィルハーモニーの風景』などエッセーを中心に多数の著書がある。紫綬褒章受章,日本芸術院会員。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「岩城宏之」の解説

岩城宏之 いわき-ひろゆき

1932-2006 昭和後期-平成時代の指揮者。
昭和7年9月6日生まれ。東京芸大打楽器科に籍をおくかたわら渡辺暁雄(あけお),斎藤秀雄に指揮をまなぶ。昭和31年NHK交響楽団を指揮してデビュー。44年N響終身正指揮者となる。現代音楽と積極的にとりくみ,また世界の名門オーケストラを指揮し,国際的に活躍。平成14年芸術院恩賜賞。15年芸術院会員。18年朝日賞。同年6月13日死去。73歳。東京出身。

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世界大百科事典(旧版)内の岩城宏之の言及

【NHK交響楽団】より

…51年現在の名称に改称。51‐54年K.ウェスが常任指揮者をつとめ,ついでN.エッシュバッハー,W.ロイブナー,W.シュヒターらが指揮をとり,69年からは岩城宏之があたっている。安定した堅実な演奏には定評があり,マタチッチやサワリッシュを名誉指揮者に迎え,いっそうその趣をつよくしている。…

※「岩城宏之」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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