(読み)あゆみ

精選版 日本国語大辞典 「歩」の意味・読み・例文・類語

あゆみ【歩】

〘名〙 (動詞「あゆむ(歩)」の連用形の名詞化)
① 足を動かして進むこと。歩行。
※万葉(8C後)六・一〇〇二「馬の歩(あゆみ)押へとどめよ住吉(すみのえ)の岸の黄土(はにふ)ににほひて行かむ」
※多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉前「賑しい往来(ひとどほり)の中を行くので、柳之助も〈略〉歩行(アユミ)が果取(はかど)る」
② 物事の進み具合。物事の運び方。進行。また、物の動き。運行。
浮世草子傾城禁短気(1711)二「野郎に能筆は稀(まれ)也。女郎は〈略〉局(つぼねぼさつ)迄、筆のあゆみの悪しきはなし」
※戯作三昧(1917)〈芥川龍之介〉五「いくら鳶が鳴いたからと云って、天日の歩みが止まるものではない」
③ 和船の上部構造の部材。帆柱の受材である筒挟から船尾の笠木(かさぎ)にかけて渡す二本の並行材。水夫がこの上を歩くところからいう。ふつう、海船での呼称で、川船では「はさみ」という場合が多い。〔和漢船用集(1766)〕
※雑俳・柳多留‐二六(1796)「つういついあゆみを渡り芸子乗り」
⑤ 劇場で、土間を仕切った枡形の木を幅広くしたてて、客や売り子が通れるようにしたもの。客席から舞台へ向かって右の方にあるものを仮花道として用いる場合を東の歩みといい、本花道と仮花道を、正面二階の桟敷(さじき)の下でつなぐ狭い板の通路を中の歩みという。あゆみいた。
※歌舞伎・御摂勧進帳(1773)四立「直井隔て、無理に東の歩みへ連れ這入る」
⑥ (比喩的に) 中に立ってとりもつもの。なかだち。
※読本・南総里見八犬伝(1814‐42)四「淀(よど)なかりける弁舌は、〈略〉辞(ことば)の歩水(アユミ)渡しかけし、げに船長(ふなをさ)の母なりけり」
⑦ 等間隔に並んでいる木材などの中心線から中心線までの距離。〔日本建築辞彙(1906)〕
⑧ ねじの一回転によって進退する距離。ねじの山と山との間隔。ピッチ。〔物理学術語和英仏独対訳字書(1888)〕
⑨ 取引相場で、一つの立会中での相場の動き方。株価の変動。〔取引所用語字彙(1917)〕

ぶ【歩】

〘名〙
[一] 単位を表わす。
① 土地の長さの単位。もと古代中国の単位だが、日本では曲尺(かねじゃく)六尺(約一・八メートル)に等しい。一間(いっけん)。奈良時代以前には、高麗尺(こまじゃく)(令の大尺と同じ長さ)五尺を一歩とする方法と令の小尺(和銅の大尺と同じ長さ。曲尺の原型)六尺を一歩とする方法とがあったが、高麗尺によるものはやがて消滅した。高麗尺五尺と令の小尺六尺は同じ長さで一・八メートル弱となる。
※令義解(718)雑「凡度地。五尺為歩。三百歩為里」
※延喜式(927)五〇「凡度量権衡者、官私悉用大、但測晷景湯薬則用小者、其度以六尺歩、以外如令」 〔礼記‐王制〕
② 土地の面積の単位。曲尺六尺四方。三六平方尺。一間四方。一坪。約三・三平方メートル。奈良時代以前には、高麗尺五尺平方と令の小尺六尺平方の二方法があったが、高麗尺による方法は消滅した。のち、太閤検地では六尺三寸四方を一歩としたが、江戸時代に六尺四方一歩の方法が広まり、明治に至った。その際、三〇歩を一畝(せ)とした。
※令集解(701)田「古記云。問。田長卅歩。広十二歩為段。即段積三百六十歩。更改段積二百五十歩。重復改為三百六十歩
※拾芥抄(13‐14C)中「凡田以方六尺一歩、〈略〉三十六歩為一段頭」 〔周礼注‐地官・小司徒〕
③ 町(ちょう)・段(たん)の下に付けて、その面積に端数のないことを表わす。「三町五段歩」
[二] (「分(ぶ)」から転じたものであるが、一般に「歩」と書かれた) 利益やもうけの割合。率。
① 資本に対する金利。利回り。
貸し借りの金銭の利息。
※浮世草子・傾城色三味線(1701)大坂「歩(ブ)をやすうしてかりたい」

あり・く【歩】

〘自カ四〙
① 位置を移動する。動きまわる。
(イ) 主として人間の動作に用いる場合。(足を使って、また車馬などに乗って)あちこち移動する。(どこかへ)行く。出かける。出歩く。あちこち歩きまわる。
※書紀(720)允恭即位前(図書寮本訓)「我が不天、久しく篤(おも)き病(やまひ)に離(かか)りて、歩行(アリクこと)能はず」
方丈記(1212)「若(もし)ありくべき事あれば、みづからあゆむ」
(ロ) 人間以外のものの動作に用いる場合。あちこち動く。動きまわる。また、物などが世に広まる。
※蜻蛉(974頃)中「我はらのうちなる蛇(くちなは)ありきて肝をはむ」
※枕(10C終)一一四「菰(こも)積みたる舟のありくこそ、いみじうをかしかりしか」
(ハ) 特に、徒歩で行く、の気持が強い場合。
※虎明本狂言・引敷聟(室町末‐近世初)「あしがひろがったやうで、ありきにくひよ」
※俳諧・曠野(1689)一「めいげつやはだしでありく草の中〈傘下〉」
② 他の動詞に付けて用いる。
(イ) あちこち位置を移動して…する。…しまわる。方々で…する。
※竹取(9C末‐10C初)「ここら舟に乗りてまかりありくに、またかかるわびしき目も見ず」
(ロ) あれこれ心を働かして日を過ごす。しきりにあれこれする。
※大和(947‐957頃)一三「千兼といふ人の妻(め)には、としこといふ人なむありける。〈略〉なくなりにければ、かぎりなく悲しとのみ思ひありくほどに」
[語誌]→「あるく(歩)」の語誌

ある・く【歩】

〘自カ五(四)〙
① 動きまわる。ありく。
(イ) (足を使って、また乗り物を使って) あちこち移動する。また、外出する。人の場合が多いが、人間以外にもいう。
※万葉(8C後)三・四二五「河風の寒き長谷(はつせ)を歎きつつ君が阿流久(アルク)に似る人も逢へや」
※霊異記(810‐824)下「天の下の国を周(めぐ)り行(アル)きて、歌咏(うた)ひて示す。〈真福寺本訓釈 周行 上女具利 下安留久〉」
滑稽本・七偏人(1857‐63)初「おめへたちの唾(つばき)が、霧のやうに家ぢうをまってあるくは」
※思ひ出す事など(1910‐11)〈夏目漱石〉二六「渇よりも恐ろしい餓(ひも)じさが腹の中を荒して歩(アル)く様になった」
(ロ) 徒歩でゆく。歩行する。あゆむ。
※天草本伊曾保(1593)イソポの生涯の事「ヲドッツ ハネツ シテ ヨロコウデ ミチヲ aruita(アルイタ)
※五重塔(1891‐92)〈幸田露伴〉二「首を垂れながら歩行(アル)いて居る」
② 野球で、打者が四球を得て一塁に出る。
③ (比喩的に) 時間・時代の流れとともに、ある過程を経て進む。
※後裔の街(1946)〈金達寿〉四「一つの民族の歩いてきた歴史なのであった」
[語誌]類義語「あゆむ」は一歩一歩の足取りに焦点をあてた語であるが、「あるく」「ありく」は徒歩でなく、車に乗って移動するような場合にも用いられる。また、「あゆむ」が目標を定めた確実な進行であるのに対し、「あるく」「ありく」は散漫で拡散的な移動を表わす。

ほ【歩】

[1] 〘名〙
① あるくこと。また、あるく様子。
※明月記‐治承四年(1180)九月一五日「歩縦容而遊六条院辺」 〔春秋左伝‐定公五年〕
② 物事の推移。あゆみ。
花柳春話(1878‐79)〈織田純一郎訳〉二四「開進の歩頗る迅速にして」
③ 「ほへい(歩兵)」の略。
[2] 〘接尾〙 (上に来る語によっては「ぽ」となる) 歩く時の足を運ぶ回数を数える語。
※光悦本謡曲・仏原(1452頃)「何とかかへす舞の袖、一歩あげざるさきをこそ、仏の舞とはいふべけれ」
※一握の砂(1910)〈石川啄木〉我を愛する歌「たはむれに母を背負ひて、そのあまり軽(かろ)きに泣きて、三歩(ポ)あゆまず」

あゆ・む【歩】

〘自マ五(四)〙
① 足を動かして進む。歩行する。あるく。あゆぐ。あえぶ。あゆぶ。あよぶ。あよむ。→ありく
※万葉(8C後)一四・三四四一「ま遠くの雲居に見ゆる妹がへに何時か到らむ安由売(アユメ)あが駒」
※源氏(1001‐14頃)末摘花「われと知られじと抜き足にあゆみ給ふに」
※天草本伊曾保(1593)獅子と、馬の事「ニュウナンナ フリデ ウマノ ソバニ ayunde(アユンデ) キ」
② 転じて、物事が進行、進展する。
最暗黒之東京(1893)〈松原岩五郎〉一六「一家族が中等の階級より下等に落るの際、〈略〉必らず彼の居食又は売喰といへる一の事実を通じて歩(アユ)むものにして」
[語誌]類義語「あるく」「ありく」が、足の動作にとどまらぬ移動全体を表わすのに対し、「あゆむ」は、一歩一歩足を進めていく動作に焦点がある。

あるき【歩】

〘名〙 (動詞「あるく(歩)」の連用形の名詞化)
① 歩くこと。あちこち動きまわること。また、外出すること。ありき。
※万葉(8C後)一四・三三六七「百(もも)つ島足柄小舟安流吉(アルキ)多み目こそ離(か)るらめ心は思へど」
邪宗門(1909)〈北原白秋〉朱の伴奏・雨のひぐらし「薄ぐらき思のやから、その歩行(アルキ)夜にか入るらむ」
② 江戸時代、村の庄屋に所属した用務者。もっぱら村の内外の連絡事務を受け持ったが、村方三役(庄屋、組頭、百姓代)が制度化する以前は庄屋の補佐役であった所が多く、その頃はこれを散使、肝煎(きもいり)などと呼んだ。ありき。
浄瑠璃津国女夫池(1721)二「双方の庄屋、月行司、村のあるきは棒つきならべ」

あゆ・ぶ【歩】

〘自バ四〙
※百座法談(1110)六月一九日「鵝よろこびて太子のおまへにあゆびいたるに」
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)二「チョッ。さきへ歩行(アユビャア)がれ」
② 同行する。出かける。また、特に、遊里通いする。あよぶ。
洒落本遊子方言(1770)発端「吉原へ行く。あゆばないかとゆったれば」
※滑稽本・七偏人(1857‐63)初「サア一所に往て遣(やる)から歩行(アユビ)なせへ」

ふ【歩】

〘名〙
① 「ふひょう(歩兵)」の略。
※天草本平家(1592)三「ソット fu(フ) ヲ シナヲイテ アソコ ココ ジュウシガコク ホド キリ シタガエテ」
② 将棋の駒の一つ。前に一つだけ動くことができる。敵陣の三段目以内にはいって成れば、金将と同じ性能を持つ成金(と金、と)となる。歩兵(ふひょう)。兵(ひょう)
※咄本・醒睡笑(1628)四「王ゆゑに歩をも馬をもたておきて、かくきゃうの外に使ふ金銀」

あゆび【歩】

〘名〙 (動詞「あゆぶ(歩)」の連用形の名詞化)
① =あゆみ(歩)①②
※洒落本・見通三世相(1796か)序「頗男女後門(おいど)を抓るの戒とせんには、是より近道の済板(アユビ)はなけん」
③ =あゆみ(歩)③⑤

あよ・ぶ【歩】

〘自バ四〙
※宇治拾遺(1221頃)九「聟、顔をかかへて〈略〉臥しまろぶ。鬼はあよび帰りぬ」
四河入海(17C前)二三「小足にあよふ馬に美人たちを騎て」
② 同行する。あゆぶ。
※浄瑠璃・博多小女郎波枕(1718)中「隣が町の会所、サアサアあよびやとわめけ共」

あい・ぶ【歩】

〘自バ四〙 (「あゆぶ(歩)」の変化した語。江戸時代、安永、天明年間(一七七二‐八九)頃の流行語) 歩く。出かける。また、いっしょに行く。
※雑俳・柳多留‐一一(1776)「江戸へあいばんかとつばなうりにいひ」
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)四「うさアねへ。一寸おらが内へ歩(アイ)びねへ。直(ぢき)に此横町だ」

ありき【歩】

〘名〙 (動詞「ありく(歩)」の連用形の名詞化) 歩くこと。特に外出、寺社の参拝、旅行などについていうことが多い。
※書紀(720)雄略元年三月(図書寮本訓)「女子の行歩(アリキスル)に及(いた)りて、天皇、大殿に御(おはしま)す」
※枕(10C終)八八「后の昼の行啓。一の人の御ありき。春日詣」

ほ‐・す【歩】

〘自サ変〙
① あるく。あゆむ。歩行する。
※花柳春話(1878‐79)〈織田純一郎訳〉一「尚ほ能く四里程の遠きを歩するを得べきや」
② 漢詩で、他人の詩の韻字を用い、それに和して詩を作る。次韻(じいん)する。和韻(わいん)する。

あよ・む【歩】

〘自マ四〙 =あゆむ(歩)
※大唐三蔵玄奘法師表啓平安初期点(850頃)「婆陁とあれとも陟(アヨ)むべし」
※花鏡(1424)時節当感事「橋がかりにあよみとまりて」

あよみ【歩】

〘名〙 (動詞「あよむ(歩)」の連用形の名詞化) =あゆみ(歩)
※発心集(1216頃か)五「ひま行く駒はやくうつり、羊の歩(アヨミ)屠所にちかづけば」

あゆ・ぐ【歩】

〘自ガ四〙 =あゆむ(歩)
※源家長日記(1216‐21頃)「かかる御代にむまれあひて侍と、あゆくあしごとにつぶつぶと同じ事をよろこびてまかり出でぬ」

ええ・ぶ【歩】

〘自バ四〙 (「あゆぶ(歩)」の変化した語。「えいぶ」とも) あゆむ。行く。
※洒落本・青楼楽美種(1775)発端「付合の悪い。一っしょにゑゑばっせヱ」

あゆまい あゆまひ【歩】

〘名〙 歩きぶり。足の運び方。
※源氏(1001‐14頃)行幸「おももち、あゆまひ、大臣と言はむに足らひ給へり」

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デジタル大辞泉 「歩」の意味・読み・例文・類語

ほ【歩】[漢字項目]

[音](漢) (呉) (慣) [訓]あるく あゆむ
学習漢字]2年
〈ホ〉
あるく。あゆむ。足の運び。「歩行歩調歩道闊歩かっぽ牛歩競歩散歩譲歩酔歩速歩徒歩独歩漫歩遊歩五十歩百歩
物事の進み方。程度や段階。「国歩初歩進歩退歩地歩
〈ブ〉割合。率。「歩合ぶあい日歩ひぶ
〈フ〉将棋の駒の一。「歩兵ふひょう二歩
[名のり]すすむ

ほ【歩】

[名]
歩くこと。また、その足の運び方。「を合わせる」「を急がせる」
物事が進んでいくこと。物事の進行。「着々と開発のを進める」
[接尾]助数詞。歩くときの足を運ぶ回数を数えるのに用いる。上に来る語によっては「ぽ」となる。「一前進、二後退」
[類語]歩み歩行徒歩あんよ

ぶ【歩】

土地の面積の単位。普通は6尺四方をいい、約3.3平方メートル。つぼ
長さの単位。1歩は6尺で、約1.8メートル。
町・段などの下に付けて、端数のないことを示す。「五段の畑」
《「」から転じて》
㋐元金に対する利息の百分比。歩合。また、金利。
㋑特に、貸し借りの金利息。
「借銀の―を取り」〈浮・新永代蔵〉
2

ふ【歩】

《「歩兵ふひょう」の略。雑兵の意》将棋の駒の一。縦に一つずつ前進でき、敵陣の三段目以内に入って成ると、「と金」と称して金将と同格になる。

ぽ【歩】

[接尾]ほ(歩)」に同じ。「五十

ぶ【歩/捕/蒲】[漢字項目]

〈歩〉⇒
〈捕〉⇒
〈蒲〉⇒

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改訂新版 世界大百科事典 「歩」の意味・わかりやすい解説

歩 (ぶ)

尺貫法における面積の単位。坪ともいい,地積を表すための基本単位である。古代中国から,また日本においても大宝令以前から用いられた。1891年の度量衡法では6尺四方,すなわち36平方尺に等しく,約3.306m2である。倍量単位は30歩の畝(せ),10畝の段(たん),10段の町,分量単位は1/10歩の合(ごう),1/10合の勺(しやく)である。尺貫法の廃止で,1966年4月以降法定単位ではなくなった。歩は本来距離の単位で,左右の足を1回ずつ運んだ距離であり(その半分は跬(けい)),それと尺との関係には変遷があったが,方1歩の歩の大きさの実態はさほど変化しなかったといわれる。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「歩」の意味・わかりやすい解説


中国起源の長さおよび面積の単位。人間の歩幅で2歩(ほ)分の長さと、2歩分四方の面積に始まる。周代に1歩は6尺と定められ、土地を測る尺度の基準となった。これで測定された面積の数値は土地に定着し、その後王朝の交替とともに公定の尺が変化しても面積1歩の大きさはそれほど変化していない。日本に入った歩は唐制の大尺によったので、中国の歩より大きい。

 また、唐制以前に高麗尺(こまじゃく)の5尺平方の歩があったという記事が『政事要略』にみられるが、高麗尺の1尺は唐大尺の1尺2寸にあたるので、歩の実体は変わらない。実際の検地や測量には、いろいろな条件を見込んだ間尺(けんじゃく)が用いられたので、表示面積と実面積は一般的には一致しない。間尺は古くは6尺5寸、太閤(たいこう)検地で6尺3寸、江戸時代には6尺とされた。しかしこれも名目だけで、全国各地に6尺5寸四方の歩が定着している。歩はまた坪ともよばれているが、どの時代からそういわれたのかははっきりしない。

[小泉袈裟勝]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「歩」の意味・わかりやすい解説


土地面積の単位。大化改新の際,高麗尺 (こまじゃく) (曲尺〈かねじゃく〉の約 1.176尺=35.6cm) で5尺平方を1歩とし,のち6尺平方を1歩に改めたが,大宝令では大宝大尺 (高麗尺) で5尺平方を1歩とした。和銅6 (713) 年には,和銅大尺 (曲尺 0.978尺) で6尺平方を1歩とし,以来これが基準とされ,戦国時代にいたった。豊臣秀吉の太閤検地では曲尺 (1尺=30.3cm) で6尺3寸平方を1歩としたが,江戸時代には6尺平方を1歩とし,明治にいたった。坪ともいう。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「歩」の解説


土地の面積を表す単位。古代中国の周で使われていた単位。日本では古くは高麗尺(こまじゃく)5尺平方あるいは6尺平方を1歩とする方法があったが,713年(和銅6)の唐尺採用後は唐尺の6尺平方をもって1歩とし,360歩を1段(たん)とする面積単位が定着した。戦国期には6尺5寸平方を1歩としたこともあったが,太閤検地の際に6尺3寸平方を1歩とし,300歩を1段とする換算方式に統一された。江戸時代には6尺平方を1歩とするようになり,30歩=1畝,10畝=1段という町段歩(ちょうたんぶ)制が確立した。歩は坪ともいわれ,1歩(坪)は約3.3m2に該当。

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百科事典マイペディア 「歩」の意味・わかりやすい解説

歩【ぶ】

尺貫法の面積の単位。6尺四方つまり3.3058m2。坪と同じで,山林・田畑に用いる。中国から伝わり701年大宝令で確定,1891年度量衡法でメートル法に基づき再決定。尺貫法の廃止で,1966年4月以降法定単位ではなくなった。
→関連項目

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単位名がわかる辞典 「歩」の解説

ぶ【歩】

土地の面積の単位。6尺平方を1歩とする。約3.31m2。中国、日本とも、8世紀以前から使われていた。◇名称は、人が動ける1歩四方の広さにちなむ。「坪」ともいう。

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デジタル大辞泉プラス 「歩」の解説

歩(ふ)

日本のポピュラー音楽。歌は男性演歌歌手、北島三郎。1976年発売。作詞:関沢新一、作曲:安藤実親。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【度量衡】より


[起源]
 度量衡の起源は大別して次の五つに含まれるであろう。(イ)腕や足の長さ,腰まわりなど,人体の諸部分の寸法,(ロ)穀粒の長さや質量など,自然物のサイズ,(ハ)たる1杯の体積など,道具のサイズ,(ニ)1日に歩くことのできる道のり,半日で耕すことのできる農地の面積など,人や家畜の能力,(ホ)特定の周波数の音を発する笛の長さなど,物理法則。いうまでもなく現今の精密測定の基準とする諸単位は,もっぱら(ホ)に着目する方法で厳密に定義されるが,史上の度量衡の名称や実体を理解するためには,(イ)~(ホ)にも注意する必要がある。…

【間】より

…その起源は定かでないが,日本では中世以来測地用の慣用単位であり,その大きさは太閤検地の際は6尺3寸,江戸時代は6尺1分であったという。1891年制定の度量衡法では6尺(約1.818m)=1間,60間=1町,36町=1里とし,1間四方の面積を1歩(坪)とした。間はまた,中国古来から,柱と柱の間隔をいい,部屋や家屋の広さを表すのに用いた。…

【検地条目】より

…太閤検地も当初はまだ従来の慣習を踏襲するところがあったが,数年の施行過程をへてしだいに統一規準を設ける方向にすすみ,1589年(天正17)には検地条目の体裁をもった秀吉朱印状が出された。これは5間×60間=300歩を1反とすること,上田は京枡1石5斗(約270.6l),以下2斗(約36.1l)下り,上畑は1石2斗,以下2斗下りなどの斗代とすること,検地役人の非法禁止など,将来の検地条目の根幹となる内容5ヵ条からなっている。その後検地条目は毎年のように出されていき,最もまとまった94年(文禄3)の12ヵ条に至っている。…

【代分け】より

…したがってその歴史は古い。代という言葉は,東北から紀伊の太平洋岸で多く使われているが,その同義語には能登などの日本海岸や四国で使用されている歩(ぶ),九州以南で使用されているタマス,ほかにアタリ,メーテなどがある。 各地の漁村で行われる代分けには,漁業組織,漁労実態,漁民の生態を反映してさまざまの形態がみられる。…

【坪】より

…尺貫法における面積の単位。歩(ぶ)ともいい,1891年制定の度量衡法では,6尺四方,すなわち36平方尺に等しく,約3.306m2である。分量単位は1/10坪の合(ごう),1/10合の勺(しやく)である。…

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