有毒のヘビ・トカゲ類にみられる大型のとがった歯で,注射針のような管状のきばと,溝を備えたきばがある。いずれも獲物の体につきたてられたとき,その管や溝を通じて毒液が注入される。最も発達した毒牙はクサリヘビ科のヘビ類(クサリヘビ,マムシ,ハブ,ガラガラヘビなど)にみられる管牙である。注射針状のこの毒牙は左右の上顎(じようがく)骨に1対生えていて,毒腺からの管とつながっている。また,コブラ科,ウミヘビ科のヘビ類では上顎骨の前方に1対の溝を備えた毒牙(溝牙)が存在し,毒腺と管でつながっている。後牙類の毒ヘビでは,ふつう複数の溝牙が上顎骨の後方にあって,毒腺は毒牙とは直接つながっておらず,流れ出した毒液は毛管現象によって毒牙の溝に吸い上げられる。ドクトカゲ類では毒牙は後牙類のヘビと同じものだが,ヘビ類と異なり毒腺が下顎に存在するため,下顎の毒牙がよく発達している。これらの毒牙は交換歯を備えていて,抜け落ちると新しいきばと交代する。
執筆者:疋田 努
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
爬虫類(はちゅうるい)の毒ヘビやドクトカゲに特有な大きく鋭い歯で、これにより毒を敵の体内に注入する。毒ヘビでは上顎骨(じょうがくこつ)に左右1本ずつ毒牙があり、普段は口の中で後方に倒れているが、口を開くと自動的に立ち上がる。この牙(きば)は上端が毒腺(どくせん)と連絡していて、分泌された毒液はその前面を縦走する溝、または溝が閉じた管の中を流れて、先端から敵に注ぎ込まれる。溝のある牙は溝牙(こうが)(ウミヘビやコブラの毒牙)、管のある牙は管牙(かんが)(マムシやガラガラヘビの毒牙)とよばれる。また、ドクトカゲの牙は下顎にあり、前後両面に溝のある溝牙である。
[内堀雅行]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…一般に攻撃や防御の武器として用いられる。爬虫類では毒蛇の毒牙がよく知られる。これらの毒牙はほおの毒腺につながり,毒液を獲物や敵の体内に注入する注射器として働く。…
※「毒牙」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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