船舶火災や沿岸の火災、水難救助などに備えて地方自治体および海上保安庁に所属している船舶。年々大型タンカーや船舶の各種事故が増加しており、火災だけでなく、衝突による油の流出防除、あるいは溺水(できすい)者の救助や浸水船の排水作業など、多方面にわたる消防活動にあたっている。消防艇の特徴は水を大量に使用できることで、水圧を利用して駆動する放水銃、放水砲により強力放水を行うほか、泡放射も行うことができ、沿岸の石油コンビナート施設等の火災や船舶火災に大きな力を発揮する。また、タンカーによる油流出事故に備え、流出油拡大防止用オイルフェンス(ウレタンや浮き袋状のものでつくる壁)や流出油を処理する中和剤も装備している。駆動はエンジンの回転力によるものが多いが、最近ではポンプを回し、排水の水圧を利用(ターボジェット方式)したものもあり、速力は5~30ノットである。東京、千葉、横浜、神戸、大阪などに配置されている。
[東京消防庁・窪田和弘]
船や構造物の火災時に海上において消火活動を行う船。日本では海上保安庁や各都市などに所属している。総トン数50~100トン級(長さ約20~25m)の小型のものが多いが,大規模火災に対処するため150トン級大型消防艇や200トン級大型双胴消防船が建造されている。消防装置として消防ポンプのほか,放水装置と化学消防装置をもつ。艇中央部の放水塔や船上の各所に設けられた数基の放水砲(モニター)から放水を行うが,伸縮放水塔や屈折放水塔を装備し,水面上約20mの高所から放水できるようにしたものもある。化学消防装置としては,油火災に対処する泡原液,粉末消火装置,油流出処理剤をもち,艇によってはオイルフェンス展張装置も積んでいる。高速性や放水時の船位保持などの操縦性能が重要視されるため,3機3軸船とし,消防活動時には中央機で消防ポンプを駆動,両玄機で位置保持を行うようにした艇もある。
執筆者:国武 吉邦
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…また救急業務の主力である救急車は33年に横浜市,翌年に名古屋市が採用したのに続き,東京では横浜・名古屋や欧米各国の救急車等を参考として,アメリカのダッジ・ブラザース社の車体に艤装(ぎそう)したものを34年に採用し,業務を開始している。一方,水上における船舶火災や港湾,河川沿岸の火災を鎮圧するための水上消防は,東京では36年に東京市連合防護団寄贈の1艇の消防艇を運用したことに始まり,現在は火災鎮圧のほか水上の人命救助,浸水船の救護および排水作業などをおもな任務としている。またヘリコプターの採用は,東京が66年にフランスのシュド社からアルウェットIII型を購入したことに始まっている。…
※「消防艇」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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