薫製(読み)くんせい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「薫製」の意味・わかりやすい解説

薫製
くんせい

魚貝類、畜肉鳥肉などを塩蔵し、薫煙を当てて乾燥したもの。原料はサケ、マス、ニシン、サバ、タラウナギ、畜肉、とり肉、チーズ、卵など。薫煙することにより、薫煙中のフェノール類、アルデヒド類、酸類など防腐効果を有する成分が食品に吸着され、食品についている細菌発育を阻止したり、死滅させる。また、焙乾(ばいかん)により水分が減少し、細菌が発育できなくなる。なお、薫煙中のフェノール成分は製品に含まれる油脂の酸化を防止するので、薫製品中の油は酸化しにくい。

[金田尚志]

製法

冷薫法、温薫法などがある。このほか液薫法、電薫法などもあるが、現在ほとんど行われていない。冷薫法は40℃以下で水分40%以下になるまで数週間かけて行う方法。温薫法は90℃以下で水分50~55%まで、数日、場合によっては数時間薫煙を当てる。冷薫は長期間貯蔵できるが、温薫は水分が多く貯蔵性がないため低温で保存する。液薫法は液体薫製法の略で、木材の乾留により得られる木酢(もくさく)液を再留し、フェノール類やその他薫製を思わすにおい区分を集め、これに塩蔵した原料を浸漬(しんし)する方法。実際に薫煙を当てたものに比べ味が劣るため現在は行われていない。ただし、安価なソーセージハム、とくに魚肉を原料としたものは木酢液を練り込み、薫煙臭を付与している。電薫法は放電を行い薫煙粒子を荷電させ原料への付着を促進させる方法。薫煙のロスが少なく、薫煙時間が短縮できるが、製品の風味が劣るので現在行われていない。薫材には、カシナラカシワクヌギカエデなど樹脂の少ない堅木がよい。日本ではサクラ、アメリカではヒッコリーなども使う。

 魚は薫煙を生ずる炉の上で直接煙を当てる伝統的な方法が多いが、ハム、ソーセージなどは薫煙発生機でつくった煙を薫煙室にパイプで導き薫製する。冷薫サケはえら、内臓を除いたサケ(主としてベニザケ)を20%の食塩で10日程度塩蔵したのち、流水中で塩抜きし、水切り後、薫煙室で薫乾する。1週目は18~25℃ぐらいから始め、3週目は23~25℃ぐらいまで温度をあげる。約1か月で製品となる。ベニザケ温薫は軽く塩したものを50~80℃で2時間程度薫煙を当てたものがうまい。カキ、ホタテガイの貝柱などは薫煙を当てたのち、油漬け缶詰とする。オードブルとして喜ばれる。イカやタコは調味液に漬けたものを薫製にし薄く切る。ハムのうち骨付きハムは15~30℃で4~5日、ボンレスハムは40℃で10~24時間薫煙に当てる。

 冷薫したものは一般に水分40%以下なので貯蔵性があるが、水分の多い温薫は冷蔵貯蔵する必要がある。

[金田尚志]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「薫製」の意味・わかりやすい解説

薫製
くんせい
smoke preserving

塩漬にした肉類,魚類などを薫煙の中で乾燥させた貯蔵食品。乾燥中に薫煙を吸収するので独特の香りを帯びる。薫製の方法には冷薫,温薫,液薫,電薫などがある。長期貯蔵に耐える冷薫は塩蔵した魚を 20~30℃で1~3週間薫煙する。温薫は塩分を少くした魚肉や,ハム,ベーコンなどを 50~70℃程度で短時間 (3日以内だが数時間のこともある) 薫煙する。防腐効果が少く保存期間は短くなるが,適度の軟らかさを保ち,味はかえってよいとされる。液薫は液体薫製法ともいわれ,木材を乾留するときに得られる木酢液を精製し薄めて,これに魚肉などを漬けておいて乾燥する方法。味はやや落ちるといわれる。電薫は高電圧でコロナ放電を発生させてその中を薫煙を通過させ,イオン化されて帯電した煙の粒子を魚肉などに電気的に吸着させる。水分が多く残るため保存性は低い。薫煙に用いられる木材はかし,くぬぎ,なら,けやき,かしわなどで,薫製の材料になる魚はさけ,ます,たら,にしんなどが多い。

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