銀杏・公孫樹(読み)いちょう

精選版 日本国語大辞典 「銀杏・公孫樹」の意味・読み・例文・類語

いちょう イチャウ【銀杏・公孫樹】

〘名〙 (「鴨脚」の唐宋音の変化した語)
① イチョウ科の落葉高木。真の自生と確証される生育地は発見されていないが、中国原産と推定され、日本には古く渡来し、各地で街路樹、防火樹、庭木とする。高さ三〇メートル、直径二メートルに達し、古木にはしばしば乳といわれる大きな気根が垂れる。葉は長い柄をもち扇形で、先端は波状、しばしば中央でさまざまな深さに裂け、秋、黄葉する。雌雄異株で、花は春新葉と共に咲く。雄花は淡黄色で短い尾状の穂となり、雌花は緑色で直径三ミリメートルほどの裸の胚珠を二個もつ。花粉は胚珠内で夏を越し、九月頃花粉管を伸ばし、その中にできた精虫が泳ぎ出て受精する。種子外種皮が肉質で黄褐色となり悪臭がある。内種皮は白色で堅く二~三稜があり、中身を食用とする。材は淡黄色で建築、器具、彫刻材などとする。ぎんなんのき。ちちのき。
▼いちょうの花《季・春》
▼いちょうの実《季・秋》
※宗長日記(1530‐31)「あづさ弓いちゃうの本のうすくこき落葉をかぜにひろはせぞやる」
※左千夫歌集(1920)〈伊藤左千夫〉明治三五年「岡のべの銀杏のもみぢ朝晴に色いちじろく空しぬぐ見ゆ」
② 形が①の葉に似た矢の根。
大根などを薄く輪切りにし、それを四分の一に切ること。また、その切ったもの。いちょうぎり。〔古今料理集(1670‐74頃)〕
浄瑠璃・曾我五人兄弟(1699頃)道行「かみはいてふかたてかけか」
⑤ 紋所の名。①の葉を図案化したもの。
⑥ 江戸中村座のこと。隅切り角銀杏鶴の櫓紋であったところからいう。
※雑俳・柳多留‐五三(1811)「橘といてうで二丁おっふさぎ」
[補注]歴史的かなづかいは江戸時代以来「いてふ」と書かれたが、近年、語源の研究から「いちゃう」が正しいとされる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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