コスモス(英語表記)kosmos

精選版 日本国語大辞典 「コスモス」の意味・読み・例文・類語

コスモス

[1] 〘名〙
① (kosmos) ギリシア神話で、秩序整然とした調和ある世界。宇宙。秩序。⇔カオス
※真理一斑(1884)〈植村正久〉一「蓋宇宙は井然たる秩序にて充満したるものなり。西人が之を『コスモス』と名け」
② (cosmos) キク科の一年草。メキシコ原産で、日本へは明治二〇年(一八八七)ごろ渡来し、観賞用に広く栽培される。茎は直立して高さ一~二メートルになる。葉は線形の裂片に細かく分かれた二回羽状で対生する。夏から秋にかけて、茎頂に、八個の舌状花と細い管状の中心花からなる径約六センチメートルの花が咲く。花は白・紅・淡紅・紅紫色、また、大輪咲き・八重咲きなどで多くの園芸種がある。おおはるしゃぎく。あきざくら。《季・秋》
※伶人(1906)〈金子薫園〉「こすもすの花はあるじが歌の趣と人の苦吟を笑むや宵の灯」
[2] (Kosmos) ロシアが一九六二年以来打ち上げている、宇宙ロケットおよび人工衛星シリーズの名。

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デジタル大辞泉 「コスモス」の意味・読み・例文・類語

コスモス


《〈ギリシャkosmos》秩序整然とした統一体としての、宇宙。または、世界。
秩序。調和。⇔カオス
《〈ラテン〉cosmos》キク科の一年草。高さ1.5~2メートル。葉は細かく羽状に裂ける。秋、白色や紅色の花を開く。メキシコの原産で、観賞用。アキザクラオオハルシャギク 秋》「―を離れし蝶に谿たに深し/秋桜子
《〈ロシア〉Kosmos》旧ソ連ならびにロシア連邦の軍事用衛星の名。第1号は1962年3月に打ち上げられた。
[補説]書名別項。→コスモス

コスモス【Cosmos】[書名]

米国の天文学者・SF作家、セーガンの著書。1980年に自身が監修・司会進行し、米国で放送された同名の宇宙に関するドキュメンタリー番組を書籍化したもの。日本での放映時の番組名は「コスモス(宇宙)」。
短歌雑誌。昭和28年(1953)、宮柊二の責任編集で創刊。

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改訂新版 世界大百科事典 「コスモス」の意味・わかりやすい解説

コスモス
kosmos

整然たる秩序としての世界を表すギリシア語で,その反意語は,世界の生成以前の混沌を表すカオス。このコスモスという語は,今日では一般に,価値的な観点と融合した,あるいはまだそれから全面的には脱却していない近代以前の世界像を指すのに用いられる。この語は元来〈整頓〉〈装飾〉〈秩序〉を意味する言葉で,英語cosmeticが化粧品の意であることにうかがえるように,女性が服飾や化粧で装いを凝らした状態や,軍隊や社会の規律や秩序を表現するために使われたが,後に自然界の秩序立った様相を示すのに転用され,ついには〈世界の秩序〉あるいは秩序の貫徹した〈世界〉そのものを意味する語へと変貌を遂げていった。ラテン語でほぼ同じ意味の語mundusが〈世界〉を表すために用いられるようになったのも,最初はこのギリシア語の訳語としてであり,とくにキケロルクレティウスの著作を通してこの用法がラテン世界に普及していったといわれる。

 コスモスという語を上記の秩序ある世界の意味で用いた最古の文献として知られているのは,紀元前5世紀の前半に活躍したヘラクレイトスの断片である。だが文献としてはなんら伝えられていないが,古代の信頼しうる伝承によれば,その1世代前のピタゴラスの思想にすでにその先例があったといわれる。実際ピタゴラスの世界像はまさにコスモスとしての性格を十分に備えたものであった。というのは,数学的な原理を事物の本質とした彼は,立体図形の中で最も完全なものが球であるという審美的な理由によって,世界と地球とに球形性を付与しただけでなく,恒星天と7惑星がそれぞれ固有の回転運動によって地球のまわりを回りながら,その速度に対応する楽音を発し,これらの音が全体としてたえなるハーモニー調和)を構成するとみなしたからである。観測天文学の新しい成果を取りこみながら,このピタゴラス的なコスモスの思想をさらに一歩推し進めたのがプラトンである。天界を神的な存在としたプラトンは,天界にふさわしい唯一の運動は一様な円運動であり,惑星の順行,逆行,留等のみかけの不規則性をこの一様円運動の原則から逸脱せずにいかに説明するかという問題を提起した。エウドクソスカリッポスが考案した幾何学的な同心天球説はこの問題提起に対する一つのみごとな解答であった。その後アリストテレスは同心天球説に依拠しながら,階層構造的に秩序づけられたコスモスとしての宇宙論を完成させた。そしてアリストテレスの宇宙論は,古代末期プトレマイオスの練りあげた離心円・周転円の天文学によって部分的に修正を受けながらも,その後2000年近くもの間,ローマアラビア,ヨーロッパへと受け継がれながら,つねに支配的な地位を確保することになる。これが解体を始める契機となったのは,16世紀中葉にコペルニクスの提唱した地動説であるが,世界像が価値的な観点から完全に脱却するには,デカルトの出現を待たねばならなかった。ケプラーはむろんのこと,ガリレイの世界像にもまだ伝統的なコスモスとしての世界の残滓がかなり残されていたのである。
宇宙
執筆者:

コスモス
Cosmos

キク科の一年草。メキシコを主として熱帯アメリカに原産するコスモスは25種を超えるが,園芸種の基礎となったのは次の2種である。

(1)コスモス(和名アキザクラ,オオハルシャギク)C.bipinnatus Cav. 秋に群生して咲く様子がサクラの花に見えるので秋桜の名があるように,基本種は短日で花芽を分化するため,10月に開花する。コロンブスのアメリカ大陸発見後,ヨーロッパに入り,しだいに改良され庭園や切花に栽培されるようになった。草丈1~2m,茎は太く多数枝を分け,葉は対生で2回羽状複葉,裂片は線形。頭状花は総苞につつまれ,8枚ほどの紅,ピンク,白の幅広い舌状花をつけて秋に咲くが,園芸変種には八重咲き,丁字咲きなどがある。またアメリカで作出された早咲種はアーリー・センセーションEarly Sensationと名づけられ,播種(はしゆ)後60日で咲く。この色変りにピンクに暗紅色の目があるラデアンスRadianceが生まれ,さらにこの四倍体ベルサイユVersaillesが育成されて,周年コスモスが咲くようになった。

(2)黄花コスモスC.sulphureus Cav. メキシコからブラジルにかけて原産する一年草で,高さ1~2m,葉は2~3回羽状複葉で9~10月に黄色の8枚弁の頭状花をつける。改良された品種では高さ1m,花色は橙黄色,黄,淡黄色などの一重,八重咲きになり,8月咲きとなった。さらに美しい緋紅色のサンセットSunsetやディアボロDiaboloが作出されている。いずれも一年草で日当りと排水のよい場所に春まきとして育てる。早咲きコスモスは1~2月に温室にまけば3~4月に開花するので,鉢植えや切花に利用する。秋咲種は花壇や庭には遅くまいて草丈を低く咲かせるほうがよい。
執筆者:


コスモス

短歌雑誌。1953年3月創刊。宮柊二(みやしゆうじ)編集。北原白秋創刊の《多磨》解散後,この系列の歌誌として登場。宮は〈作品によって生を証明する〉という態度をとり,今日までの基本理念としている。現実主義的傾向をもつ個性的な抒情性を作風とする。〈戦後短歌史〉〈抒情〉〈伝統〉などをテーマに共同研究,また公開詩歌講演会を開いたり,会員の研究,評論活動が活発である。現在3000名以上の会員をもつ大結社となっている。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「コスモス」の意味・わかりやすい解説

コスモス
こすもす
cosmos
[学] Cosmos bipinnatus Cav.

キク科(APG分類:キク科)の春播(ま)き一年草。アキザクラ(秋桜)、オオハルシャギク(大春車菊)ともいう。メキシコ原産。草丈は2メートルほどになり、葉は対生し、細く裂けた羽状葉をつける。花は茎頂につき、桃、赤、白色などがあり、径6~8センチメートルで、一重のほか中心部の管状花が発達した丁字(ちょうじ)咲きや八重咲きがある。元来は短日植物で秋に開花する花であるが、最近は改良が進み、日長に関係なく播種(はしゅ)後70日ほどで開花する早咲き品種がつくられ、センセーション、ラジアンス、ベルサイユなどが代表品種である。

 日当りと排水のよい所ならどこでも簡単につくれる。播種は5月上・中旬、気温が安定したころ、播床を均一にならし、30センチメートル間隔に3~5粒播きとし、軽く覆土する。また8月下旬から9月上旬ころに播種すると短日により草丈が短く育つ。この場合、やや厚播きにするとよい。発芽幼苗期にネキリムシの被害が出やすいので注意を要する。

 コスモス属ではこのほかにキバナコスモスC. sulphureus Cav.がよく栽培される。春播き一年草で、コスモスに比べ草丈は短く、葉幅は広く、色は黄、橙(だいだい)、赤などで、半八重咲きである。草丈50センチメートルほどの極矮性(ごくわいせい)種もある。近年とくに日本で品種改良が進み、秋にこぼれ種で発芽、開花する年2回咲きの品種もつくられている。

[金子勝巳 2022年2月18日]

伝播

コスモス属は、アメリカのアリゾナから南米ボリビアに至る広い地域に約30種が分布するが、花卉(かき)としてのコスモスはメキシコに起源する。1789年、スペインから派遣された植物調査隊のビセンテ・セルバンテスは、マドリードのホセ・カバニエス神父に未知のキク科の種子を送った。神父はそれを栽培し、コスモスの名を与えた。日本には幕末に渡来したが、本格的に広がったのは1909年(明治42)、文部省が全国の小学校に栽培法を付して配布してからである。

[湯浅浩史 2022年2月18日]


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百科事典マイペディア 「コスモス」の意味・わかりやすい解説

コスモス

アキザクラとも。メキシコ原産のキク科の春まき一年草。高さ1〜2mになり,2回羽状複葉で,裂片が線形の葉を対生。秋,径5〜7cmの頭花を開く。中心の筒状花は黄色で,まわりの舌状花は普通8個で,白,ピンク,紅色,蛇(じゃ)の目や覆輪模様になるものもある。八重咲,コラレット咲,大輪咲,または舌状花が管状になるものや,夏前に開花する早咲の園芸品種がある。花壇や切り花に利用される。メキシコ原産の一年草キバナコスモスは別種で,葉の裂片が幅広く,舌状花が黄またはだいだい,朱赤色。切り花,あるいは矮(わい)性品種が花壇や鉢植に利用されている。両種とも栽培は容易。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コスモス」の意味・わかりやすい解説

コスモス
Cosmos bipinnatus(Cosmea bipinnatus); cosmos

キク科の一年草でメキシコ原産。観賞用として花壇などに栽植される。日本には明治の初期に伝えられた。いまでは代表的な秋の草花であり,また各地で逸出して野生状態になっている。高さ1~2mに達し,葉は対生で2回羽状に分れ,裂片は線形である。秋に,茎の上部から出た枝の先端に径4~8cmの頭状花がつく。花色は白色または淡紅色でときには深紅色のものもあり美しい。頭状花の周辺にある8個の舌状花が大きく,中心部には多数の管状花が集り結実する。元来春まき秋咲きの一年草であるが,品種改良され多くの品種があり,八重咲きの品種もつくられている。

コスモス
Kosmos

ソ連の宇宙空間観測衛星の総称。 1962年以降にソ連で打上げられた衛星のシリーズ名で,最初の 10年間で 500個を数え,72年以降は,毎年平均して約 90個以上が打上げられており,全体では 2000個をこえている。コスモスは,大気圏物理,地磁気等に関する科学研究や技術開発を行なっているほか,軍用の偵察衛星も含まれている。 78年には原子炉を積んだ軍事衛星がカナダに落下して問題となった。また,コスモスの名で試験し,実用化されている衛星には,別の名前がついており,通信衛星モルニヤや気象衛星メテオールなどがある。

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デジタル大辞泉プラス 「コスモス」の解説

コスモス〔生活用品〕

ポピー製紙が販売するトイレットペーパーの商品名。古紙を使用。ダブル2枚重ね、12ロール入り。

コスモス〔チェーン店〕

コスモスジャパン株式会社が展開するコンビニエンスストアのチェーン。主な出店地域は関東地方。

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世界大百科事典(旧版)内のコスモスの言及

【宇宙】より

…以下にその成立史を概観してみよう。
〔宇宙観の変遷〕
欧米語で宇宙に相当する基本概念は,〈コスモス〉であるが,この語はギリシア語のkosmosに由来する。元来は〈秩序〉,もしくは〈秩序正しい状態〉を意味し,カオスchaos,すなわち〈混沌〉に対立する。…

【ギリシア哲学】より

…その一つの全体とは《ティマイオス》における宇宙である。その宇宙は渾沌一体というような原始風景を示すものではないが,人間をも含んだ秩序正しい区分のある一つの統一体,すなわちコスモスkosmosである。 さらにまたアリストテレスは,人間が石を見たり,知ったりするのは魂の中に石ころがあるためなのかとエンペドクレスを揶揄(やゆ)している。…

【宇宙】より

…以下にその成立史を概観してみよう。
〔宇宙観の変遷〕
欧米語で宇宙に相当する基本概念は,〈コスモス〉であるが,この語はギリシア語のkosmosに由来する。元来は〈秩序〉,もしくは〈秩序正しい状態〉を意味し,カオスchaos,すなわち〈混沌〉に対立する。…

【ギリシア哲学】より

…その一つの全体とは《ティマイオス》における宇宙である。その宇宙は渾沌一体というような原始風景を示すものではないが,人間をも含んだ秩序正しい区分のある一つの統一体,すなわちコスモスkosmosである。 さらにまたアリストテレスは,人間が石を見たり,知ったりするのは魂の中に石ころがあるためなのかとエンペドクレスを揶揄(やゆ)している。…

【バロック】より

…このジャンセニストの教えは,人間の自然性を激しく糾弾しているものの,これほどまでに自然性を問題にせざるをえないところに,やはり近代的カトリックとしてのよじれがあるのである。
[コスモスの崩壊]
 そこでこんどは科学革命がもたらした動的宇宙像であるが,これはコペルニクス,ブルーノ,ケプラー,ガリレイ,ニュートンなどといった人々によって担われた。この動的宇宙像は,かつての静的宇宙像としての〈コスモス〉の崩壊,つまり完結し秩序立ったものとしての宇宙の崩壊を意味する。…

【多磨】より

…伝統文学の幽玄と明治の象徴主義を合わせた〈新幽玄〉〈新象徴〉を理念に,時代の復古的な機運に乗って,たちまち《アララギ》と歌壇を二分する新勢力をなした。白秋没後は門下によって運営されたが,52年に解散,木俣修の《形成》,宮柊二の《コスモス》などに分かれた。【河村 政敏】。…

※「コスモス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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