斗代(読み)とだい

精選版 日本国語大辞典 「斗代」の意味・読み・例文・類語

と‐だい【斗代】

〘名〙
中世、田畑一段あたりの租税の額。たとえば、一段につき五斗収めるときは五斗代という。
東大寺文書‐四ノ九〇・久安五年(1149)五月六日・東大寺僧覚仁・伊賀国目代中原利宗問注記案「於斗代之事者、度々有相論り」
② 太閤検地以降江戸時代、田畑一段につき上中下各何斗と公定された標準収穫高。上田一反歩の斗代は一石五斗、中田以下二斗下りを普通とした。斗台盛(とだいもり)。→石盛(こくもり)
浅野家文書‐(天正一八年)(1590)八月一二日豊臣秀吉朱印状「其許検地之儀、一昨日如仰出、斗代等之儀」
近世米穀を貸付けるときの利率
梅津政景日記‐慶長一七年(1612)四月二一日「我等口合にて、御蔵之米弐拾表かし申候、いまた斗代は不知」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「斗代」の意味・読み・例文・類語

と‐だい【斗代】

中世、田畑一段について何斗と定めた租税の率。
江戸時代、上・中・下各等級ごとの田畑一段当たりの公定標準収穫高。石盛こくもり

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「斗代」の意味・わかりやすい解説

斗代 (とだい)

(1)中世における田畠1段あたりの年貢(官物)収納高のこと。たとえば,1段につき5斗納めるときは五斗代という。平安時代後期の田の斗代は3斗が標準であったが,鎌倉時代にかけて高くなる傾向にあり,1318年(文保2)の東寺領丹波国大山荘一井谷では,上田段別7斗5升,中田5斗7升,下田4斗5升であった(〈東寺百合文書〉)。畠地については詳細は不明だが,平安時代後期では田の3分の1(約1斗)が標準であった。(2)江戸時代になると転じて公定収穫高(石盛)と同義に用いられるようになった。普通,上田1反歩の斗代は1石5斗で,中田以下はそれぞれ2斗減であった。しかし,〈斗代といふは石盛の異名に候得共,百姓反取候事迄も斗代と唱違也〉(《地方要集録》)といわれるように,村方では〈反取〉(年貢収納高の一種)を斗代という場合も多く,2様の意味で混用されていたと思われる。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「斗代」の意味・わかりやすい解説

斗代
とだい

鎌倉・室町時代の田畑一段当りの年貢収納高。たとえば、一段につき五斗納めるときは五斗代といった。平安時代後期では、田地が三斗代、畑地が一斗~一斗五升代であったが、鎌倉期にかけて、生産力の増大とそれに伴う領主の収奪強化のために、高斗代化するとともに、領主・地域により一定しなくなった。また、耕地の生産力に応じた収納を実現するために細分化されることも多く、1265年(文永2)の「若狭(わかさ)国惣田(そうでん)数帳(大田文(おおたぶみ))」によれば、六斗四升八合代を中心に、三斗代から九斗代まで8種類の斗代を確認することができる(鎌倉遺文9422号)。江戸時代になるとその意味は変化していって、「斗代といふは石盛(こくもり)の異名に候得共(そうらえども)、百姓等反取(たんどり)候事迄(まで)も斗代と唱違也(となえたがうなり)」(地方(じかた)要集録)とあるように、石盛=田畑一段当りの公定収穫高を意味するようになった。

[木村茂光]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「斗代」の意味・わかりやすい解説

斗代【とだい】

荘園,公領における田畑1反当りの年貢高。江戸時代には石盛(こくもり)と同義に使用されるようになった。
→関連項目検地条目荘園(日本)分米

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「斗代」の意味・わかりやすい解説

斗代
とだい

荘園制のもとで1段 (反) あたりの年貢高を示す言葉として起り,江戸時代には石盛 (こくもり) と同義となった。1反あたり5斗の米を納める場合5斗代,1石納める場合石代といい,斗代に従って徴収される一定田地の年貢総額を分米といった。太閤検地以後は,1反あたりの標準収穫量を石盛または斗代といい,これに基づいて石高制が確立された。 (→石高 )

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

山川 日本史小辞典 改訂新版 「斗代」の解説

斗代
とだい

中世,田畠1段当りの年貢徴収高をいう。平安後期の田の斗代は1段につき3斗が標準だったが,鎌倉時代にはさらに高くなる傾向にあった。斗代定めは領主の勧農の重要な要素であり,百姓の愁訴の一要因でもあった。近世には石盛(こくもり)と同義で用いられた。村方では段取(たんどり)を斗代とよぶ場合も多かった。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

旺文社日本史事典 三訂版 「斗代」の解説

斗代
とだい

荘園の田地1段当たりの年貢収納高
「5斗代の田地」といえば段当たり5斗の年貢を納める田をいう。田地の斗代は時代・土地の良否などにより多様であった。太閤検地以降石盛にかえられた。

出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の斗代の言及

【石高制】より

… 分米(ぶまい∥ぶんまい)検地の際,一筆ごとに面積を測り,田畠の等級に応じて定められた石盛に基づいて計算された石高。中世では斗代(1反当りの年貢徴収率)に面積を乗じたもので,年貢高に相当する。 村高《地方凡例録》に,〈石高といふハ村高のことにて,田畑を検地し土地に応じて上中下の位を分け,石盛を極め,田畑屋敷夫々の高を寄合せたるを石高と云て即ち村高なり〉とある。…

【石盛】より

…検地に際して田畑・屋敷地の公定収穫量(石高)を算出することをいうが,その反当り換算率すなわち斗代のことをもさす。石盛によって算定された石高に一定の率をかけて年貢・諸役が賦課されたので,石盛の高低は貢租量の多少に関係した。…

※「斗代」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android