ベーシック・インカム(読み)べーしっく・いんかむ(英語表記)Basic income

知恵蔵 「ベーシック・インカム」の解説

ベーシック・インカム

就労資産有無にかかわらず、すべての個人に対して生活最低限必要な所得を無条件に給付するという社会政策の構想。社会保険や公的扶助などの従来所得保障制度が何らかの受給資格を設けているのに対して無条件で給付する点、また生活保護や税制における配偶者控除など世帯単位の給付制度もある中で個人単位を原則とする点が特徴である。すべての人に所得を保障することによる貧困問題の解決に加え、受給資格の審査などが不要なため簡素な制度となり管理コストが削減できること、特定働き方家族形態を優遇しないため個人の生活スタイルの選択を拡大できることなどが、メリットとして指摘されている。一方で、膨大な財政支出の財源をどうするか、導入によって誰も働かなくなるのではないかなどの批判もあり、論争が繰り広げられてきた。ベーシック・インカムに類する考え方は、資本主義社会の成立期から見られ、1960~70年代には欧米議論が展開されてきた。さらに80年代以降、働き方の多様化非正規雇用・失業の増大、家族形態の多様化、経済活動が引き起こす環境問題の顕在化など、これまでの福祉国家が前提としてきた労働や家族のあり方が変わってきたことを背景に、従来とは異なる考え方の所得保障構想として注目を集めている。

(原田英美  ライター / 2009年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

人事労務用語辞典 「ベーシック・インカム」の解説

ベーシック・インカム

ベーシック・インカム(Basic Income,以下BI)とは、個人が最低限の生活を送るために必要とされる基本的(ベーシック)な所得(インカム)を現金給付の形で保障する制度。年齢、所得、資産、勤労の意志などに関係なく、国民なら誰でも毎月一律の給付金を受けられるのが特徴です。一律所得保障、あるいは基礎所得保障とも呼ばれます。
(2010/4/19掲載)

出典 『日本の人事部』人事労務用語辞典について 情報

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